ゆくゆく人のためになれるようなアルバムができました。
──金城さんと富永さんの曲 “BEAUTIFUL LIE” は打ち込みで全部やってる感じですか?
金城 : いや、ドラム、ギター、ベースは生で録ってます。
富永 : 僕は曲を作る段階から参加したのは今回はじめてだったんですけど、ふたりで色相談しながら、かなり新鮮な感じで作れました。ここまでポップな曲の入りはこれまでなかったので。最近、僕がトラヴィス・スコットにハマっていて、そういった感じの打ち込みの音を目指して作っていったので、そこも聴いてほしいです。
金城 : ただ、トラップっぽくはしたくなかったもんな? トラップのあのハイハットの「チキチキチキチー」っていうのは、聴く分にはいいけど、やる分には僕はちょっとまだアレルギーがあるかも。そこだけ排除したけど、音のカッコよさとかヒップ・ホップのビートメイクの感じはトミちゃんとよく話して作りました。
──途中でトム・ブラウンの「ダメェ」が出てくるのが良いですね。
金城 : “BEAUTIFUL LIE” は、このアルバムの中でいちばんの狂気の歌なので。狂気の象徴「トム・ブラウン みちお」を入れました(笑)。この曲は、がんばってがんばって前に進んでいる若者とかを「ダメェ」ってやってる悪い曲ですね。「靴紐と志をギュッと結んで 飛び出せ横断歩道 さあ!青に変わるぞ! ダメェ」でトラックが衝突する音をサンプリングしてます。ダメです、これは(笑)。
──GIMAさんと白井さんの “BARAO” は、どんな成り立ちの曲でしょうか。
白井 : もともとGIMA君が7、8年ぐらい前に書いた曲で、それを再構築して新しく作り直そうということで、歌をいちばん正面に置きながら作りました。僕は曲のトラックの音とかを考えていきました。
GIMA : 7、8年前に作った曲で日の目を浴びることがなかったんですけど、白井君がコンスタントに「“BARAO”のアレンジさあ」って話をしてくれていて。それでこのタイミングで出そうということになったんです。
白井 : 良い曲やなあって、やりたいとは思っていたんです。
──この曲は、「トゲ」という言葉で他者とのコミュニケーションの間にあるものを表現しているように聴こえます。
GIMA : 「トゲ」って誰しもが持っていて、自分の落ち度的な部分を知らんふりもできるんですけど、それをいま一度見つめ直すことが、成長に繋がるんじゃないかと思ってたし、それを曲にしないと僕自身ダメになるなと思って書いた曲でもあったんです。自分への戒めの曲でもありますね。歌いながら、「もう1回がんばろう」って思えるというか。
──20代前半に書いた歌詞をそのまま歌っている?
GIMA : そうです。なんでその頃に出さなかったのかというと、やっぱり背伸びをしていたし、気持ち的にも歌唱力的にもちゃんと歌えなかったんですよね。このタイミングだったら気持ちもそうやし、自分の歌に対する思いとかも込みで歌えると思ったんです。
──最後の曲 “えねるげいあ”は、2019年にリリースされていますが、この曲でアルバムを締めくくったのはどうしてなんでしょう。
金城 : 僕が絶対最後にこの曲を入れたいって推してたんです。理由のひとつは、“ぼくらのために part 1”から始まって、いままでは「We」で歌ってたけど、“えねるげいあ”は「DO IT MYSELF」って歌詞にあるように、自分だけのことを歌っているんですよ。「おまえだよ、自分だよ」っていう感じで、ひとりの「ぼく」が「ぼくら」になっていたんだよっていうオチにしたかったんです。途中で作詞作曲クレジットの話でも言ったように、「みんなでやろうぜ」って言いながら、それは個人個人が集まった「みんな」なんだっていうのを、最後に綺麗にまとめてくれる曲が “えねるげいあ” なんです。それと、最後にしっとり終わっちゃうよりは、この曲のラストみたいに大はしゃぎしてワ~ッ!って終わるのが好きなので。あとはもう、“えねるげいあ”が今のところ自分が書いた歌詞ではいちばんよくできてるなと思う曲なので。「この歌すげえでしょ」っていう信頼感もあって最後にしました。
──では改めてアルバムについてひと言ずつお願いします。
白井 : まだずっとある初期衝動的なエネルギーを聴いてもらいたいです。それでもし気に入ってくれたら、過去作でもいろんなことをやってるので、そちらも是非聴いてほしいですね。
富永 : 前のシングルからシーケンスを使っていて、それがだいぶ板についてきたり、各々の音のクオリティも上がってきているので、そこも聴いてほしいと思います。
金城 : CDを買う時代がちょうど終わりかけているので、もしかしたら僕らにとって最後のCDかもしれないという覚悟のもと、今回フィジカルでのリリースもしております。モノとして扱える音源を手に入れるのは、この先中古とかでヴィンテージとしてレトロな楽しみ方が生まれるかもしれないですけど、新発売としてお店に足を運ぶことや、家に届く嬉しさや開けたときの匂い・音の感じ、PCやオーディオに入れると作業とか、そういう経験はあなたにとっての最後のチャンスかもしれない。なので、もし愛はズボーンの音源をサブスクなり配信で聴いた上でも、今言ったような経験をしてみようと思えるなら、是非僕らのCDを買ってください。そして配信の方もよろしくお願いします。
GIMA : “ぼくらのために”と言ってるように、自分らのために音楽をやってますけど、今回の『TECHNO BLUES』の曲たちは、聴いていただいた人たちにとっても、ハッピーになったり、明日がんばってみようかなって気持ちになれる曲も多いと思います。自分らのためにやったことがゆくゆく人のためになれるようなアルバムができました。『TECHNO BLUES』をよろしくお願いします!
