生きていく上で「あきらめる」ってすごく大事
──4月にリリースされるアルバムに収録される“Imaginary Flight”では、「所詮は僕ら飛べない人間 羽なんてない」と歌ってますよね。他の曲からも感じるんですけど、「あきらめ」が全体を覆っている気がします。
坂井:そうですね。僕は23年ぐらいしか生きてないですけど、生きていく上で「あきらめる」ってすごく大事だなと思っていて。例えばレコーディングに関しても、ひとつの曲を録るのに何の準備もしないで自分が満足いくまで何十時間もやるみたいなのと、ちゃんと準備してきて3テイクぐらいで終わらせるのって、僕らの考え方でどっちが良いかっていうと後者なんですよ。ちゃんとプリプロをしてフレーズを固めて本番で120%できたかって言われると「う~ん…」ってなっちゃうものでも、そっちの方が好きなんです。そういう「あきらめ」って良いあきらめだなと思っていて。生きていく上で、なんでもそうだなって思っているんです。
──それを〈空も飛べるはず〉とか歌うこともできるわけじゃないですか?
坂井:もちろんそれが悪いことじゃないですけど、現実的にどう考えたって飛べないじゃないですか? 飛べることをあきらめてるから、ちゃんと両足でちょっとずつでも歩いて行こうという気持ちにもなれるし。だからたぶん歌詞は、基本的にあきらめてますね(笑)。
──“Hesitate”はいまの3人体制になって、はじめてのリリース音源です。この曲はSNSについて歌ってるんですか?
坂井:まあ、SNSも含めたことです。バンドをやってると、リツイートとかいいねがすごくつくわりに、実際に現場に来る人って10人に満たないようなことがよくあって。そこは割り切るべきだと思うんですけど、できるだけ“生もの“で観て欲しいなって。もうそろそろ、そういうものに触れて感動する喜びを取り戻してもいいんじゃないかなって悩んでいる気持ちもあるし、自分の信じるもので突き進んで、結果的にそれがついてくればいいなっていう気持ちでこの曲は書いてます。だから(歌詞にある)「テキトーに踊っていく」っていうのは、文字通りというか。最後の歌詞で全部ひっくり返してる感じですね。
村尾:この曲のアレンジは、疾走感があるなかでベースが暴れていて、サウンド的には結構暴力的というか。前々からやりたかったことに着手できました。
アラユ:オケ自体が結構なスピード感で先にスパッとできたので、歌詞に対してのギターのアプローチではなかったです。いままでやってそうでやってなかった、だけど違和感なくやりたいっていう滑らかさは意識しました。アルバムからいちばん最初に出た曲なんですけど、アルバムにはいままでよりも色が違う曲が多く入っているので、そのなかでいちばん滑らかに入っていける曲だなと思います。
──本日リリースされた、アルバム最後の曲 “Over ray”はどんな曲ですか?
坂井:書きたかったことは、“Imaginary Flight”とかと同じなんですけど、〈Go Toオーディション〉でグランプリを獲ってからいろんな人に知ってもらえて、大きいステージに立たせてもらう機会が増えたんです。なかには、客席側から照明がパーって自分の方に降り注いでくるライヴハウスもあって。それが直撃すると、なんも見えなくなるんですよ。そのときに歌詞のテーマが思い浮かんだというか。アルバムのもうひとつのテーマに「光」があるんですけど、目標みたいなものを光に当てはめてそこに向かって歩くと、近づいて行くにつれて周りがどんどん見えなくなってくる。だから自分が到達しているのかもわからないし、まだ遠いところにいるのかもわからなくなってくるんですよ。それはバンドをやっていても、大きいハコやイベントに出られたからといってそれで状況が変わってるわけでもないし、すごく飛躍できているかというと、わからないというか。そういう気持ちが結構あったんです。目標ってやっぱり越えていくものだし、そこを越えて行った先にある景色を、僕らは見たいんだなっていうのを再確認して書きました。
──アルバムを作る前提で書いて、最後の曲にしたわけですか。
坂井:いや、むしろアルバムを作るきっかけになった曲です。去年の頭に僕が5,6曲ぐらいデモをみんなに送りつけたなかに入っていたのが“Over ray”で、わりとみんな気に入っていて。しかも5,6曲もバーンと送ったので、「アルバム作れるじゃん」ってなった感じです。だからアルバムをしめるにはいちばん良い曲かなって思いました。
アラユ:アルバムの曲は、基本的にひとりで悩んであきらめてるけど、最終的にはいまの自分の立ち位置を自覚した上で、そこで最善策を見つけて行こうっていうテーマが多くて。それが「光に向かっていく」ということだと思うんですけど、“Over ray”はその光のさらに先に行こうっていう歌詞なので、良い締めになりつつ、これが次に繋がるよっていういちばん良い流れにできたんじゃないかなと思います。
