kilk recordsが発信するライヴ・ハウス「ヒソミネ」が5月にオープン!
kilk recordsのレーベル・オーナー、森大地の野心はとどまることを知らない。このたび、埼玉県大宮駅の隣駅にある宮原に、kilk recordsのライヴ・スペース「ヒソミネ」を作ることが決定した。僕が計画を聞いたのは2013年に入ったころだったので、まさかこんなに早く形になるとは思いもよらなかった。最初はFacebookにて、知人宛に協力を募った森。資金だけでなく、機材や協力してくれる人員など、あっという間にレスポンスが集まり、勢いそのままに計画は実現への道を突き進んでいる。
レーベル設立以降、自分の意志を曲げず、おかしいと思ったことはおかしいと発言し、自分で行動をおこしてきた森だからこそなし得る本計画。しかし、森にとっても、彼の周りの仲間にとっても初めての挑戦ばかり。なぜ、森はライヴ・スペースを作ることにしたのか、そしてどのような運営をしていこうと考えているのか。実際に宮原まで足を運び、「ヒソミネ」のカギを受け取ったばかりの森に話を聞いた。
インタビュー & 文 : 西澤裕郎
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INTERVIEW : 森大地
——これから、この場所がライヴ・スペースとして改装されていくんですね!! いま、どんなお気持ちですか。
森大地(以下、森) : 何回か下見には来ていたんですけど、今日カギを受け取ったばかりなので、感慨深いです。
——駅からここまで歩いてくる途中、閑静な住宅街ばかりだったから、本当にライヴ・ハウスなんてあるのかと思って不安だったんですよ。そしたら、ここだけすごく異空間というか(笑)。
森 : (笑)
——以前森さんとお話をしたとき、東京都内で物件を探していましたよね?
森 : そうですね。内見もかなり行ったんですけど、当初考えてた予算からしたら、全然話にならなくて。都内でフルバンドで演奏できるくらいのスペースを借りるとしたら、ここの倍くらいの家賃を払わなきゃだったんですよね。
——ちなみに、ヒソミネには何人のお客さんを収容できるんですか?
森 : 通常は50人で、いっぱいいっぱいに入れて100人くらいです。やっぱり、この規模がほしかったんですよ。
——それはなぜですか?
森 : インディ―ズのバンドが定期的に使うライヴ・スペースの規模として、50~100人がちょうどいい気がしていて。まず、アーティストのために、今の時代に適した規模のライヴ・スペースが必要かなって。お客さんにも、この広さならではの「会場全体で共有できる、その場限りのレアな感動」みたいなものをきっと喜んでもらえるはずですし。
——たしかに、既存のライヴ・ハウスの多くは、平日お客さんがスカスカだったりすること多いですもんね。ある意味、時代に合わなくなってきている部分もあるというか。そのあたり、DOMMUNEとか2.5Dあたりは参考になるかもしれませんね。
森 : 実は最初は、Ustreamの放送局みたいなものも考えたりしたんです。今挙がった二つはどちらも尊敬している放送局ですが、バンドのライヴ配信のイメージはそんなにありませんでした。だったらうちがバンドの配信をメインにする放送局をやろうかみたいな話ですね。結局放送局でなくライヴ・スペースになりましたが、今でも放送局としても機能させたいなとは思っています。バンドだと細かいPA設定が必要だったり、カメラ・ワークも大事だったりするので、まだまだこれから実験を重ねていかなきゃですが、だんだんと形にしていきたいです。Ustream配信以外も、ライヴ演奏を良い音で録音できるサービスだとか、ミュージシャンが運営するライヴ・ハウスという部分を全面に打ち出していきたいと思っています。kilk recordsのレコーディングでも使っていきたいですね。
——森さんが、Aureoleやkilk records所属のミュージシャンのライヴをやっていくなかで、今自分たちがやりたいことを出来る場所が不足しているという実感も持ったんでしょうか。
森 : そうですね。あとは、CDの売り上げが相当厳しくなって来ていて...。
——それは、森さんがkilk recordsを始めた3年前と比べてもですか。
