廃キャバレーにて新音楽宴、開催!
ここ数年「廃校フェス」や「TOKYO NEW WAVE」など、新宿を舞台にしたカオティックな中型イベントがバンド・マンを中心に勃発している。2012年も我々の好奇心を突っつくイベントが出現した。新宿のディープ・スポット歌舞伎町にある元キャバレーを使い、総勢24組のアーティストがライヴを繰り広げる。その名も「みんなの戦艦2012」。もともとキャバレーだった場所に、これだけのアーティストが集結することは前代未聞だ。一体どうなってしまうのか。蓋を開けてみない限り分からないが、とにかく面白そうなことだけは確かだ。
「みんなの戦艦2012」は、奥村祥人(Myth Folklore/ex.henrytennis)、オガワナオキ(TACOBONDS)、赤倉滋(LOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS)の3人によりスタートし、最終的にニシハラシュンペイ(ヤーチャイカ)、komori(壊れかけのテープレコーダーズ)を加えた5人で運営されている。なぜ、このイベントを始めようと思ったのか、そして何を目指しているのかなど、気になる部分をざっくばらんに、オガワと赤倉の2人に伺った。
インタビュー&文 : 西澤 裕郎
みんなの戦艦2012 @新宿 歌舞伎町風林会館 ニュージャパン
2012年2月11~12日(土・日) 会場 : 新宿歌舞伎町風林会館 ニュージャパン
OPEN 12:00 / START 13:00
1日券 : 3800円 / 2日通し券 : 6800円 (共に+1drink)
【ARTIST/1日目】
buffalo daughter / MO'SOME TONEBENDER / uhnellys
シグナレス / LOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS
テクマ! / 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 / Z
壊れかけのテープレコーダーズ / the chef cooks me BAND
ヒカシュー / 東京カランコロン
【ARTIST/2日目】
ZAZEN BOYS / GELLERS / アナログフィッシュ
NETWORKS / おとぎ話 / Ropes / ヤーチャイカ
TACOBONDS / Myth Folklore / ロレッタセコハン
ズボンズ / 八十八ヶ所巡礼
★『みんなの戦艦2012』2日間通し券を2組4名様にプレゼント!!
件名に「みんなの戦艦2012 招待券希望」、本文に氏名、住所、電話番号をご記入の上、「info(at)ototoy.jp」の(at)を@に変更してメールをお送りください。当選者の方には追ってメールにてご連絡します。
応募締切 : 2012年2月8日24時まで
※あらかじめinfo(at)ototoy.jpからのメールを受信できるよう設定してください。
※ドリンク代は別途掛かります。
※チケット・プレゼントへの応募は締めきりました。たくさんのご応募ありがとうございました!
>>みんなの戦艦2012 official website
オガワナオキ&赤倉滋(「みんなの戦艦2012」主宰) INTERVIEW
――「みんなの戦艦2012」は、2006年に開催された「みんなの戦艦リンキーディンク」が元になっているんですよね。そもそも、どういうきっかけで始まったイベントなのでしょう。
オガワナオキ(以下、オガワ) : 当時も今回もきっかけは似ていて、おっくん(奥村祥人/Myth Folklore/ex.henrytennis)が「何かやろうよ」って言っているのを周りが聞いて、どんどん具現化していったんです。「どうせやるんだったら普通じゃないことをしよう」ってことで、おもしろいことを考えていった結果、下北沢リンキーディンクスタジオの全部屋を借りてライヴしようってアイデアが出てきたんです。
――その時、赤倉さんはマヒルノで出演していたんですよね。イベントに出演してみて、どういう印象を持ちましたか。
赤倉滋(以下、赤倉) : 今でこそスタジオ・ライヴって珍しくないと思うんですけど、2006年当時はまだ珍しくて、しかもビルを丸ごと貸し切るっていうのもすごいなと思って。カオティックな感じがすごかったですよ。廊下で力尽きて寝ている人が沢山いましたからね(笑)。
――それは衝撃ですね(笑)。その後、2008年に2回目を開催して、今回が3回目の開催となります。どういったきっかけで開催が決まったのしょう。
オガワ : イベントが終わってからも、おっくんとはライヴ・ハウスなどで会っていて、顔を見るたび「何かやろうよ」って言われていたんです。昨年の5、6月くらいに下北沢THREEで会って、その場にいた赤倉君と一緒に話していたら企画が進んでいった感じですね。
