OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.387 全曲同じバック・トラックのアルバム
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
全曲同じバック・トラックのアルバム
「全曲同じバック・トラックのアルバム」と書くと、なにやらコンセプチャルな実験的な作品か? と一瞬思ってしまいますが、これがレゲエの世界ではむちゃくちゃポピュラーで、恐らく数百タイトル (さすがに四桁はいかないと思いますが……) に渡って存在しています。
レゲエ、特に1980年代後半以降から2000年代にかけてのダンスホール・レゲエ期に隆盛した「ワンウェイ・アルバム」というコンピレーション (なのか?) 群がたくさんあります。これがなにかと言いますと、すべて「同じバック・トラック」の上で、さまざまなディージェイ (いわゆるMCのことをレゲエではこう呼びます) やシンガーが、20曲収録なら20アーティスト (コンビネーションと呼ばれるコラボものならさらに) 参加しています。つまり同じバック・トラックでいろいろなアーティストが歌った楽曲が20ヴァージョン収録されているという形式のアルバムです。このバック・トラックは単純に「Riddim (リディム=リズム)」と呼ばれ、もともとの素材になったジャマイカの1960年代の楽曲の名前が付けられたり、プロデューサーが命名したものなど、いろいろありますが、各ワンウェイ・アルバムにはそのリディム名が冠されているわけです。全盛期とも言える2000年代には、大手のレゲエ・ディストリビューター、イギリスの〈Greensleeves〉の『Greensleeves Rhythm Album』や、USの〈VP〉の『Riddim Driven』は、恐らくですがそれぞれ100を超えています。とはいえ2010年を超えると、このワンウェイというかリディムがダンスホール・レゲエのなかで衰退してしまい、こうしたコンピも消滅していくのですが、昨年末あたりから「WYFL」というリディムがバズり、世界中でいまや100曲以上のMCやシンガーのヴァージョンがプレイリストに挙げられたりしています。
さてこのリディムとはなんなのか、そもそもジャマイカではもともと1960年代末あたりから、シンガーが歌っていた楽曲に、MCがトースティングを入れたり、サックスやオルガン・ソロを載せて別の曲としてリリースしたりと、A面にシンガー、B面にそのインスト・ヴァージョンを入れてリリースする (それ以前は別の曲のカップリング) など、オケの使い回しの土壌がありました。それはサウンドシステムでプレイされてウケたからというのと、その現場でオリジナルの歌から、レコードをひっくり返してB面のインスト・ヴァージョンに即興でMCを入れて現場を盛り上げたから。そしてなによりジャマイカのプロデューサーたちが1回のバンドの録音でできるだけたくさんリリースをすることができるという経費削減も理由だったりしたようです。
1980年代になると、定番のインストもの (もしくはそのリメイク) をパーティの現場でかけ続け、シンガーが歌い、MCが話芸を披露する、それを楽曲としてレコーディングするというダンスホール・レゲエの成立とともにこの使い回しの文化が加速していき、上記のようなワンウェイ・アルバムが流行となっていきます。またジョグリンと呼ばれる、いわばハウスやテクノのようにスムースに2台のターンテーブルで同様のオケのさまざまな歌い手のヴァージョンをプレイするスタイルが定番化すると、さらにこれが加速していきます。それまでのレゲエの定番曲のリメイクなどのリヴァイヴァルものもあれば、ある意味でテクノのDJミックスよりミニマルなワンウェイのジョグリンに耐えうる (飽きさせない)、先鋭的で、ある意味で奇怪なリディムも生まれてくることになります。特に2000年代はこうしたリディム文化がパクりパクられ的なものも含めて百花繚乱となったため、上記のようなワンウェイ・アルバムが出回ったのでしょう。
と、私はダンスホールはわりと門外漢なのでうんちくはこのくらいにしておきますが、今回はそんな奇怪なリディム、特にインストの配信中のものを選びました。もともと上記のように7インチの裏にインストとして入っていたものも多いので、アーディスト・アルバム単位では配信から外れているモノも多いのですが、すべてではないのですがいわゆる「ワンウェイ」に収録されています。こうした奇怪なリズムのリディム、10年程前からテクノやベース・ミュージックの現場で再評価されというのもありまして、今回は当時のダンスホールの大ヒットという目線よりも、そんな視点で10曲選んでみました!
























































































































































































































































































































































































































































































































































































































