森 : そうですね。ここ1年で見ても厳しくなっていっているような気がしていて。前から言っているとおり、CDの売上に頼っていられるタイムリミットもあと数年だと思うんですよね。その時までに何かアクションを起こさなきゃなと。で、CDがダメならライヴはどうかなと考えてみました。例えばライヴ・イベントを主催する時、当たり前ですがネックとなるのは会場使用料なんです。CDが衰退してっている今、そこまで名前の通っていないインディ―ズのアーティストが正当な収益を得るためには、こちらでライヴ・ハウスを作って、その会場使用料の部分をおさえるというのは一つの手として有効かなと思ったんですよね。
——すごく辛辣な言い方をすると、いくら音楽が素晴らしくても、音楽だけでお客さんを呼び込むのが難しくなってるってことなんですね。
森 : そうですね。そう思います。人々にとって音楽というものが再び、「こういうとこならお金を払ってもいい」って言うように思える存在にならなきゃいけないと思っていて。音楽であるなら、お客さんが喜ぶのであれば今まで通りCDにお金を払うのも勿論いいと思いますし、こういう生の場だからこそお金を払うっていうのもいいでしょうし。日常生活の中で、どこにお金を払うかチョイスするのはお客さんの自由ですが、その中に当たり前のように音楽という選択肢が入るとすれば、音楽人からすればたまらなく幸せなことですよね。
——昨日、他のバンドのライヴに行ったんですけど、いいアーティストに対しては応援したくなる気持ちが出てきますよね。でも、同じCDが大きなお店に置いてあったら、僕は買わなかったと思うんです。そこにあるからこそ買っちゃうってこともあるかなと思うんです。
森 : それはあるかもしれないですね。
自由にアーティスト活動を応援する、支援する場みたいなればいい
——海外のライヴ・ハウスって、ミュージシャンにとってメリットがあるようなことが多いって言うじゃないですか。もちろん、それは文化の違いというのもあって、入場料は安くても、お酒をたくさん飲むとか、ご飯を食べるとか、そういうところでお金が入ってくる部分もあるんですよね。でも、日本には日本の文化があるから、同じ方法というのは難しいかなと。森さんは、どういう仕組みで、収益を出していこうとお考えですか。
森 : 具体的な話になるんですけど、例えば平日は無料で貸そうと思うんです。休日でも5万円とかなんですけど、平日の場合はある程度のバック制で20枚分チケットを売ったら、それ以上は50%返すとか、そういう仕組みを作っていきたいなと。ノルマ制は導入する気はありません。ミュージシャンが赤字になることは絶対したくないので。
——つまり、最初の19枚分は、無料で貸す代わりにお店側に入るよってことですよね。
森 : そうですね。あとは、more recordsとか残響shopとかのように、人が集まる感じもすごくいいなと思います。人が集まってこそ、その先に出来ることがある。どちらの店も、そんな思いを持って、工夫してやっている感じがするんですよ。人が集まれば、そこで飲んで食べて、楽しくコミュニケーションできる。さっき話に出た、ミュージシャンとかファン、音楽好きがたまってお酒を飲んだり、ご飯を食べるような、たまり場になれば一番いいですね。
——なるほど、人が集まればそこで何かが生まれると。音楽ありきという考えを逆転させたわけですね。
森 : そうですね。ライヴだけではなく、Ustream放送、レコーディング、プリプロ、練習スタジオ、映画上映、アートの展示などなど、それはもう自由に使ってほしいんですよね。演劇なんかもやってもらいたいですし。自由にアーティスト活動を応援する場というか、支援する場みたいになればいいなと思っていて。
——ここのところ、森さんは場所に注目しているんだなと思っていて。例えば、Magdalaのライヴは教会でやっていましたし、ライヴ・ハウスの名前の元となったイベント「ヒソミネの祭典」は横浜都市創造センターでやっていましたよね。
森 : そうですね。いろいろ逆行したいなっていうのはあって。似たりよったりのフェスだとかが乱立するなかで、明確な違いを打ち出さないと自分のところの存在価値もないと思ったので。例えば、ここもライヴ・ハウスだけど壁も全部白くしようと思っていて。黒い壁の地下室っぽい、あのロックンロールなイメージのライヴ・ハウスとは、根本的に違うところから始めたかったんですね。それももちろん好きなんですが、ライヴ・ハウスのほとんどが右に倣えな雰囲気である必要性は全然ないかなって。
——ちなみに、バー・カウンターがありますけど、バー営業みたいなこともやるんですか?
