100 gecsを聴いて、影響を受けないミュージシャンでありたくない
──『TECHNO BLUES side B』は“ぼくらのために part 2”で始まり、2曲目の“SORA”が金城さんの曲、次の“ドコココ”がGIMAさんの曲、そこから金城さん&富永さんチームとGIMAさん&白井さんチームの曲、と続きます。これはside Aとの違いを出すためにこう並べたんですか。
GIMA : ああ、ほんまや。
金城 : 言われてはじめて気が付きました。“SORA”は、いちばん最後にできた曲なんです。レコーディングまでにもう1曲いるけどデモがないって状態から「じゃあもう1曲俺が作るから」ってすぐ作り出して。急いでたし焦ってたのもあるけど、あの時間は僕にとってはすごく大事で、毎日のようにこの曲のことを考えてました。それと、吉本芸人のアキナさんのラジオ番組に僕が参加させてもらってた時期があって、正月の特番で番組に来たメールで、「家族で凧揚げをして、高いところまで凧が上がっていくのを見た娘がすごく喜んで『パパすごいね』って言った」みたいな、温かいメッセージが来たんですよ。そのメッセージを僕がめちゃくちゃいじり倒してた回があって、他のメールが来ても「いや、あの凧揚げのメールには及ばへん! 」とか言っていて(笑)。アキナのおふたりにも「おまえ、もうそれで曲作れや」って言われたのをちゃんと実現しようという気持ちもあって、ほんまに作ったった。それが“SORA”です。
──冒頭の歌詞にはっきりと出てますね(笑)。音的にはどうですか。
富永 : “SORA”のアレンジは、100 gecsの曲を参考に聴かせてもらって。ドラム単体で言うと、結構パキっとしたロックな音が鳴ってるんですけど、その上に打ち込みの音を綺麗に合わせてミックスしている音源だなと思って。それを曲にどう落とし込むかをかなり意識して金城君と話し合ってレコーディングに挑みました。
金城 : PCで作る音楽って、リアルで作る音と全然違うし、その違いが悪だったけど、今は善になってる気がする。100 gecsとかPCミュージックのレーベルの人が「PCから音が鳴って、それがスピーカーから出た時点で音楽だ」って言っていたんですけど、ドーンッと出してくるこのエネルギーを使わない手はないっていう気持ちはめっちゃあります。
──PCの性能やソフトのクオリティも上がっていますもんね。
金城 : 一流のソフトウェアでも安く手に入れることができるので、簡単ですよね。最近思いますもん、ギターとシールドをヘッド・アンプに挿して、スピーカー・ケーブル、キャビネットに繋がって、ギターが「ギャーン! 」って鳴るじゃないですか? それで1個しか音が鳴らんのは割に合わへんわって(笑)。でも、そこにロマンを感じてるギタリストではありたいし、ずっとそうなんで。ギターが大好きで、パソコンで音を作れるソフトウェアも大好きっていうのを形にしている100 gecsを聴いて、影響を受けないミュージシャンでありたくない。そこには「こりゃすげえ」ってすぐ乗っかりたいですね。
──GIMAさんの“ドコココ”はこれまた個性が出ている曲です。
GIMA : 速くて短くてシンプルでドーンッみたいな曲を作りたいなっていうのはあって。“ドコココ”っていうのがワード・ストックとして頭にずっとあって、字面もすごくいいからっていうのをぼんやり考えながら、とにかく速くて短い曲にしたいなと。しかもラウドじゃない、ミュートしたドラムの感じでめちゃくちゃ速いみたいなニュー・ウェイヴっぽい曲がいいと思って作りました。
──ブリティッシュ・ロックっぽいギターリフから作っていった感じですか。
GIMA : そうです。ああいう、ちょっと抜けてる感じのリフが良いなと思っていて。ニュー・ウェイヴっぽい曲を作るのは得意なんですよ。アイディアが無茶苦茶出てくるし、歌詞もスルスル出てきたイメージあります。
──サブスクっていうところを意識すると、こういうショート・チューンも欲しいなっていうところもあったわけですか。
GIMA : いや、そのときはあんまりサブスクのことは僕はあんまり意識してなくて。ライヴのフックで入れたいなというイメージでした。後半の激しくなる感じとか、ライヴを意識して作った感じですね。でもライヴで歌詞をちゃんと歌えたことがないです、すみません。自分でも“ドコココ”になってるんで(笑)。
金城 : こういうタイプの、前作でいうと“Z scream!”とか、今回の“ドコココ”とかのGIMA君の路線は続けたいね。好きですね、こういうところ。“READY GO”にもちょっと入ってるし。
──路線っていうと、今作のテクノミュージック的なカオス感って、これまで “まさかのイマジネイション” や “ピカソゲルニカ” みたいな1ワードで延々とループする曲で表現していた気がするんですよね。
金城 : 確かにそうですね。“I was born 10 years ago.”も確実に“まさかのイマジネイション”の流れから来てます。