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INTERVIEW : PEDRO
アユニ・Dが、PEDROとして再出発を果たした。解散の次の日に行われたFEVERのライブは、決して彼女の思い描いたライブではなかっただろう。そのことをちゃんと見つめて、それでも強かに前も向いて進む姿に、強い覚悟と決意を感じたし、彼女のファンに同年代の同性のファンが多いことは、とても納得がいく。彼女の持つ危うさと強さ、その魅力に不思議と惹きつけられてしまう。さぁ、新しいPEDROが始まった。もう一度武道館でも横浜アリーナでも見たい。そしてやっぱり、東京ドームで見たいぞ!!!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 藤田琴音
写真 : 大橋祐希
暮らしや生活に寄り添うような、温度のある音楽を作りたい
──2021年12月22日で横浜アリーナにて開催されたライヴ〈さすらひ〉をもって、PEDROは活動を休止しました。活動休止の理由はどういうものだったんでしょう?
アユニ・D (以下、アユニ):BiSHが解散するまでは、BiSH人生を全うしようというのが主な理由です。スタッフ含めPEDROチームとしては、BiSHが解散しても私がPEDROとして生きていけるように動いてくださっていたんです。自分はBiSH やPEDROを始めて人生に革命が起きて音楽を好きになったから、BiSHの活動が終わってもPEDROとして変わらず創作活動がしたかったんです。そのためにも、解散までBiSHというものに集中して向き合いかったのが経緯です。
──BiSHが解散したいま、不安な気持ちはありますか?
アユニ:今は不安じゃないです。ここからやりたいこともやらなきゃいけないこともたくさんあるんです。いまは時間に縛られすぎることもなくなったので、昔以上にもっといろんなことができていて活力になっています。これからは本当に頑張んなきゃ、という感じです。
──なるほど。BiSH解散の翌日である2023年6月30日には、新代田FEVERでシークレット・ライヴ〈午睡から覚めたこどものように〉を開催しましたが、どういう意図で実施したんですか?
アユニ:表現者として、表現を止めずにいたい思いがありました。自分は何かを表現していないと生きている心地がしないですし、創作や芸術に心が養われるので休まずやりたかったんです。あとは単純におもしろそうだな、びっくりするだろうなという気持ちもありました(笑)。
──実際にライヴをしてみてどうでした?
アユニ:バンドってこんなに難しいんだなということと、こんなに難しいのに、世の中でバンドをやっている人がたくさんいることに改めてびっくりしました。自分たちで音楽を作り上げて、それを生で鳴らして、お金を払って観にきてくれている人がいるという凄まじさと険しさを忘れていましたね。
──そうだったんですね。
アユニ:PEDROが活動休止している間も、ちゃっかり自分の好きなライヴを観にいっていたんですが、みんな当たり前に上手くてカッコいいんですよね。それがバンドの普通だと思っていたけど、いざ自分でバンドマンとしてライヴをしてみるともうたまらんですね。もっと頑張んなきゃと感じました。音楽って難しいです。勢いだけで誤魔化せるわけではなかったです。
──当日はお客さんの熱量がすごかったですね。
アユニ:そうですね。お客さんの中には東京ドームの翌日で寝てない人もいて、みんな目がぎらついていました。高熱のときに見る夢みたいな、カオスな時間でした。よくも悪くも、一生できないライヴになったんじゃないかなと思います。
──PEDROとしては久しぶりのライヴだったと思いますが、活動休止期間もPEDROとしての活動はされていたんですか?
アユニ:水面下では楽曲の制作をしたりしていました。表に立つことがなかっただけで、活動休止していた意識は自分ではあまりなかったですね。
──活動休止以降、アユニさんのなかに変化は生まれましたか?
アユニ:PEDROとしてどういう音楽を作っていきたいのかという輪郭がはっきりしてきました。暮らしや生活に寄り添うような、温度のある音楽を作りたいという思いが確信に変わってきました。今までのPEDROでは自分の作りたいものがここまで明確には見つかっていなかったし、見つけられるまでの場所にも立てていなかったんです。だけど、今はゼロからたくさん経験させてもらって、自分がどういう音楽を作りたいのかがわかってきました。
──具体的にはどういう音楽を目指しているんですか?
アユニ:これまでは鬱憤とか、斜に構えて世の中を見ていることを音楽にしていたんですけど、今やりたいことはそうじゃないです。お守りみたいな曲を作りたいという思いがありますね。曲を作っているとパソコンvs自分みたいになって、この惑星で一人ぼっちになってしまう想像に囚われることもあるんです。でも、これが完成したときにきっといろんな人に届いてこの曲に命が芽生えるんだなと思ったら、あまり暗いことをたくさん書きたいわけじゃないなと気づきました。今は自分が触れてきた優しさや暖かさをぎゅっと詰め込んだ音楽を作りたいですね。
──大きな変化ですね。
アユニ:もちろん暗いときの私が好きなファンの方もいると思うんですよ。でも私はいい人になりたいし、ナイスな方にいくから。だから今が1番いい感じだと思っています。