OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.378 音楽と「時間」について考えてみる
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
音楽と「時間」について考えてみる
一時期、現代の宇宙科学や量子物理学などの本を読みあさっていた時期があって、いまでもたまにおもしろそうなものがあるとついつい手を出してしまう。ハマっていたと言っても、もちろん物理も数学も高校入学とともにほぼ理解することを捨て去ったので、いわゆるポピュラー・サイエンスの範疇の本や、一般向けの新書、あまり数式の入ってない講談社ブルーバックスなどを読む程度ではある。そしておそらく細部の論理まで正確には理解などはしてない。が、もはやSFを超えるような実際の世界の記述のおもしろさにやられていたのだ。一時期、音楽アーティストなどが引き合いに出していたホログラフィック原理なども、まさにそうした記述の一部といえる。
カルロ・ロヴェッリというイタリア人科学者の著書を訳出したNHK出版のシリーズ、その内容のかみ砕き方も分量もちょうどよく、またその饒舌な文体も読みやすく(いやちょっとくどいこともあるか)、シリーズで読んでいる。その手の本の入門書にまさに最適なのでオススメだが、昨年も『ブラックホールは白くなる』という本が訳出されていて、遅ればせながらGW終わりから自分も読み始めた。
こうした本に、かのアインシュタインの一般相対性理論と私たちの日常を結ぶ論点として頻出する話がある。それは「時間」というものがいかに我々の知覚特有のものであるのかという話だ。強力な重力の近くでは、そこで流れる「時間」が相対的に遅くなるという話。地球でも重力の強い地上と、少し重力の弱まるはるか上空では実際に時計を持って行くとズレが生じるそうだ。件の『ブラックホールは~』にも、ブラックホール付近の時間はその重力で遅くなり、ついにはほぼ停止(してはいないが)しているような状態になるという話が出てくる。私たちが恒常的に客観的な尺度としている「時間」というものが実は相対的なものであるという。そもそもこのロヴェッリのシリーズにはまさに『時間は存在しない』というタイトルの本まである。あとは時間は逆行することもあるが、私たちの知覚は正の方向での時間(と思っている)のなかで進化して、知覚を得たので、その知覚のなかでは逆行は認識できないなんて話もある。おもしろい。
そうえば音楽と時間の関係は深い。ある音楽は時間芸術と呼ばれることもあって時間が進むことでその魅力を発揮するように構成されている。また別の視点でいえば衝撃的な作品やライヴに出会ったときに「あっという間」だったこともあるだろう(これらは上記の物理的事象とは関係ない話ではあるけど)。ともかく、音楽と人間の知覚を結ぶものに「時間」というものが大きく関係している。そもそも音の連なりが伝わるということ自体、時間が支配しているとも言える。
と、時間が遅くなるほどの重力の下では、例えばブラックホールの横では、どう音楽が聞こえるのかとか考えてみたくなるのが人情というものだ。やはりスクリューなのか、いや低音がすごいのか……と、実際は時間が遅くなるといっても、観察者からの相対的なもので、その場では音楽が遅くなるわけでなく進んでいる。と、いや、そんな重力の下では人間は知覚すらできず、そもそも存在できないし、そもそも音楽を伝達する空気もないのではないか。
などと考えるのはとても楽しい、しかも音楽も宇宙の記述も同じく人間の想像力のなせる技でもある。
ということで時間感覚がほころびる楽曲のリストとともに、たまにそういった本を読むと、役には立たないが生活が豊かになるかもよという話でした。













































































































































































































































































































































































































































































































































































































