村尾:今回のアルバムは、(SEを除くと)曲としては“Stay alive”から始まって“Over ray”で終わるんですけど、この2曲がメンバー全員大プッシュですね。僕はもともと、“Imaginary Flight”を聴いて加入を決意したんです。“Over ray”はそのエピソード2みたいな内容だし、曲もアレンジも納得できるサウンドになってるので、早く聴いてもらいたいですね。

──ライヴも含めて、今後はどんなことを実現させたいですか。
村尾:少しずつ規模感を上げて行きたい、ということは3人で話してます。リリース・ツアーは会場としては、いままでやっていたハコと変わらないんですけど、集客とかは挑戦的なところは大いにあって。体制が変わったりバタバタはしちゃったんですけど、ようやく「これがApesです」っていうアルバムができたので、改めて胸を張ってツアーでみんなに見てもらいたいですし、それを皮切りに自分たちの存在を知ってもらえるように大きいステージにも立ちたいです。
アラユ:大きいステージ、フェスにも出たいですし、これからもずっと自分たちがカッコイイと思うことだけをやっていたいなと思います。このアルバムはそのスタートラインだなって思っています。
坂井:ツアーは結構、先輩のバンドを呼んでいるので、それはある意味挑戦というか、「噛みついてやるぞ」ぐらいの気持ちでやれたらいいなと思います(笑)。アルバムにはライヴでやっていない曲が半分近くあるので、セットリストが変わってくるのも楽しみです。このアルバムを作るにあたって、曲の規模感というか大きい会場で気持ち良くなれるように意識した曲もいくつかあるので、このアルバムを持ってのライヴがすごく楽しみなんですよ。ただ、僕は曲を書く人間なので、いまはもう次の作品を作りたいですね(笑)。このアルバム『PUR』にめっちゃ自信があるし、それがちゃんといろんな人に届いた上で、さらに良いものを作り上げられたらいいなと思っています。

編集:梶野有希
4月12日にリリースされるアルバムより、先行配信第3弾!
先行配信第1弾「Hesitate」 / 先行配信第2弾「Neighbor」
Apesの過去作はこちらから
ライヴ情報
Apes 1st full album "PUR" Release Tour"PURE
日程:5月27日(土)
場所:LIVE HOUSE Pangea (大阪・心斎橋)
出演:Apes / 森良太(バンド編成)
日程:5月29日(月)
場所:CLUB UPSET (愛知・名古屋)
出演:Apes / KOTORI
日程:6月2日(金)
場所:Spotify O Crest (東京・渋谷)
出演:Apes / さよならポエジー
PROFILE : Apes
東京発・平均年齢23歳。「Im lonely but I m not alone. alone.」を掲げる現在進行形のインディー・ロックバンド。坂井玲音(Vo/Gt)を中心に スリー・ピース編成のバンドであったがメンバー脱退、サポート編成を経て、2023年より坂井にくわえ、アラユ(Gt)、 村尾ケイト(Ba)の3名になり、現在はサポートドラムを入れてフォー・ピースでライヴを行なっている。
2021年、(株)次世代が開催した初のオーディション〈Go To オーディション〉で 1,000 組を超える応募者のなかでグランプリを獲得し、各所で話題を呼ぶ。2022年、待望の 1st EP 『 Catchall 』(キャッチオール)を、バンド自身で発足した主宰レーベル〈Wakusei disk〉より3月23 日にデジタル・リリース!同タイミングにフジテレビ【 Love music 】にて、番組スタッフがメジャーデビュー前のイチオシしたいアーティストを先取りで紹介するコーナー「 Come music 」で取り上げられ、各地のイベント、サーキットフェス・イベンター企画等に多数出演中。2023年1月18日、現在の3人体制となって初の音源となる、「Hesitate」をデジタル・リリース。今後も立て続けに「Neighbor」 (2月22日リリース) 、「Over ray」 (3月22日リリース) 、4月12日に満を持してファースト・フル・アルバム『PUR』をリリースする。
■公式ホームページ:https://apes-band.jimdofree.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/apes_band