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ゆーきゃんの手書きによる京都音楽シーン相関図
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コミュニティの境界線が曖昧になってきている
――アヴァンギャルドなサウンドは?
「P-hour」が種をまいた、美大やカルチャーとの結びつきが深い音楽シーンは、ライヴ・ハウスを飛び出してゆく傾向を見せています。UrBANGUILDやMETROのほかにも、cafe independantsや京都芸術センター、立誠小学校を使ってのイベントが増えていますね。
――そこにRei HarakamiやPsysexが絡んだりする?
ゆるやかにクロス・オーヴァーしてますね。Rei HarakamiやPsysexは昼のアート・シーンと夜のクラブ・シーンどちらでも支持されている。でもちょっと注意して考えなきゃいけないのは、アーティスト同士のクロス・オーヴァーがあるからといってお客さんがそこに付いていっているかどうかは僕だけの視点ではわからないということなのです。けれど確実に言えるのは、京都においてもともと緩かったはずのコミュニティの境界線が、アーティスト、オーガナイザーやハコの頑張りによって、さらに曖昧になっているということ。それによって、お客さんも色んな音楽を聴くのが当たり前になってきているなと感じます。
――それは何故?
ごちゃ混ぜのイベントが増えてきているからかな。ライヴ・ハウスの人やオーガナイザーが面白いブッキングを考えて、出演するアーティストがその趣旨に賛同して楽しみ、そこにお客さんが付いていく、そういう流れは拡大する傾向にあります。それについては、このあいだSECOND ROYAL社長の小山内信介くんやCLUB SNOOZERのDJの田中亮太くんと話した時に「ボロフェスタが種を撒いた考え方」だという指摘をもらいました。あとはレコード屋の影響力も大きいと思います。特にJET SETは、元々ダンス・ミュージック専門店だったのが今はグッド・ミュージック専門店のようになっていて、クラブ向け以外の音源も売れるようになってきているようです。たとえば奇妙礼太郎くんは、クボタタケシさんやDJ YOGURTが激押ししたことで、ロックンロール好きの若者からクラブで踊る女の子にまでその存在が広がりましたよね。
――TOWER RECORDSはどう?
一時期やめていたインストア・ライヴも再開して、また盛り上がり始めてきたように思います。僕もこのあいだスタッフさんからお話をいただいて、シグナレス、あらかじめ決められた恋人たちへ、ゆーきゃんにまつわるアーティスト人間関係の相関図をまとめて、各作品について僕が紹介していくという企画をタワレコ京都でやりました。CD自体の売上が厳しくなっている中で、タワレコが昔から持っていた「今、何が旬なのかをチェックしに行く場所」という機能に加え、さらに別の「何か」を探している途上のようです。もちろんJET SETとTOWER RECORDS以外にも京都には色んなレコード屋がひしめきあっていて、DJのRYOMAさんが経営するTRANSIT RECORD、カフェやイベント・スペースとしても人が集まるJAPONICA、レコ屋なのにサロンみたいなあたたかい雰囲気の100000tなどが、現場に人を集める原動力になっています。京都の人たちはそれぞれ個性や色をうまく乗り換えたり乗りこなしたりしているようですね。
うーん。いまでは、何がオルタナティヴかもわかんないですよね。ほら、90年代後半からずっと、ポップスがオルタナを取り込んできたじゃないですか。だから、いわゆる古典的なオルタナティヴというのがどこで生き残っているのかを見つけるのは難しい。このジャンルの図式っていうのは、先輩格のすごいバンドがひとつあって、そこに人が集まってゆく、というものだと思うんです。メイン・ストリームじゃないからオルタナティヴな訳で、場所ではなく人の力ありきなんですよね。その先輩格のすごいバンドっていうのが、ULTRA BIDE、VAMPIRE! なのか、FLUID、キツネの嫁入りなのか、bedなのか、OUTATBEROなのか、そもそも彼らは「オルタナ」なのか、ジャンルが曖昧になりすぎて、いまではあまりよくわからなくなりました。ただ、先輩を慕う若者、刺激的な音楽を求めるリスナー、そういう場所があることだけは確かです。
――その中で、例えばLLamaはどういう存在?
