今思い返してもこの時期は本当に、“イケイケどんどん”でしたね
──2枚のシングルを経て、いよいよファーストアルバム『忘れらんねえよ』(2012年3月7日)がリリースされます。デビューアルバムの曲には特にエピソードが多そうですね。

柴田 : “俺を守りたい”は、10-FEETのTAKUMAさんが好きって言ってくれてました。たしか当時TAKUMAさんが書かれていたブログで、「ライヴ前に緊張するときに聴いてる曲」として、忘れらんねえよの“俺を守りたい”が、なぜかSIONさんの曲と共に挙げられていて。「マジかよ!?謎過ぎる!」みたいな(笑)。お礼をしようと思って事務所にCDを送ったら返事をくださって、その後応援コメントも頂いたんですよね。あと “慶応ボーイになりたい 〜ドラマティック・ラブ〜”(シングルとは別バージョンを収録)は、ライヴで必ず2分ぐらいのMCをしてました。今でいう“ばかばっか”のビールを飲むくだりみたいな感じで、学園祭とかで鉄板でウケるのが「おがっちを慶応ボーイに取られた」っていうMC、というか漫談だったんですよね(笑)。慶応大学の文化祭にスキマスイッチのオープニングアクトで出たときにも、“慶応ボーイになりたい”の漫談をやってすごくウケてました。半分嘲笑だったけど(笑)。
──デビューアルバムを出すにあたっては、当時どんなことを考えていたんですか。
柴田 : 特に当時はフルアルバムを出すってめちゃくちゃ重要なイベントだったから、野心がすごくありました。まだ何者でもないからこそ、何者にでもなれると思っていて。目標はオリコン10位以内を狙えなくもないぞってマジで思ってたし。まあ、全然いけなかったんだけど(笑)。だからこそMVが大事だったし、尚且つ、“CからはじまるABC”で『カイジ』のED曲、“僕らチェンジザワールド”のMVに萩原さんが出演、その間に“この街には君がいない”でジャックスカードのタイアップ(コンピレーションアルバム『JACCS presents あなたの夢に応援歌 Cheer song for your dreams』に参加)っていうのが続いてたから、ファーストアルバムを出すにあたって、ここは特大のやつをちゃんとやれないといけないっていうことで、リード曲“忘れらんねえよ”のMVに女優の二階堂ふみちゃんが出演してくれたんですよね。
──当時はまだ無名に近かったんですよね。
柴田 : まだ有名になる前で、MV監督の中村佳代さんが見つけて、いいなと思ってオファーしたらOKだったんです。このMVは休み中の小学校で撮影していて、そこに二階堂ふみちゃんが学園祭でライヴやるかとかでストラトキャスターを背負ってやってきたんですよ。教室が控え室だったんですけど、合間にそこでギターを練習していて。「何の曲を練習してるんですか?」って訊いたら、「東京事変の曲を練習してます」って言ってました。ああ、文化祭だなあって(笑)。めちゃくちゃ可愛いくて大人しい方でした。
──“忘れらんねえよ”という曲は、アルバムで初めて出てくるじゃないですか?これっていつできた曲なんですか。前からあったのかそれともアルバムのために作ったのか。
柴田 : 超初期にもあったと思います。なんなら“CからはじまるABC”より前にあったんじゃないかな?高校時代からメロディーは頭の中にあって、このバンドを始めたときに、初めて〈忘れらんねえよ ベイベー〉って歌詞を当てました。で、Aメロは今の歌詞ではなくて、当時はバンドメンバー紹介の歌詞だったんですよ。自主制作CD-R「ドリル・ラブ」に収録されてるバージョンはそうなってます。酒田を紹介するところが〈ドラムが苦手~〉みたいなひどい歌詞なんですけど、俺が勝手に録ってそれを物販で売ってたら、酒田がライヴ帰りの電車の中でキレ出して。そりゃそうですよね(笑)。「マジで腹立つから歌詞を変えてくれ」って言ってきたんですけど、俺もムキになって「嫌だよ」って断って(笑)。でもこれはさすがにチョケていい曲じゃないな、と思って歌詞を書き直したんです。でもメンバー紹介として一回定着してた歌詞だったから、なかなか書けなくて。
──どうやって今の歌詞を書くことができたんですか。
柴田 : 当時、庵野秀明さんがプロデュースした平野勝之監督の『監督失格』っていう作品を映画館で観たときに、素晴らしくてめちゃくちゃ泣いちゃって、鼻をかもうと思ってトイレに入ったら、〈日差しが強い だけど暑くない〉以降の歌詞がドバッと出てきて、「うわっ書けた!」みたいな感じで書けたんですよ。
──へえ~!
柴田 : 俺、“いい作品”を観たらやっぱり歌詞が書けるんだなって。先日も又吉直樹さんと秦基博さんの「朗読×音楽ライヴ」っていうイベントを見させてもらったんですけど、そのときも歌詞ができたんですよ。あと、仲良くしているバンド・南無阿部陀仏のボーカル・まえす君から、ベースの阿部君が抜けるからライヴに来てくださいって言われて観に行ったら、やっぱり歌詞が出てきたんです。それはもう仕組みとしてあるんだなと思って、これからは意識的にライヴを観に行こうと思ってます。


