“シャトーブリアン”は、高級×チープのギャップで遊ぶ、カンパネラらしい曲

──では1曲ずつお聞きしていきます。まずリード曲“ウォーアイニー”は、TVアニメ『らんま1/2』のオープニングテーマになっていますが、どのように制作していったのでしょうか?
ケンモチ:『らんま1/2』の中華要素として麻雀や料理を取り入れつつ、作品の世界観にアクセスできるようにしました。いろんなキャラクターが歌い分けしているようなイメージで作った曲です。今回改めて『らんま1/2』を見直したんですけど、いまの漫画やアニメの面白い設定の元祖みたいな作品で、いま見ても新鮮なんですよね。その面白さを音楽にも落とし込みたいと思いました。
──この曲を歌う上で、どんな工夫をしましたか?
詩羽:主人公の「らんま」が男の子と女の子に入れ替わる設定を意識して歌いました。最初は女の子っぽい声で、次は男の子っぽい声にして、サビでは普段の声に戻す、といった具合に歌い分けています。これはケンモチさんのアイデアですね。
──歌詞には麻雀の要素も出てきますが、実際に一緒に打ったりするんですか?
ケンモチ:いや、まだないんです。「一緒にやりたいね」とはずっと言ってるんですけど、4人そろわないとできないので(笑)。いつかお手合わせ願いたいです。
──次は“サマータイムゴースト”です。この曲はTVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』のオープニングテーマですね。
詩羽:この曲は作品の世界観とのリンクがとても強いです。原作を読んだあとに聴くと、さらに感動できると思います。今回のアルバムの中では歌うのがいちばん難しかった曲ですね。特にサビでは「この音にいくの?」という展開が多くて、体に馴染ませるまでに時間がかかりました。
ケンモチ:メロディーは普段の自分の作風とは違って、歌いやすさから少し外したメカニカルな感じにしました。鍵盤で作ったフレーズをもとに、原作の世界観やストーリーをパズルのようにはめ込んでいったので、新鮮な制作過程でした。原作の「終わらない夏」という感覚や、ノスタルジックな街並みの生活感、さらには香港で見たお化けマンションの風景なども思い出しながら作りました。
──次は“シャトーブリアン”ですね。
詩羽:まさに水曜日のカンパネラらしい曲だなと思いました。「ケンモチさん、やりたいことをやってるな」と感じながら歌っていましたね。昔からのファンにとっても懐かしいと感じてもらえる曲になったんじゃないかと思います。
ケンモチ:今回はタイアップ続きだったので、「ノンタイアップで1曲作ろう」と考えました。最近は「ただ騒げる曲」をあまり作っていなかったので、ライブで盛り上がる曲を欲していたんです。アジアやヨーロッパのツアーでも映えるように、どこの言語圏の人でも一言で理解できるように意識しました。そんなとき「シャトーブリアン」というフランスの小説家の名前に出会って。しかも、彼が好んだ肉の部位の名前にもなっていると知り、「これだ!」と。高級そうな響きをBPM速めのチープなサウンドに乗せる、そのギャップがおもしろいと思って作りました。
──お二人ともシャトーブリアンは好きなんですか?
ケンモチ:僕はこの曲を作るまで食べたことがなかったです。美味しかったですが、日常的に食べるものではないですね(笑)。
詩羽:私はまだ食べたことがないです。油が苦手なので、ちょっときついかもしれません(笑)。
──次は“怪獣島”ですね。こちらはTVアニメ『ちびゴジラの逆襲』主題歌ですが。
ケンモチ:『ちびゴジラの逆襲』のようなかわいらしいアニメに曲を書くときのイメージとして、『さくらももこ劇場 コジコジ』で電気グルーヴが提供した“ポケットカウボーイ”みたいな曲にしたいと思っていたんです。歌詞やメロディーはキャッチーだけど、ビートはテクノでめっちゃ踊れる、そんなイメージですね。
──歌詞にはどんな思いを込めたんでしょう?
ケンモチ:「ちびゴジラ」は既存のイメージをどんどん壊していくんです。作品からもそういう反骨心が伝わってきました。なので「音楽ってこうだよね」という固定観念を壊していく自分たちの姿勢とも重ねて、メッセージを込めました。
詩羽:歌い方に関しては、歌舞伎や演歌っぽい表現をちょっと取り入れました。「ぃよー!」って感じの声の出し方ですね。参考にした人がいるわけではないですが、イメージで試してみたらうまくハマりました。

──では次は“バタフライ”について伺います。こちらはヘアカラーブランドgot2bのキャンペーンソングですね。
ケンモチ:「バタフライ」というテーマは多くのアーティストが扱っていますが、そのなかでも一番ふざけたバタフライにしたいと思って作りました。タイアップではありますが、水曜日のカンパネラらしい“ふざけ感”を求められていると感じたので、テーマを守りつつも遊びました。歌詞にはバタフライ・エフェクト=「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話もラップに盛り込んでいます。最後のブロックはモーニング娘。の「恋愛レボリューション21」のイメージで書きました。楽曲自体はベースハウス的な後乗りシャッフルの感じで、蝶が盛り上がっているところで「プチョヘンザ!」みたいに、羽の角度を45度に上げて盛り上がるイメージを入れています。