音楽家って、結局音楽でしか救われない
──1分前後の短い曲も随所に入った25曲を収録していますが、どんなイメージでこういうボリュームになったのでしょうか。
DURAN : 最近、「普通がいい」っていう流れがあるじゃないですか? コンプライアンスやSNSとかもあるから、ミュージシャンもそんなに大げさなことを発言できなくなっちゃったし。時代性もあるとは思うんですけど、自分はそういう時代のミュージシャンを見て育ってきちゃったから、もっとバカみたいなことをやりたいなと思って。だから、25曲という頭がおかしいんじゃないかってことを(笑)。
──最初見たとき、2枚分あるのかなと思いました。だとしても多いですけど(笑)。
DURAN : はははは(笑)。いまってたぶん、コンパクトなアルバムが主流だと思うんですよ。でもまあ、僕はちょっと頭狂ってるのかなっていう感じにしたくて(笑)。短いインストとかも1曲にしちゃえばいいんじゃないかっていうのもあると思うんですけど、それも全部バラバラにして25曲にしました。
──アルバムのリリースを発表した昨年からどんどん曲が増えて行ったわけではなくて?
DURAN : そういうわけではないです。セッションをずっとやってきたから、アルバムにもそういう瞬間も入れたいなと思ってインストで入れたんです。ライヴでやると、それが7分ぐらいになっちゃうんですよね(笑)。70年代のバンドとかによくありますけど。スライ(&ザ・ファミリー・ストーン)とか、延々とやってますからね。「長げえな」って(笑)。
── “Answers” で始まり “Answers2" で終わりますが、その間に挟まれた曲はどんな流れで並べたんですか。
DURAN : ぶっちゃけ、全然考えてなかったんですよ。だからコンセプトアルバムではないと思います。普通、歌詞的にもストーリーが繋がってると思うんですけど、そういうことはあんまり考えてなくて。“Answers” はそもそもバンドでレコーディングしていて、弾き語りバージョンもやってみたら意外と良かったんで、じゃあ“Answers”で挟んじゃおうっていうノリで(笑)。
──リード曲についてお伺いします。まず、先行配信曲 “Leavin’ It All Behind feat. 906 / Nine-O-Six” はトラックメーカーデュオNine-O-Sixとコラボ。彼らの曲 “Don’t Go Waste (feat. DURAN)” でも共演されていますね。
DURAN : Nine-O-Sixは知り合いを通じて見つけて、すごくカッコイイなと思ったんです。歌詞も、「この人いろいろあったんだな」っていうダークさも持っていて。そういうのに惹かれちゃうところがあって、最初は僕の方から話をしてシングル「TWIAG_2」に参加してもらったんです。その後に向こうからもフィーチャリングに誘ってくれて。それが、僕がYouTubeで適当に弾いてる音をサンプリングして作った曲で、すげえなと思いました。
──今回のコラボ曲はどんなテーマがあったんですか?
DURAN: 昔、鬱病の女友だちがいて、その子のことをメモしたりしていたんです。それをそのまま曲にしたんです。自分も気持ちの浮き沈みが多いので、自分に言って欲しいこともあったりしたから、これを歌えるのはNine-O-Sixしかいないなと思って。彼は、すげえイイやつで。優しすぎていろいろ傷ついているようなところがあるんです。だから良い歌を歌えるのかなって。それで歌ってもらいました。
──今の時代のいろんな出来事にダメージを受けてしまうような繊細な方なんですか。
DURAN : だいぶ、そんな感じです。こういう人が死んでしまわないか心配ですもん、本当に。今回のアルバムは、いつも演奏してきた仲間たち、KenKenもそうですけど、そういうやつらの音をちゃんと残したいなと思ったのもあって。下手したら死にそうだなっていう人たちの音を(笑)。
──音楽があるから救われているというところもありますか?
DURAN : それはだいぶデカいですね。音楽家って、結局音楽でしか救われないから。
──“Neon Void”では「なぜ作品を作るのか」という会話が収録されていますけど、これはどういうシチュエーションで録音されたものなんですか?
DURAN : あれは、バンドで叩いてくれているドラマーのShihoと普通に飯を食ってるときの普通の会話なんです。よく遊ぶカメラマンも一緒にいて、古いハンディカメラを回していたので、そこからの音声を使ってます。なんとなく良いこと言ってるなと思って(笑)。
──短い会話ですけど、DURANさんが音楽を作る理由を知ることができます。
DURAN : 僕はバンドでデビューして、どこにも馴染めずに1人になって、運よくいろんな人に呼んでもらってギターは弾いているんですけど、やっぱり消化できない部分があるんです。そもそも音楽を作ってバンドとかなにかしらの形でやりたいっていうことではじめてるから、いまもソロになって曲を作ってやってるのはそこしか理由がないというか。だって、普通はやる必要ないですもん(笑)。大変ですよね、アルバム作るのって。
──25曲も作っておいて「大変ですよね」って(笑)。
DURAN:はははは(笑)。いや大変ですよ。いままでは人に任せている部分が多かったんですけど、今回は独立してやったので。作ってるときは良いんですけど、作った後どうしたらいいんだろうって、全然わからないことだらけで。アルバムをどんな感じで作ったのか、喋りたいじゃないですか? でも誰にどう話したらインタビューって受けられるんだろう?って。それで今回はヒップランドミュージックさんに手伝ってもらったんです。
──なるほど。曲の話に戻りますが、先ほど名前が出たKenKenさんが参加した “Love The Way You Move feat. KenKen” は怒涛のノリですごいのひと言ですね。
DURAN : そもそもKenKenを入れようと思っていたので、そう考えながら作ったらやっぱりファンクになっちゃいました(笑)。ほとんどデモとかもなく、だいたいなんとなくの雰囲気で一発録りして、鍵盤を後から入れました。
── “Love Affair” は一転して静かなバラードですが、これはひとりでやってるんですか?
DURAN : ひとりで打ち込みもやってます。ギターを弾きながらなんとなく思ったことを適当に歌って、それをそのままメロにしたんです。だから、どこがサビでどこまでがBメロでみたいなものがなくて、同じメロが続かないというか。ノリで残したメロディをそのまま曲にしたという作り方が、僕の中ではじめてだったので結構気に入ってるんですよね。本当に初めて、ワーッて降りてきたものを全部そのまま残せました。こういう曲は大事なのかなって思います。
──それはどんなときに降りてきたのでしょうか?
DURAN : 全然、家で普通に(笑)。ひとりでギターを弾いてたらいい感じだなと思って。コードはすごく少なくしようと思っていました。所謂昔のデルタブルースみたいな曲が欲しいなと思っていたので。まあ2コードかなと思って弾いてたら降りてきた感じです。
──戦前のデルタブルースとかって、曲の尺が違うとか、めちゃくちゃだったりしますよね。
DURAN : そうなんですよね⁉ キーもぐちゃぐちゃで「これどこがサビなんだ?」みたいな。そういうニュアンスがいいなと思って。