自分が使いたくない言葉を使わない

──2曲目は、“前略、棺桶の中より”、この「棺桶」というのは?
梶原 : 今回使った理由は特にないんですけど、「棺桶」っていう言葉はいつか使いたいなと思っていました。僕には自分の個性を出す僕なりの方法がひとつあって、それは、自分が使いたい言葉を使うんじゃなくて、自分が使いたくない言葉を使わないことです。例えば「刹那」とか僕は使わないんですよ。使わない言葉を削ぎ落としていくことで、自分の言葉になると思っていて。「棺桶」はその僕の “検品” を通った言葉なんです。
雨宮 : それで言うと、「チャンスのときに転ぶのは 全然ピンチじゃないから」って歌詞があるんですけど、歌詞が来たときに、パセリさんが「チャンス」って言葉を使うのは珍しいなと思って。
梶原 : さすがですね…… 「チャンス」は今までの僕だったら検品には通っていなかった言葉です。バレてますね。
──未來さんすごいですね。いま僕のなかで未來さんの評価がすごく上がりました (笑)。「チャンス」が通るようになった理由は?
梶原 : 僕が年齢を重ねたこともあるし、「ピンチ」とのペアだから検品が緩くなった、というのもあるかな。
──楽曲のポイントは?
梶原 : これはもう未來さんのタンバリンじゃないですか。みんなで未來さんが叩いてるタンバリンの波形見ようぜ (笑)
──貼り付けてなくて、ぜんぶ叩いてるんですね
雨宮 : 叩いてます。ちゃんと。テンポがくるっちゃいけないので、考えずに「無」で叩きました。
「できないまま終わる」っていうのは、いままでなかった

──3曲目、“メデタシ” です。未來さんが一番好きなところは?
雨宮 : サビの最初の2行、「明日が僕の命日ならば 今日はどうやって楽しみましょう」、「明日が僕の誕生日ならば 今日はどうやって苦しみましょう」、好きです。
梶原 :「誕生日」って検品、通らなそうでしょ?
雨宮 :「ハッピーバースデー」のほうが通らなそう。
梶原 : そう、そういうこと。「ハッピーバースデー」は通んないけど、「誕生日」は通るんですよ。よくお分かりで。
──なるほど……(ふたりに感心)。この曲はNaNoMoRaLの曲のなかでも、強く前に進んでいく気持ちを感じました
梶原 : 実は、僕は、この曲だけ一貫してないなと思っていて。「できないまま終わる」っていうのは、いままでの僕の歌詞の中では、なかったんです。「できないままでいいよ」っていう曲はたくさんあるけど、この曲の主人公は、うまくいかないまま終わってる感じがする。NaNoMoRaLの曲は、そのなかに主人公がいて、曲のなかで報われて終わってるんです。でも、このひとは報われてないな、って。
──僕は、うまくいかないことも含めて肯定しているのかな、と思ってしまったんですが
梶原 : それはあるかもしれないですけど、自分の言葉で肯定して終われていないことに、僕はちょっと悔いが残ってます。
──なるほど。楽曲については?
梶原 : イントロがすべてかなと。このギターのメロができた瞬間に勝ったと思いました。
梶原 : このドラムも好きです。NaNoMoRaLの曲で一番速いんですよ。BPMが220なんですけど。
梶原 : Cメロの「日が昇って そして沈んで また 一日が終わる」っていう、ここめっちゃ好きです、僕。
梶原 : ここから最後にいくまでの流れが、今まで作った曲のなかで一番好きかも。自分を褒めてあげたいぐらい。作ってて、1番、2番が終わって「世界は今日も許してくれるの」、ここでビタッと止まっちゃったんですよ。この後どうしようって。で、1か月ぐらい寝かしてから「日が昇って……」のメロが出たときに、「やった!」って思いました。最高なのができたなって。そこから「出来ないことは出来ないままで 見えないものは見えないままで」に戻っていくのが、構成的にすごく上手くいきました。これができたことが嬉しかったです。
──いまは構成が本当に大事ですから
雨宮 : このCメロのところは、デモがきたときに新しいなと思いました。いままでのNaNoMoRaLとは違うな、って。
「答えを知れず死ぬこともあるらしい」

──こういうお話をきくと、聴きかたが変わって来ますね。4曲目の “ギリフギリ” は
雨宮 : ぜんぶ好きなんですけど、この、「答えを知れず死ぬこともあるらしい」が、いちばん刺さりました。そうか、そうだよな、って。
──「不義理」という言葉はどう捉えれば?
梶原 : 言葉の意味としては「理不尽」っていう意味で使いたくて。この曲だけ規模が大きいんですけど、なんか生きてることっていうか、今ここに立ってることですら理不尽なんじゃないかなと思って。そして日常にも理不尽なことっていっぱいあるけど、それでも生きている、っていうのに繋がっていく曲です。
──楽曲のほうは?
梶原 : 僕はサビの裏で鳴ってるギターがめっちゃ好きなんです。この、歌をギリギリ邪魔してない感じが。
──歌入りで聴かせてもらえますか
梶原 : これですね。
梶原 : 僕はJUDY AND MARYのTAKUYAさんが大好きなんです。あのひとのギターはちょっと邪魔するけど、それでも歌とうまく絡んで、サビの裏でギターソロを弾いてるみたいで。それがすごく好きで、僕もずっとやってます。NaNoMoRaLは基本、“邪魔な” ギターは右で鳴らしてるので、右だけのイヤホンで聴くとわかりやすいかもしれないです。
──5曲目、“きせき” です
雨宮 : 最後の音がワーーっとなるところがあるじゃないですか。
雨宮 : あれは、宇宙があって、黒い、動く道があるんです。その道に私たちは乗ってるんだけど、そのまま死に向かっていくんですよ。動く歩道みたいなのに乗って、死に向かっていくところをイメージしてる。だから歌詞の「そう 君は奇跡」は、あなたはもう奇跡なんだよ、そのことに気づいて、と言っている。それが私のこの曲の解釈です。
──パセリさん、合ってますか?
梶原 : なんとなく合ってるのかなあ。広がっていく感じにはしたくて。
──イメージは近いんじゃないですか。パセリさんからみた歌詞のポイントは?
梶原 :「ばつだってすごいや さんかくもすごいや」の、さんかくも肯定しているところが好きです。なぜなら、あなたは生まれた時点で奇跡なんだから、ですね。
──楽曲面では?
梶原 : 南波さんもレビューに書いてくれましたが、この曲、最後にだけコーラスが入るのが、一番好きなところです。「さんかくもすごいや」の「ごいや」のところ。
梶原 : このコーラス・ワークがすごい好きで。本当はその前のずっとオクターブで歌ってる部分でも、このハモりを使いたいんだけど、使わずに我慢できた自分を褒めたいです。
未來さんがグレードアップすれば歌詞もグレードアップする

