「楽しかったのは “中年かまってちゃん” が最後だった」って
──続いてリリースされたのが、セカンドアルバム『空を見上げても空しかねえよ』(2013年10月16日)ですが…
柴田 : (食い気味に)本当苦しかった、これは。しかもこのとき、“高鳴り” の真面目路線が受けたもんだから、ライヴのMCとかひょうきんさがゼロになってたんですよ。ツアーファイナルのリキッドルーム(2014年12月13日)のときなんか無理して熱いこと言うみたいな。相当無理してましたもん。「熱くなれ、熱くなれ!」って思いながら喋ってました。それは、あのときすごい勢いだったTHEラブ人間の金田(康平)くんの影響もあったんです。本当にもう肩に力が入りまくっていて、「売れないといけない、売れないと死ぬ」みたいな。インタヴューのときはもう、オリコンの話とか「売れるとは?」みたいなことを語るような感じで。でもおまえ売ったことねえだろって(笑)。この頃は一番痛々しかったですね。
──リキッドルームのステージで結構長いMCで熱く語った後に、“パンクロッカーなんだよ”(『忘れらんねえよ』収録)を歌ったのがすごく印象的でした。
柴田 : それはそのときに一番大事だった曲というか、象徴してますね。そのときは必死だったから何も後悔はしてないけど、今思うと俺のキャラじゃないんだなとは思います。俺のやることではないっていうか。

──収録曲としては、 “戦う時はひとりだ”(「マイナビバイト」CM曲の原曲)や、“夜間飛行”(日テレ系アニメ『はじめの一歩 Rising』OPテーマ曲)と、一般的に知られている曲が入っています。
柴田 : そうなんですよ。“高鳴り”も入ってるし、このアルバムはそれなりに売れてるんですよね。1曲目の“バンドワゴン”もこの頃を象徴した曲かもしれないです。サビで歌ってる〈今まで僕らの音楽を見下してきた奴に〉みたいな。この頃、オリコンを毎日見ていて、エゴサもすごかったんですよ。本当に10秒に1回ぐらいエゴサしてましたから。もう頭が痛くなってくるんですよ。そんな10秒に1回エゴサしたところで、結果は何も変わらないじゃないですか?でも「期待して裏切られる、期待して裏切られる」を10秒に1回ずつやるんです。そうしたら頭もヤバいことになりますよね。それぐらい、どハマりしてました。
──エゴサでは思うような反響は出てこないかもしれないけど、ライヴ会場で実際にお客さんを前にして支持されているのを実感したりはしませんでした?
柴田 : いやあ、感じなかったですね。ライヴでよく地方には行ってましたし、動員も増えてたんだけど、「えっこんなもん?」みたいな。常に何か足りないっていうマイナス思考に至っちゃう精神状態だったんです。今だったら、「ありがとうございま~す!楽しいな~!」ってなるんですけど(笑)。
──アニメ、CMのタイアップがあったり、ライヴの動員だって伸びてる中で、なんでそんなに追い詰められてたんですか?
柴田 : なんでなんだろう。そこに感謝して楽しんでやってれば、もっともっといけたかもしれないですけどね。
──メンバー間もギスギスしちゃってたんですか。
柴田 : してました。ベースの梅津君は売れるとかそういうことに本当に興味がない人だから。

──梅津さん作曲の “あなたの背後に立っていた” は、全然売れようとしてる曲じゃなさそうですもんね(笑)。
柴田 : そうそう(笑)。あと “中年かまってちゃん” のギターリフって、名前忘れたけど梅津君が超マニアックなアーティストの曲を聴かせてくれて、「こういう感じのAメロにしようよ」ってその場でリフを思いついて作ったんです。バンドを抜けた後に梅津君が言ってたのは、「楽しかったのは “中年かまってちゃん” が最後だった」って。要は、3人だけで作ってたときの最後ぐらいの曲だったんですよね。
──アルバムの曲づくりに関してはどうでしたか。
柴田 : このあたりから、歌詞が書けないみたいなことがチラホラ出だしてきました。“夜間飛行”とか全然書けなかったし。“アワナビーゼー” とか “青年かまってちゃん” も、聴いててしんどくなるんだよなあ。なんか曲を作るという行為が楽しくなくなってきてる感じがあります。
──たしかに、ファーストアルバムにあった、「なんじゃこりゃ!?」みたいなバカバカしさはない気がします。
柴田 : そう、ひょうきんさとか能天気さみたいなのがなくなってるんですよね。
──“中年かまってちゃん” も、結構シリアスな曲ですもんね。
柴田 : そうですね。ちょっと理屈っぽくなってきてるのかもしれないですね。ファーストアルバムなんて、全部思いつきで脈絡とか関係なくやってたから。やっぱり売れたいとか思い出すと、そういうことを考え出すんですかね。
──この時期の自分に何か声をかけてあげるとしたら?
柴田 : 「いやあ、お疲れ!」(笑)。本当、ここからしばらくしんどかったんですよ。

編集 : 西田健
【忘れらんねえよ、全作品を振り返る vol.1】──名曲連発、初期衝動と野心のギラギラ期
アイゴンこと會田茂一氏がプロデュースで参加した、セカンド・アルバム!
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PROFILE
“2008 年結成。メンバーはVo&Gt 柴田隆浩のみ(他のメンバーは全員脱退)。
2011年TVアニメ『カイジ』のENDテーマとなった「CからはじまるABC」でメジャーデビュー。 2020 年12 月には中野サンプラザで自身初のホールワンマンライブを開催し、成功を収めた。
「ROCK IN JAPAN FES」「COUNTDOWN JAPAN」など大型フェスにも多数出演中。 また、中山美穂、菅田将暉、のんをはじめとするアーティストへの楽曲提供も行っている。
オフィシャル・ウェブサイト
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公式YouTube
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公式Twitter
https://twitter.com/wasureranneyo