埼玉音楽シーン相関図
「ぐるぐる回る」は、みんなが意識しているフェス(山崎)
——今年のぐるぐる回るは埼玉色が出ているじゃないですか。多分自然に出て来たものだと思うんですよ。竹内さんという大きな存在がいなくなったことによってその大きな存在を埼玉に求めたというか。そんな中で、伊藤さんがぐるぐる回るでやりたいことってありますか?
伊藤 : ストーリーみたいなことがあっていいなと思っていて、若いバンドがどんどん上がっていくような。もっと若いバンドにも出てもらって、その子たちが頑張って活動して大きいステージにあがっていければいいなと思ってます。
――ライヴ・ハウスの人がでかいイベントをブッキングすることって、めっちゃいいと思います。ライヴ・ハウスっていう小さい出口しかなかったのに、次が見えるんですよ。それってアーティストにとって面白いことだと思うんです。
伊藤 : そうですね。とはいえ埼玉でもそこまで浸透してないので、バンドがそこまで考えてくれていないのが残念ですけど。埼玉の若いバンドの目標のひとつにしたいです。
——野村さんは、ぐるぐる回るにどのように関わっていますか?
野村 : 毎年クラブ系のステージをやっています。もともとの始まりが、フェスなんだしクラブ系のステージもあってもいいだろうってことで、竹内さんに直接メールを送ったんですよ。俺の中で埼玉を盛り上げたいっていうのもあるし、クラブ・シーンを盛り上げたいっていうのもあって。
——埼玉のですよね?
野村 : 埼玉もそうだし、全国までは到底できないですけど、きっかけのひとつにはしたいなと。元気ないじゃないですか? 今のクラブって。フェスに来るような若い子達にクラブの疑似体験じゃないですけど、「クラブって怖くないし、お酒飲んで音楽に身を委ねるのって楽しくない?」みたいなことを体験してほしいなっていうのが自分の中のテーマにあって。
——明確ですね。
野村 : あるんですよ。実は。
川瀬 : 初めて聞いた(笑)。代表なのに。
——その考えを凄く聞きたかったんです。その考えがないとキュレーター制の意味がないんですよね。キュレーター制ってたぶん個々のキュレーターがやりたいこと、表現したいことをできる場所だと思ってはいて、そこに可能性があるなと思うんですよね。
川瀬 : 僕もいま野村さんの意見を初めて聞いて。他のキュレーターの話も聞きたくなりました。
——山崎さんはどうですか?
山崎 : 昨年はお客として見に行って、「今年は一緒にやれたらいいですね」と竹内さんと話をしていたところでの、突然の訃報を聞いて。このままなくなってしまうかとも思いましたが、川瀬君たちが動きだしたんで僕も一緒にやるよと。その後、前回の埼玉音楽の未来会議の話があり、そこで飯田さんとも繋がって、今回の座談会にも参加しているという。いろんな線が徐々に繋がってきている感じはありますね。今年のぐるぐる回る自体も、地元出身のthe telephonesやLOST IN TIMEの出演が決まり、他の埼玉のバンドも意識し始めたりしてて、「今回は埼玉色が強くね? 」と(笑)。ぐるぐる回るが埼玉でやるってことに対して、埼玉のみんなは何かしら感じていて、「もちろん俺ら関係ないっす」っていう奴らも含めてみんなが意識しているフェスだと思うので。
多くの人に観に来て欲しいです(川瀬)
——今、埼玉のバンドが意識しだしたという話がありましたが、kussyさんはアーティスト目線から、ぐるぐる回るをどう捉えてますか?
kussy : アーティストにとって、フェスに出れるというのは単純にうれしいことだと思います。特に俺らみたいにクラブ・シーンやヒップ・ホップ・シーンの奴らがフェスに出れるというのはすごく意味のあることだし、今回であればthe telephonesやPE'Zと同じ空間でライヴができるというのは、とても高いモチヴェーションにもなりますよ。なので、ぐるぐる回るにまず出てみたいというような、ひとついい目標になるような気がしますね。埼玉のミュージシャンにとってはひとつの指標にもなると思う。
川瀬 : 例えば、Heartsでブッキングしている伊藤さんがぐるぐる回るに関わってることでHeartsに出ているバンドがぐるぐる回るに出れるかもしれないと思うことが、埼玉のシーンを盛り上げるってことに繋がってくると思う。
kussy : ちゃんと頑張っていれば見てくれるし、見てもらえるような活動をしようとアーティストが思うのはいいことですよね。見ててもらえるんだって感覚が大事だと思う。
川瀬 : スタジアムのコンコースってはっきり言って、アーティストとしてはやりやすい環境ではないかもしれないけど、そのあたりは?