赤倉 : 始めは1回目と同じようなことをやろうって話だったんですよ。でも、同じことをやるのは面白くないと思ったから、それだったら僕は参加しませんって言いました。どうせやるなら、大きくてしんどいことをやりたかったんです。
――じゃあ、何かに対するカウンターやコンセプトがあって始めたわけではないんですね。
オガワ : ぶっちゃけそうですね。企画をやろうって話が自然に出てきて、アウトプットの方法を考えていったらこうなったんです。話し合いの段階では、スタジオを1部屋だけ使って、10人限定のイベントをやろうってアイデアも出たくらい自由度がありましたね。
――今回のイベントの肝はいくつかあると思いますが、一つは風林会館ニュージャパンという場所です。新宿歌舞伎町の真ん中に位置する元キャバレーということですが、どのようにこの場所に決めたのでしょう。
赤倉 : 最初はいくつか候補があったんです。というのも、どうせやるのであれば、場所のおもしろさも大切にしたいなと思って、マジックがある所を探していて、その中で出てきたのがニュージャパンだったんですよ。
オガワ : 以前、おっくんが別の企画で出たことがあったので、一緒に見に行ったんですね。赤倉君も僕も初めて行ったんですけど、入った瞬間にここだと思いました。ブッキングやアイデアがすぐに浮かんできて、やりたいことも広がっていったんです。
赤倉 : 実際に場所を見に行ってピースがうまくはまったんですよね。それまで考えていたアイデアが、すべてくっついたんです。会場にすごくいいステージがあって、そこを見た瞬間、テクマ! さんに出てほしいと思ったんです。どんなステージなのかは、来てみてのお楽しみですね!
――キャバレーとテクマ! さんの組み合わせは興味深いですね! もう一つ肝になるのは、ブッキングです。最初にフライヤーを見たとき、まさかバンド・マンが主催しているとは思いませんでした。いい意味で、主催者の顔が見えないというか。ブッキングをするにあたってのポイントはどこにあったのでしょう。
赤倉 : 一番気にしたのはバランス感ですね。例えば、オガワさんは東京ボアダム(※1)の企画にも関わっているので、発想を変えないと東京ボアダムの服を着せ替えただけのイベントになってしまうかもしれない。かといって、お客さんの入りそうなアクトばかり選んだら、カッティング・エッジな感じにならないですよね。あくまでも、僕らのバイアスを通したかったんです。同時に、価値観の押しつけにならないように気をつけました。そういった所を3人で話し合って、うまく着地させていったのが今の形ですね。
オガワ : このイベントをおもしろいと思う可能性がある人には、出来る限り届けたかったんです。僕らの場合、お金をかけてプロモーションも出来ないので、組み合わせの妙でお客さんを増やすしかなくて。ベタな話ですけど、来た人が新たな音楽と出会って、裾野を広げてもらいたいんです。
作品としてイベントを成功させたいんです
――ブッキングを見て、「みんなの戦艦2012」の切り口って何なんだろうって考えたんですね。例えば、東京ボアダムは、ライヴ・ハウスで活動しているバンドマンたちがD.I.Y.でイベントをしているということを全面に出している。TOKYO NEW WAVEだったら、東京で活動している若手のバンドマンたちが自分たちをプレゼンしつつ盛り上げようとしている。それに対して、「みんなの戦艦」の切り口って何だろうって。僕が思ったのは、オルタナティヴ・バンド達の存在証明なんじゃないかってことです。今って、アイドルやオタク・カルチャーが盛り上がっているじゃないですか。それに対して、実はオルタナティヴ・ロックって、全盛期に比べてシーンとしての勢いがないんじゃないかと思うんです。だからこそ、孤立奮闘しているバンドたちを集めて、勝負しようかと考えたのかなって。
オガワ : 今引き合いに出てきたアイドルみたいな盛り上がりって、確かにオルタナティヴ・ロックのシーンに今はないと思うんですね。自分は90年代のオルタナ・バンドを体験して、そのまま継続しています。だからこそ、そういう音楽が好きだった人たちや、音楽から興味がなくなってしまった人たちに来てほしい。例えば、東京ボアダムでアピールしてもそういう人たちは来ないんです。でも、buffalo daughterを知っている人たちは、そういうライヴに来たら楽しめる要素を持っていると思うんです。だから、そういう人たちをライヴ・ハウスに呼び戻したいんです。
――他のシーンが盛り上がっているのに対して、居心地の悪さみたいなものも感じているのでしょうか。
オガワ : 居心地が悪くてカウンターでやっている感覚ってより、どうすればメッセージを伝えられるか、オルタナ・バンド界隈おもしろいじゃんっていう火をつけたいっていうのが一番ですね。バンドもお客さんもクロスオーバーさせていく方法の一つとして、お客さんの興味の枠をやんわり開いていけたらと思っています。