──忘れらんねえよにとって、“忘れらんねえよ”という曲があるとないとでは、まったく違いますよね。
柴田 : テーマソングですよね。歌詞的にも、いつ歌っても「ああ、そうだよな」って思うし。 でもこのアルバムは自分じゃ聴けないんですよね。演奏とかテンポとか未熟すぎて。歌唱も見てらんない、みたいな。
──いやでも、そこを含めて聴く側は愛おしく思ってる作品ですけどね。
柴田 : まあね、この感じは二度と出せないでしょうから。今思い返してもこの時期は本当に、“イケイケどんどん”でしたね。

※次回4月4日(木)掲載
【のたうち回るトライ&エラー期】
~4thシングル『僕らパンクロックで生きていくんだ』から1stミニアルバム『あの娘のメルアド予想する』まで~ (予定)
編集 : 西田健
LIVE INFORMATION
〈全曲LIVE〉

~忘れらんねえよの曲全部やる~
既存97曲+新曲3曲解禁。3日間で全100曲やり切ります。
2024年4月28日(日)下北沢 近道
開場 18:30/開演 19:00
2024年5月1日(水)下北沢 QUE
開場 18:00/開演 18:30
2024年5月3日(金)下北沢 近道
開場 17:30/開演 18:00
〈酒クズとツレ伝。〉

PK shampooとの対バンツアー
2024年6月1日(土)F.A.D YOKOHAMA
開場17:30/開演 18:00
2024年6月8日(土)名古屋CLUB UPSET
開場17:30/開演 18:00
2024年6月9日(日)千葉 LOOK
開場17:30/開演 18:00
2024年6月30日(日)仙台 enn 2nd
開場17:30/開演 18:00
詳細はこちら
https://www.office-augusta.com/wasureranneyo/live/
忘れらんねえよ ディスコグラフィー
新→古
過去の特集ページ
PROFILE
“2008 年結成。メンバーはVo&Gt 柴田隆浩のみ(他のメンバーは全員脱退)。
2011年TVアニメ『カイジ』のENDテーマとなった「CからはじまるABC」でメジャーデビュー。 2020 年12 月には中野サンプラザで自身初のホールワンマンライブを開催し、成功を収めた。
「ROCK IN JAPAN FES」「COUNTDOWN JAPAN」など大型フェスにも多数出演中。 また、中山美穂、菅田将暉、のんをはじめとするアーティストへの楽曲提供も行っている。
オフィシャル・ウェブサイト
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公式YouTube
https://bit.ly/3CjRpQf
公式Twitter
https://twitter.com/wasureranneyo