新作に影響を与えたアルバム
100 gecs『1000 gecs and the tree of Clues』
PC musicというYouTubeチャンネルにアップされている音源を聴きあさっていて見つけた音源です。10年間の活動で頭でっかちになっていたぼくのリスナーとしての音楽スキルをカチ割ってくれたアルバムです。というのも、元々ぼくは音楽を作っていて「こうあるべきだ! 」という懐古主義的な考えを嫌っていました。とはいえヴィンテージ機材のサウンドなどの歴史や成り立ちも大好きで、その双方を活かせた上で将来ヴィンテージとなる音楽を探していたのかも。そんな音楽がこのアルバムには詰まっていて度肝を抜かれました。アルバム制作期間中に「これだ! 」と感じた音源です。これからの愛はズボーンの制作にも必ず影響を与える1枚だと確信しています。
金城昌秀(Gt.Vo)
まずほとんどの音作りはボーカルの金城くんが指揮をとっていて、ドラムも例外じゃなくこういう音にしたい!という明確な希望があるのでそれに沿った音作りや演奏を心がけて作りました。『TECHNO BLUES』に収録されている“SORA”は、『1000 gecs and the tree of Clues』というアルバムの中の“hand crushed by a mallet(Remix)”を参考にして音作りしていきました。いままでの僕らにはないタイトで攻撃的なものになったのではないかと思います。
富永遼右(Dr.)
Alexander Turner『Submarine』
アークティック・モンキーズのボーカリスト、アレックス・ターナーのソロのEP。発声の仕方、歌い方のダルさや、妖艶さが曲全体を覆っていて、歌の影響力を改めて感じさせられました。特に"FLASH BEATS & JUMP"と"BARAO"はこのアルバムのアレックスの歌い方を意識しました。カーペットにワインこぼしてジワーっとシミが広がってく感じ。そんな感じ。
GIMA☆KENTA (Vo.Gt.)
St. Vincent『MASSEDUCTION』
『TECHNO BLUES』に収録されている“BARAO”はもともとアレンジが何転もした曲で、改めて作り直そうとなった時に儀間くんと僕で作り直しました。当時僕はこの『MASSEDUCTION』というアルバムをよく聴いていて、収録曲“New York”から着想を得てアレンジに取りかかり、最終的には『MASSEDUCTION』のアルバム全体にあるバンドサウンド+デジタルサウンドの融合をイメージして完成しました。
白井達也(Ba.)
PROFILE : 愛はズボーン
2011年7月結成 大阪アメリカ村を中心に活動。メンバーそれぞれが音楽のみならずアート、ファッション、ゲーム配信など多岐にわたる発信をしている。 2021年で10周年を迎える愛はズボーンが新たに進化し生まれつづける。サーキットイベント『アメ村天国』主催。
■公式ホームページ:https://iwzbn.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/iwasborn_band
LIVE INFORMATION
愛はズボーン presents MAGICAL EAST~MEMORY OF BASEMENTBAR RENEWAL OPEN~
2021年5月23日@下北沢BASEMENTBAR
出演:愛はズボーン / mother / 錯乱前戦
2021年6月6日@梅田CLUB QUATTRO
出演:愛はズボーン / 夜の本気ダンス
2021年6月27日@渋谷WWW
出演:愛はズボーン / Hump Back 〈第一部〉 | 愛はズボーン / SPARK!!SOUND!!SHOW!!〈第二部〉
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愛はズボーンのその他過去作品はこちらから
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