――最近ライヴ・ハウスに来るお客さんの年齢層が上がっている印象があります。もちろん、若い人たちが集まるライヴもあるんだろうけど、90年代からシーンの最前線でやっているバンドのライヴに来るお客さんの年齢層が上がっているような気がしているのですが。
赤倉 : 世代の話で言うと、3人でブッキングを進めているときに、ちょっと見えている視野が狭いのかもしれないと思って、ヤーチャイカのニシハラ(シュンペイ)君と壊れかけのテープレコーダーズのkomori君にも加わってもらいました。彼らは僕らより年下なので、見え方も違うと思うんです。僕らが気づかない、偏っている部分があるかもしれないと思って意見をもらったんです。その結果、東京カランコロンを提案してくれたり、逆にズボンズを提案してくれたりして、今の形になりました。僕としては、若い人たちに届けたかったんですね。音楽を聴き始めの人とか、ライヴ・ハウスにあまり来ない人とかも巻き込んでいけるような形にしたいと思ったんです。
――これだけ大きなイベントにも関わらず、みなさんは主催者として名前を出していないのが不思議だなと思いました。それには何かしら意図があるのでしょうか。
オガワ : 主催者のバンド名を全面に出したら、自分たちがトリを務めてって形になってしまいますよね。でも、僕らは出演者に紛れているような形にしています。このイベントは、僕たち自身もピースの一つとして見ていて、どうしたら一番美しい形、おもしろい形になるかを考えて組んでいます。エゴイスティックな理由で、俺はトリをやりたいとか、そういう話は一切出なかったですし、全体で見ておもしろくするためにどうしたらいいかってことは、前提として5人とも分かっていたと思います。
――しかし、表現者である以上、エゴを出すことは当然のことですよね。なぜ、エゴイスティックにならずに進めることができたのでしょう。
赤倉 : もちろん、みんな大なり小なりエゴはあると思いますよ。名前を広めたいっていうモチベーションもありますけど、作品としてイベントを成功させたいって気持ちの方が強いんです。1日目から2日目の最後まで通して見たとき、「よかった! 」って思ってもらえるために自分はどう機能できるか。所謂、サッカー的発想っていうんですかね。個の美学を持ちつつも、全体の中でやるって発想を、僕はもともと持っていなかったので、今回やっていてすごくおもしろく感じました。
オガワ : 多分エゴを抑えているんじゃなくて、このイベントを一番いい形で作り上げることが、結果的に自分たちを一番美しく魅せられることを潜在的に分かっているんですよね。今のサッカーの例でいくと、一人だけうおーって飛び出していったらオフサイドになっちゃうわけで、そうじゃなくて全体で押し上げていくことが勝利に結びつくってことを分かっている。今回の主催者は、そういうプレイヤーばかりなんですよ。
――なるほど。そういう意味で、全体を押し上げていくイベントとして参考にしたイベントや、尊敬できるイベントはあるのでしょうか。
赤倉 : この規模のイベントをやることになって、真っ先に思いついたのが2007年に山形で行われた「DO IT」っていうイベントです。D.I.Y.な感じもありつつ、D.I.Y.を押しつけていない感じが、すごくかっこよかったんですよね。僕はそのイベントに出演したんですけど、かなり印象に残っていて。一つのイベントに向かって、みんなのベクトルが一点に集中している感じがよかったんです。僕は出演しただけで、多少部外者的なところもあったんですけど、今回やる上ですごくそのイメージがありましたね。
オガワ : 出ているバンドの数も半端なかったしね。
赤倉 : あと、スポンサーを入れていないことに関しても共感できる部分がすごくありました。この規模のイベントをやるとなると、お金の部分は切っても切り離せないですから。その辺はある程度カッコつけつつも、自己満足にならないような形でやろうと思っています。
フジロックが楽しいのと同じくらい、おもしろいものが毎日繰り広げられている
――「みんなの戦艦2012」は、主催者のみなさんが想定しているように、広いお客さんに興味を持ってもらえてるのではないかと思います。ライヴ・ハウスに来慣れていないお客さんも来てくれるかもしれませんね。
オガワ : そうですね。多分、東京ボアダムに来ているお客さんにとって当たり前のことが、「みんなの戦艦」でアピールしているお客さんにとっては、当たり前でないと思うんです。このイベントの特徴の一つは、すべてのアクトを見れることなんです。目的のバンドだけを見たい人にとっては、1つ1つのアクトの演奏時間が短いかもしれない。でも僕らはその間を見てほしいんです。今まで目的のアーティストを見ることしか知らなかった人たちに、入門編みたいな感じで知ってほしい。見たことのないアーティストを見るのはおもしろいよって。すごく考えた流れでライヴを見せているので、楽しいと思います。