LLamaはUrBANGUILDでずっとやってきた印象が強いですね。前のアルバムもSunday TuningというUrBANGUILDのスタッフさんのレーベルから出しているし、一昨年のPARAとのツーマン、去年のワンマン、そして次のレコ発もずっとUrBANGUILDです。なかなかメンバーが定まらず活動のペースもゆっくりだったけど、最近対バンで彼らを見た時に、ようやく体制が整って勝負に出る準備が出来たんだなと感じました。実際、秋のアルバム・リリースに向けてUrBANGUILD以外でのライヴも増やしてゆくそうです。あと、彼らの面白いところは、メンバーがそれぞれ、LLama以外の広いフィールド、つまり他のバンドやサポート・アクトであちこち活躍しているということです。ボーカルの吉岡哲志は以前audio safariの専属PAとしてバンドを支えていましたし、ベースの藤井都督はキツネの嫁入り、片方のドラムの石渡新平はOUTATBEROの正規メンバーです。ちなみに、ぼくも石渡くんとは古い付き合いで、10年以上前から一緒にバンドをやったりセッションしたりしています。もう片方のドラムの妹尾立樹はsister tailやmaison de sisteriaといった自身のバンドやプロジェクトで歌をうたうシンガー・ソングライターでもあり、ドラムではYeYeのサポートをしたりしています。そう考えると、界隈のあちこちで京都インディーを支える名うてのミュージシャンたちが、ついに表舞台に立つ、という状況はこの街のシーンが成熟してきたひとつの証かもしれませんね。
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OUTATBEROや空中ループもそうですが、ライヴ・ハウスがバンドを育む、あるいはバンドが一つの場所をホームと定めて活動する。そこにはハコとバンドの理想的な共生関係があります。ある時から巣立って、あるいは評判が広がって、他のライヴ・ハウスでも見かけるようになるんだけど、バンド自身が「ホーム」と思っている場所は皆わかるんですよね。初めてライヴを観るバンドでも、ステージングや音楽性、出音などから、どこに出ていそうだとか、どのハコで主にやっているか、それがわかるのは面白いなと思います。
アンダーもオーバーも、ローカルも全国も、夜も昼も関係ない、新しい時代が来てほしい
まず「いわゆる若手の、生活を犠牲にしても音楽をがんばろう! というバンドに限って」という保留をつけて話しますね。最近ではモーモールルギャバンが一番の例ですが、彼らは京都で盛り上がるよりも早く東京で受け入れられて、逆輸入で京都でも人気が出ましたよね。この現象について先日東京でインディー・レーベルをやっている友人と話していて、これはもしかすると、いくらローカル・シーンでいくら盛り上がろうともその先は無いということなんじゃないか、という話になりました。東京だと「アンダーグラウンドでの評価」を狙うのか、「オーバーグラウンドに出る」ことを目指すのか、それをまず選ぶけど、京都はそこが曖昧で、今はまだ、みんな行けるところまで行こうとしている状態です。でも今後ライヴ・ハウスの活性化に伴ってシーン自体が底上げされた時、バンドはアンダーかオーバーか、あるいはあえて両方を狙うのかを選択しなくてはならなくなる。このまま無自覚なままだと、ちょっと怖いことが起きるるんじゃないかという不安があります。その一方で、全国的に名前が知れていて、くるりもULTRA BIDEもPsysexも大好きで、かつたくさんの大学生をインスパイア出来るバンドが出現すれば、アンダーもオーバーも、ローカルも全国も、昼も夜も関係ない新しい時代が来るかもしれない。来て欲しい。そんな希望も捨てきれないんですよね。いまの京都には可能性がごろごろしているので、どうにも夢をみてしまうわけです。
――ゆーきゃんが思う今一番面白いバンドは?
個人的に、最近ライヴ・ハウスで見て面白かったのは、my letter、3月33日、星の王子さまたち、odd eyes、賢いユリシーズ、そしてTRIPMENです。その一方で、オクノ修、ふちがみとふなと、JB、山本精一、ベートルズ、騒音寺にSOFTなど、この街にはいつまでたってもやめない大人がたくさんいて、彼らの音楽を聴くたびに、自分ももっと精進しようと思います。若者の現場であるライヴ・ハウスでは、横のつながりがミックスされてきて盛り上がり始めているので、次は縦に世代のミックスが起これば、もっともっと面白いことになるだろうなと思います。
――ゆーきゃんはその役割を担わないの?