Kussy : 音がいいとか環境がいいのというのは、まあ、それにこしたことはないんだけど、ぐるぐる回るはそこじゃない楽しみ方を皆がしていたし、ああいう雰囲気がアーティストにとってもおもしろいんだと思う。昼間っから酒飲んで(笑)、わいわいやって、みんなぐるぐる回って。
山崎 : あの学園祭みたいな雰囲気がいいですよね。大人の文化祭みたいな。色んなステージがあって。
川瀬 : ぐるぐる回るの文化祭的な雰囲気を、より多くの人に体験してもらいたいし、伝えたいですね。そういえば余談ですが、ツイッターで「the telephonesがぐるぐる回るなんていうアングラ・フェスに出るわけがない。デマだ」というツイートが流れて(笑)。たしかにそういう見方もあるんだなと。
Kussy : the telephonesって、キラキラしてますからね。
川瀬 : 魔ゼルなでこキ犬とthe telephonesが一緒に出るフェスなんて他にないわけですよ。そういうところを面白がってもいいなと。そういう意味でも、多くの人に観に来て欲しいですね。ぶっちゃけ、集客がないとフェス自体を続けることができませんからね。スポンサーもいないし。スタッフは普通に仕事をしながらやっているわけです。おこがましい言い方だけど、簡単に来年もあると思ってほしくない。続けるためにはお客さんに来てもらわなければいけないし、そのために精一杯努力しているところです。
山崎 : 確かにそうですね。キュレーターとしても、ほとんど持ち出しでブッキングしているわけなんで、来てくれるお客さんにはチケット代をこのフェスを続けるためのカンパだと思って参加してくれたら、正直嬉しいですね。特に、バンドマンなんかみんなで味わっちゃえば凄い事が体感できると思う。普段聴かないような音楽とかいっぱいあると思うし。興味本位で覗いてほしいですね。
——皆さんに最後にお聞きします。埼玉の音楽の未来はどうなっていくのか? そして、ぐるぐる回るの向こうにある未来ついて。
川瀬 : 僕の立場からは、ぐるぐる回るを埼玉スタジアムで続けるということに尽きます。それが未来の埼玉の音楽シーンにつながることだと思っています。
伊藤 : 僕はライヴ・ハウスで働いているので、まずはライヴ・ハウスが盛り上がってほしいなあと思っています。今、このフェスをきっかけに皆1つになろうとしているので、この火をたやさず、盛り上がるような動きを続けていきたいです。
野村 : もっとクラブ系とか打ち込み系のシェアを広げたいですね、ぐるぐる回るでも。スペインのソナー・フェスティヴァルみたいな感じの、打ち込み系の見本市みたいなものをぐるぐる回るでできたらいいなと。
kussy : 特に埼玉のこと考えてはないんですが(笑)。自分のことしっかりやって活動出来れば自ずと埼玉の音楽シーンの未来にも貢献できるかなと思っています。
山崎 : ぐるぐる回るをきっかけに僕らは盛り上がっているけど、このフェスに関わっていない人たちも、どこかで何かを起こしてくれればいいなと思います。ぐるぐる回るだけが埼玉の音楽シーンを代表しているなんて言うつもりもないし、他の場所でも面白いことが起こって、それぞれのシーンで盛り上がり、繋がっていけばいいなと思いますね!
——皆さん、本日はありがとうございました。
PROFILE
川瀬拓
ぐるぐる回る実行委員会代表。普段は自営業。
山崎やすひろ(MORTAR RECORD)
埼玉熊谷でセレクト・インディーズCDストアを営む傍らでイベントも切り盛りする“なんでも屋”。今年キュレーターとして初めての「ぐるぐる回る」参加。四十路。
伊藤大輔
埼玉県さいたま市大宮出身、一部でカルト的な人気を誇っていたバンド“トキメキ泥棒”のメンバーとして活動し、2007年に大宮から西川口に移転したライヴ・ハウス“Hearts”でブッキングを担当している。
野村アリマサ
春日部市在住。某大手CDショップの都内大型店CLUBバイヤーを務める傍ら、地元・埼玉にて不定期/不定形のアンダーグラウンド・パーティを主催。過去にやけのはら、DORIAN、Eccy、9dw、CHIDA、DJ HIROAKI a.k.a. PSYCHOGEM、CRYSTAL((((さらうんど)))/Traks Boys)、CHERRYBOY FUNCTION、peechboyやYOU KOBAYASHI(順不同)らを招聘。特定の歴史が見えにくい埼玉のクラブ・シーンをよく知る事情通。
Fragment
フラグメント。kussyとdeiiによるトラック・メイカー・デュオ。レーベル「術ノ穴」主宰。ヒップ・ホップを根底に様々な音楽要素を自由な発想で還元し、独自の音を生み出す。ジャンルレスなアーティストへのプロデュース・Remix(ツジコノリコ、撃鉄、tengal6 etc...)をはじめ、2007年ワールドカップバレーのCM音楽や映画音楽を製作するなどクロスオーバーな活動を展開。環ROYとの共作盤『MAD POP』(2008年)、2ndアルバム『vital signs』(2010年)は数々の有力媒体でベスト・ディスクに選出され、シーンに強烈なインパクトを与えた。Liveでは2台のサンプラーとPC、lenoの映像を用いて大型フェスからライヴ・ハウスなど場所を問わず出演。2011『鋭 ku 尖 ル』、2012年初のインスト・アルバム『narrow cosmos 104』をリリース。主催fes『ササクレフェス』をはじめ、2012年も様々なプロジェクトを控えている。
OTOTOYローカル・コンピレーション・シリーズ!
第1弾 : 京都『ゆーきゃんと巡る京都音楽百景』
第2弾 : 名古屋『名古屋音楽シーン 徹底解剖』
第3弾 : 埼玉『 埼玉音楽の未来会議』
第4弾 : 福岡『 今、福岡で鳴っている音楽』