赤倉 : 一見フェス風なイベントになっているんですけど、フェスに行くような人以外も意識しているんですよ。あまりライヴには行かず、もっぱらCDばかり聞いている人たちにとっても、ライヴ・ハウスに足を運ぶきっかけになればいいなと思っていて。そういう人たちに対してもアピールできるメンツになっています。
――フェスとイベントをちゃんと区別しているんですね。
オガワ : そこは、僕はかなり明確に思い浮かべていて、フジロックには毎年すごいお客さんが来るじゃないですか。出演するメンツとかは関係なく、絶対にフジロックには行くって人たちが実は結構たくさんいるんですよ。
赤倉 : 朝霧JAMとかもそうですよね。
――確かにそうですね。
オガワ : いわゆるフェスに行くような、音楽好きな人たちはいるんですよ。でもライヴ・ハウスにはなかなか来ないんですよ。フジロックが楽しいのはすごく分かるんですけど、同じくらいおもしろいものがライヴ・ハウスで毎日繰り広げられている。だから、年に一回フジロックだけを楽しみにしているような人に、ライヴ・ハウスに来る入門として来てほしいんです。フェス的なアプローチでやっている音楽イベントなんで、そういう人たちが来たらおもしろさを分かってもらえると思うんです。それを面白いと思ってもらえれば、バンドが独自に企画しているイベントの入口にもなるかなと思っています。
――毎日、いろんな場所でライヴは行われていますからね。
赤倉 : こんな所でも出来るんだぜって思ってもらえると思います。
オガワ : 日常の中にあるんだけど、行ってみると非日常的なんだけどね。そこがおもしろい。
赤倉 : やっぱりその非日常感は大切にしたいですよね。やる以上、見る以上、ワクワクしたいし、ワクワクしてほしい。
オガワ : ニュージャパンに足を踏み入れた瞬間に、笑うと思いますよ。こんなところでやるんだって。そんなおもしろさって、なかなかないと思います。
赤倉 : 楽しんでもらえるはずですよね。
オガワ : 希望的観測ではあるんですけど、あのタイム・テーブルを見ると、長いし、すごく疲れそうだけど、はまっちゃったら最初から最後まですぐに終わっちゃうと思う。同じ時間サーキット系のイベントを見るより、あっという間に時間が流れるように感じるはずです。
――確かに、息をつく暇もなさそうですね。
オガワ : 見てもらえれば、今言葉にしきれていない僕達の伝えたいことがわかると思うし、それが一番おもしろいと思います。1日目の最初から2日目のトリまで全部見てもらえたら嬉しいですね。
※1) 東京ボアダム
東京アンダーグラウンド・シーンのバンド・マンたちにより主催、運営されているイベント。過去に渋谷LUSH、東京大学駒場キャンパス、京都のCLUB METROにて開催されている。参加バンドはBOSSSTON CRUISING MANIA、TACOBONHDS、GROUNDCOVER.、worst taste、Alan Smithee’s MAD Universe、Lmited Express(has gone?)、ゆーきゃんなど。
「みんなの戦艦」出演者の配信楽曲はこちら!
PROFILE
TACOBONDS
2003年2月より現在のメンバーとの活動を開始
2005年5月 自主レーベル『nonsense fiction』より音源を発表
2006年3月 disk union DIW より1stアルバムをリリース
2009年1月 「東京BOREDOM」の企画に参加
2009年4月 オリジナルVo脱退、現在の3人編成となる
2011年6月 セカンド・アルバム『NO FICTION』をリリース
LOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS
2010年惜しまれながらも解散したマヒルノであったが、フロント・マンの赤倉滋のホスト・バンドが結成された。既にライヴ活動は行っているものの、音源の発表が待ちに待たれていたLOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS。メンバーには、ジャズ、フリー、パンク、アバンギャルドと様々なバックボーンを持つメンバーが集結。マヒルノからの耽美的な世界観はさらに艶を増し、リズムはロック・アプローチからはたまた原初的とも言える、よりプリミティブなものへ。 2台のキーボードにより、サイケ・アシッド感はさらに増幅、またアーバン的アプローチともいえる、今迄にないサウンドも。まさにマヒルノから解き放たれた新生バンド。2011年、また、新しく時が動き始めた。
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