残念ながらぼく自身、上の世代との繋がりはあっても、下の世代のことはわかってないことも多いんです。ぼくに出来ることもあるとは思いますが、それもぼくひとりの趣向や想いの中に限られてしまいます。もしかしたら世代の溝を埋めるのは、それこそライヴ・ハウスの役割なのかもと思います。
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――では、その中でフェスはどういう動きを見せて行くんでしょう?
京都大作戦では、先ほども言った通りライヴ・ハウスKYOTO MUSEの行貞店長がバンドを推薦する枠があって、若いバンドの登竜門を作っている。京都音博では、学生とのコラボレーション企画で「オンタク」というサブ・プロジェクト展開し、デモ・テープを主催のくるりに聴いてもらったり、サイト内で取材をするなど、ステージとは別のところで若いバンドにフォーカスを当てる動きを見せています。最近始まった長岡京ソングラインは井上ヤスオバーガーやVOX HALLの有堀店長らが始めたフェスで、長岡天満宮一帯に4ステージをつくるんですが、ドラム・セットが入らないから全部弾き語りなんですよ。出演者の面々は「いい音楽をやっている友達」で、有名無名問わずいろんなうたうたいが駆けつけていて、お客さんもそのアット・ホームな感じを楽しんでいて、可能性があるイベントだなと思いました。ボロフェスタは、京都シーンへの貢献ということをできるだけ意識せずに、今面白い京都のバンドを、面白いかたちで巻き込めたらということを、スタッフ同士でよく話します。主催バンドはそれはもうカッコいいフェスにしなければ自分が出演する意味はありませんし、現場の人間であるnanoのモグラ君は若い子をピック・アップしたいという熱意を持って企画に臨んでいるので、いつも過剰で、狂った感じになる。そういえば、この4つ、色は違いますが全部ミュージシャン発信ですね。理想を言えば、こういう「祭り」のエネルギーを吸収した次の世代が、今度は自分たちであたらしいことを始めて、それが日々のライヴ・ハウスやクラブの現場に還元されてゆけばいいと思っています。
ゆーきゃん profille
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これから京都で起こる夏・秋フェス
『京都大作戦2011』
2011年7月9日(土) 10:00 開場 / 11:30 開演
2011年7月10日(日) 10:00 開場 / 11:30 開演
@京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ
出演 : ACIDMAN、THE BACK HORN、サンボマスター、10-FEET、難波章浩 -AKIHIRO NAMBA、フラワーカンパニーズ、MINMI、ROTTENGRAFFTY、STOMPIN' BIRD、dustbox、Dragon Ash、PUSHIM、POLYSICS、マキシマムザホルモン、RHYMESTER 他
『京都大作戦2011』official HP
『BOROFESTA2011』
■nano BOROFESTA
2011年 8月27日(土)・28日(日) @京都・livehouse nano& Bar rakuBouズ
CHARGE FREE!!!!! (要2ドリンク代 1000円)
出演 : 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団、HALFBY and His Mystic Arkestra、OUTATBERO、ザ・ドクロズ、DODDODO、Ken South Rock Japan(ex.宙ブラリ)、ドブロク、NOKIES!、欠伸(ゆーきゃん+赤井裕(スーパーノア)+岩橋真平(スーパーノア)+岡村寛子(ときめき☆ジャンボジャンボ)+石渡新平(OUTATBERO/LLama))、ザ・シックスブリッツ、thatta、ワゴンズ、ときめき☆ジャンボジャンボ、ピアノガール、賢いユリシーズ、house. 他
■大前夜祭
2011年10月21日(金) @京都 KBSホール
■昼の部
2011年10月22日(土)・23日(日) @京都 KBSホール
■夜の部
2011年10月22日(土) オールナイト @京都 CLUB METRO
『BOROFESTA2011』official HP
『京都音楽博覧会2011 IN 梅小路公園』
2011年9月13日(金・祝) @京都梅小路公園芝生広場
『京都音楽博覧会2011 IN 梅小路公園』official HP