森 : やりたいですね。やっぱり、ライヴが終わった後のコミュニケーションも、すごくいいなと思っていますし。ミュージシャン同士、ミュージシャンとお客さん、見に来たお客さん同士、もしくは見に来た方々同士、いい感じに話したりとか、音楽好きのたまり場になれば一番嬉しいですね。
そこに行けば良い音楽があるぞ、っていう信頼は持たせたい
——繰り返しになりますが、人が集まればそこで何かが生まれると。ライヴをやっていないときは、CDを販売したり、お店のようなこともやるんですか。
森 : せっかくなら、いいかもしれないですね。more recordsさんも近いですし。しょっちゅう出店してもらったり、イベントをやってもらったり。あと、ここから術ノ穴の事務所も近いですし、いろんなレーベルと協賛していろいろやりたいなと思います。
——オープンしてからは、具体的にどういうふうに毎日がまわっていく予定ですか?
森 : 具体的には、最初の2ヶ月は、自分がいいなと思っているバンドにとにかく連絡をして、出演してもらいたいなと思います。それで知ってもらって、映画、Ustreamやアートの展示での使用でも、自由に使ってもらって欲しいですね。これがヒソミネだっていうのを打ち出せたらと思います。
——では、最後に、ライヴ・ハウスをやるにあたって、森さんが目指すところを教えてもらえますか。
森 : やっぱり、時代に合ったリアルな場っていうのが、1番ポイントだと思うんです。ミュージシャンやアーティストが、ちゃんと表現出来る場、それで正当に評価される場を作りたいです。それと、お客さんが求めているものっていうのは、必ずしも音を聞くっていう行為だけじゃなく、音を聞く事を含めた「感動の体験」を味わうことだったり、そこの場にいる人たちと感動を分かち合うことだったりするんですよね。あとはハコの信頼感。いろんなライヴ・ハウスが心がけているかもしれないですけど、そこに行けば何かしら良い音楽があるぞ、みたいな信頼は持たせたいですよね。
——そうなったら嬉しいですよね。
森 : そうですね。今回、立ち上げに当たって、出資者を募ったんです。それは、大事なファンの方たちだとか、信頼できるレーベルの方だったりだとか、仲のいいミュージシャンだったりしたんですけど、そういう人たちの協力があって、やっと立ち上げられるんです。成功するか分からないのに、協力してくれる人たちのためにも、いい感じでお返しできたらなあと思うんですよね。
——そうなってほしいですね。ちなみに、オープンの予定はいつ頃ですか?
森 : 最初は5月の中旬ぐらいだとおもうんですけど、多分一発目は、Aureoleのワンマン・ライヴですかね。
——あともう1ヶ月半くらいですね。
森 : そうなんです。楽しみにしていてください!!
新連載企画!「新音楽時代」はこちら
kilk records session vol.1 森大地(kilk records)×虎岩正樹(残響塾)「新しいアーティストの考え方」
kilk records session vol.2 森大地(kilk records)×木戸崇博(Ricco Label)「新しいレーベルの考え方」
kilk recordsの連続企画「kilk records session」公開中!
kilk records session vol.1 野心の可能性
kilk records session vol.2 歌姫達の女子会
kilk records session vol.3 クロスオーバーの可能性
kilk records session vol.4 2012年レーベル座談会 レーベルの野心
kilk records session vol.5 2012年レーベル座談会 未来への野心
kilk records session vol.6 CDショップ座談会
kilk records session vol.7 ライヴ・ハウス座談会
kilk records session vol.8 Deep Moat Festival座談会
kilk records session vol.9 オーガナイザー座談会
kilk records session final レーベル・メイト座談会
PROFILE
kilk records(森大地)
2010年、Aureoleの森大地により設立。「精神に溶け込む、人生を変えてしまうほどの音楽との出会い」。kilk recordsはそういった体験を皆様にお届けすることを第一に考えております。オルタナティブ・ロック、ポスト・ロック、エレクトロニカ、テクノ、サイケデリック、プログレッシブ、フォーク、アヴァンギャルド、アンビエント、ヒップ・ホップ、ブレイクコア、インダストリアル、ジャズ、クラシカル、民族音楽... 。魂を震わせるような音楽であれば、ジャンルは一切問いません。kilk recordsが最もこだわりたい点は「独創性」です。信じられないほどの感動や興奮は「独創性」から生まれるように思えます。これから多数の作品をリリースしていきます。末永くkilk recordsにお付き合いくだされば幸いです。