──6曲目は “にんげんさんか” です
雨宮 : 最初の「僕から見えてたライオンは 君からすればただのネコなんだって」ってところが、ひとによって見えかたが違うよね、っていうことだと、すぐに理解できました。私から見たらすごく大変なことだけど、他のひとからしたらすごく小っちゃなこと、って最近そう考えられるようになって、そのタイミングでこの曲が来て「あっ」って思いました。
梶原 : これは僕を褒めてほしいですね。僕は日々、未來さんの考えを自分なりに解釈していて、未來さんの考えかたが変わったときも分かるんですよ。NaNoMoRaLの歌詞って、未來さん自身を歌ってるから、未來さんがグレードアップすれば歌詞もグレードアップするんです。
──おおおおお
雨宮 : やばい! 私が変わらないと、変わっていかないんだ。
梶原 : だから歌詞を受け取って、未來さんが、「これは私のリアルタイムだ」って思うことが多々あると思うんだけど……
雨宮 : うん、ある。
梶原 : ……それは、それに合わせて書いてるからです。
──いま、NaNoMoRaLのヤバいところを見ている気がします。「人間賛歌」って大きなテーマですよね
梶原 : タイトルで言うと、僕は今まで全部の曲に「人間賛歌」ってつけたいぐらいだったんですよ。ずっと温めてたタイトルで、ついにこの曲で使ったっていう感じです。「人間賛歌」にしたい曲、過去にもいっぱいあったんです。今回、いちばん「人間賛歌」っぽいのができたんで、これで使おうと思いました。
──楽曲の部分はいかがでしょう
梶原 : 僕、サビのコードがぜんぶ一緒なんですよ。バンドセットのライブでは、ヒダカトオル (THE STARBEMS) さんがギターを弾いてくれるんですけど、ヒダカさんに「ぜんぶ一緒だな」って言われていて。なので、今まで使ってこなかったコードを使いました。サビの「それでも僕を」の部分。
梶原 : このコード、よく出たなと思って。ヒダカさんにバンドセットでこれやりますって渡したら、「いいね」って言われました (笑)
──コード名でいうと?
梶原 : Dm7-5 (Dマイナー7♭5) かな。
これが歌いたくて今までやってきたのかな

──最後の曲、“ピース” です
梶原 : 僕、この曲めっちゃ好きで。この曲って、メイン・ボーカルは僕なんですよ。頭の歌メロから好き過ぎて、「ほんとごめん、歌わせてくれ」っていう気持ちで歌割りをした曲です。これが歌いたくて今まで音楽をやってきたのかな、っていうぐらい好きな曲です。いままでそんなことほとんど考えたことないけど、歌メロを邪魔しないようにアレンジしました。
──そのアレンジの1番のポイントは?
梶原 : 僕、楽曲の相談は未來さんにしないんですが、この曲は唯一、それも一番最後のコード進行を未來さんに相談しました。「きっと笑えるのだピース」のところを、C → D にするか、C → Cm にするかで、めっちゃ悩んで。
梶原 : 理論的には C → D だとぶつかるんで、C → Cm のほうが自然なんですけど、C → D のほうがよくて、岡野陽一さんのエンディングで書き下ろしたときも C → D で作ってるんです。C → Cm に変えてミックスまで行ったあと、まだ悩んでて、未來さんに聴いてもらったんですよ。そうしたら、未來さんが「前のほうがいい」、「アルバム最後の曲なので、明るく終わったほうがいい」って言って。信じて C → D でいきました。相談してよかったです。
ちょっとでも世界が動くと思って曲を作り続けてる

──ありがとうございました。最後におふたりから、今日のお話を経て『wa se te wo』をこんな風に聴いてもらいたい、といったメッセージがあれば、ぜひ
雨宮 : 今日お話ししたことがすべてじゃないというか、ぜんぜん自分の解釈で聴いてもらっていいし、考えかたを変えながら聴いていってくれたらいいなと思います。ひとは変わっていくからね。
梶原 : 音楽をやっていると、なんのためにやってるんだろう? って思うときがあるじゃないですか。何年か前の誕生日でお客さんがメッセージカードを集めてくれたとき、ヤスエでんじゃらすおじさんが、「世界はなにも変わらないけど1mmでも動かしてやろうと思わんと、なにも変わらないことを知ってる。だから続けてるんやろ?」って書いてくれたんです。それ以来、僕はそれを人生のテーマにしてるんです。だから、これを聴いて誰かの気持ちがちょっとでも動けば、僕は、やってる意味があるなと思ってます。そういう気持ちで僕はやっているので、みなさんは勝手に聴いてください。






















































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































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