ここ数年はビート作りにすごくこだわるようになった
――東方神起バージョンのMVやライヴ映像を観たんですけど、メンバーの2人だけじゃなくてダンサーを従えて結構大勢でパフォーマンスしてますよね。
Hi-yunk:そうなんですよね。そこはこの先も課題なんですけど、自分だったら、もうどっしりセンターでギターを持って、“王者感”じゃないですけど、そういう感じでやりたいなって。それもある意味、フロントマンが2人いるBACK-ONとは違う挑戦だと思うんですよ。自分への課題曲でもあるかなと思います。
――曲の冒頭がオリジナルと違って、歌い出しが〈C’est la vie my life〉というサビのフレーズから始まってますよね。これはどういう意味の言葉ですか。
Hi-yunk:僕はNujabesさんとShing02さんが大好きで、もともとKENJI03っていうアーティスト名はShing02さんのもじりなんです。
――そうなんですか!? それぐらいファンなんですね。
Hi-yunk:特にNujabesさんとShing02さんが一緒にやった「Luv(sic)pt.2」が大好きなんですけど、フックで〈C’est la vie(セ・ラヴィ)〉って歌ってるんです。それでなんとなく仮歌のときに〈C’est la vie〉って歌っていたんですけど、調べたらフランス語で「人生そんなもんだよ」みたいな言葉らしくて。それプラス英語で〈my life〉って繋げて、「俺の人生そんなもんさ、気にしないで行こうぜ」みたいな歌詞にしてます。フランス語と英語を繋げた造語ですね。
――曲の途中で三拍子っぽくなったり、トラックの展開も面白いですね。
Hi-yunk:協奏曲みたいな曲っていうことで意識してそうなったんだと思います。もちろんメロディーは第1優先なんですけど、それと同じぐらいやっぱりビートがかなり要だなと思っていて、作り方にすごくこだわりましたね。極端な話で言ったら、「ズッタンズタタン」っていう8ビートの中でも、頭のキックがちょっとズレて、スネアがちょっと前に来ただけでも印象が変わって、違うビートに聴こえるっていうところで、ここ数年はビート作りにすごくこだわるようになったんです。そういう中でのビート作りが「Epitaph〜for the future〜」に反映されたのかなと思います。
――ジャケットのアートワークが印象的ですが、これはオマージュもありますよね?
Hi-yunk:気づきました? 前回と同じく、僕が高校生の頃から大好きなバンドたちのアートワークをやってる方に、BACK-ONでも何作かジャケットを作ってもらっているんですけど、今回ソロっていうことで前作から作っていただいていて。「Epitaph〜for the future〜」というタイトルはさっき言ったようにエピタフ・レコードのイメージもありつつ、キング・クリムゾンの曲から引用したんですよ。
――なるほど、キング・クリムゾンの曲にありますし、『エピタフ~1969年の追憶』というライヴアルバムもありますね。
Hi-yunk:プログレっていったらキング・クリムゾンだなと思って、『エピタフ~1969年の追憶』のジャケットをオマージュしたいなと思ったんですけど、墓石をイメージすると、僕の中ではメタリカの『マスター・オブ・パペッツ』だったんです。それで「キング・クリムゾン寄りのメタリカ」にしたいって言ったら、こういう風に作っていただいて。後ろにいる犬とか、細かいところまでマジで遊び心があって、わかる人にはわかると思います(笑)。
――せっかくスタジオにお邪魔しているので、ここでどのように楽曲制作が行われているのか、紹介してもらえますか。
Hi-yunk:わかりました。制作はこの卓の範囲でほぼほぼ全部完結してます。PC1台とインターフェイスとスピーカーと、僕のサウンドで一番欠かせないのがこの「Kemper」っていう、ギターアンプのシュミレーターです(向かって左の上にあるステッカーが貼られた機材)。このKemperは何がすごいかというと、例えばマーシャルから出た音を95%の再現率で表現することができるんです。世界中のギタリストの音、例えばメタリカのカーク・ハメットの音、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロの音とかをシミュレーションして、このアプリを通して色んなギターアンプの音を出せるっていう強者です。
――ここでは、ギターをエフェクターに繋いでアンプに通して弾いて録音するわけじゃないんですね。
Hi-yunk:もちろん、アナログとデジタルの両方の良さはあるんですけど、僕が思うこのデジタルのすごいところって、とにかく速さですね。自分がこういう音を出したいと思ったときに、普通はギターをエフェクターに繋いで音を作るっていうところを、パっと検索してアプリでその音に限りなく近い音が出せるんです。マーシャルに限らずメサ・ブギーとか、いろんな音が入ってるんで、これは今の僕にとってライヴでも制作でも必ず無いと困るぐらいのアイテムになってます。
――ここにあるマーシャルのヘッドはどういう時に使うんですか?
Hi-yunk:これは僕がライヴでも使ってるマーシャルのヘッドです。ここからラインでももちろん録れるんですけど、最近はこれを使ってラインで録ったペラペラのクリーンなギターの音をKemperでいじりながら、隣の部屋のヴォーカル・ブースにあるマーシャルのキャビネットから出してマイクで録るっていう、「リアンプ」という手法をとっています。マイクで拾ったアナログ感もあるし、デジタルで録った音もあるしっていう、色々実験的なことをやってますね。
――そういう手法を試しつつ、楽曲をこのスペースだけで完結することができるわけですね。ただ、奥にドラムセットもありますよね。
Hi-yunk:ドラムは最近はもう、僕が限りなく生に近く打ち込んだりしているんですけど、コロナ禍でこのパールの電子ドラムを試していたんです。これが当時限りなく生に近いってことで導入して、BACK-ONのサポート・ドラマーさんに来てもらって全曲叩いてもらってできたのが『FLIP SOUND』っていうセルフカバー・アルバムなんです。たまに自分で叩いてデモにニュアンスで入れたりもするんですけど、いかんせん自分1人で叩いてPCのところに行って操作してっていうのが面倒くさいので(笑)。だからドラムに関しては余裕があるときか、どうしてもニュアンスが出せないときは叩きますけど、最近は割と自分で打ち込んですごくクオリティ高く仕上げられるようになってきたので、そっちがメインでやってます。まあ、いずれはこのスタジオで生ドラムで録りたいなと思ってますね。