2021/04/02 18:00

いかに神宿は変化していったのか──株式会社神宿・代表取締役 柳瀬流音が語る、アイドルの未来《神宿連載 第18回》

神宿

原宿発の5人組アイドル・ユニット、神宿。OTOTOYのコラボ連載〈神宿 road to success!!!〉第18回となる今回は、株式会社神宿・代表取締役 柳瀬流音氏にインタヴューを実施。彼はどのようにして神宿に出会い、マネジメントとして、どのようにして神宿の未来のビジョンをとらえているのか。柳瀬氏から見た神宿についてじっくり伺いました。

INTERVIEW :柳瀬流音(株式会社神宿・代表取締役)

これまで神宿のイチスタッフという立場を忠実に守り、決して公の場に出てこなかった株式会社神宿の代表取締役・柳瀬流音。そんな柳瀬氏が突然、2月からTwitterアカウントを開設して、Clubhouseにも参加するようになった。本人曰く「9月の結成7周年を迎えるまでに神宿を大きくするため、自分もSNSを始めて、グループやお客さんに対する考えを発信する必要があると思った」と話す。これまで明かされてこなかった神宿との出会い、アイドルマネジメントで大事にしていること、楽曲制作の裏側、今後の課題についてなど、たっぷりと話を聞かせてもらった。

インタヴュー&文 : 真貝聡

「ファンの皆さんと僕らの境界線」をなくしたい

柳瀬:よろしくお願いします。ちゃんとインタヴューを受けるのは初めてですが、聞いていただいたことは何でもお話ししようと思ってます。

──お願いします。柳瀬さんとは神宿のインタヴューで何度かお会いしてますね。

柳瀬:そうですね。

──ファンの方はどういう認識だと思います?

柳瀬:んー……チェキを撮る係の人じゃないですかね(笑)。

──ハハハハ、そんな感じですか。

柳瀬:表立って自分のことを発信してこなかったので、そう思っている方は多い気がします。

──実は、いつもチェキを撮っている人が代表取締役とは知らずに(笑)。

柳瀬:ハハハ、そうですね。僕にとってチェキの撮影はすごく貴重な時間なんです。ライブに来るお客さんの雰囲気や、メンバーをどう見ているのかは現場じゃないと知れないので。

──「自分のことを発信してこなかった」と言いましたけど、そもそも神宿の場合はスタッフが前に出ることを避けてきましたよね。

柳瀬:そうですね。ファウンダーである北川(敦司)さんのインタヴューをOTOTOYさんでやっていただいたくらいで。スタッフが前へ出ることに対して、僕らはポジティブな感情を持っていなかったです。

以前行った北川敦司(神宿P) × 市川義典(UUUM)の対談はこちら

YouTubeから発進する神宿の個性──北川敦司(神宿P) × 市川義典(UUUM)対談

──どういう心境の変化なんですか。

柳瀬:コロナの影響で年末年始はイベントがなかったので、これから神宿はどういう活動をしていくべきか改めて考えていたんです。今年の9月で神宿は結成7周年を迎えるのもあり、まずは周年に向けてしっかり盛り上げていきたいと。そう思った結果、僕もSNSを始めようと決意して。

──それでClubhouseやTwitterを始めたわけですね。

柳瀬:今こうしてお話しさせていただいてるのも、目的としては「ファンの皆さんと僕らの境界線」をなくしたいと思ったからなんです。

──境界線をなくす?

柳瀬:単刀直入に言うと、ファンの皆さんに神宿のマインドを理解していただいて、マネジメントと力を合わせて同じチームとして神宿を大きくしていきたい。神宿が目指している国民的アイドルというビジョンに、まだまだスタッフの力が足りないですし、メンバーも成長途中です。BTSさんやBLACKPINKさんなど、ワールドワイドに活躍されている方を見ながら「一体何が違うんだろう」と考えました。色々あるとは思うんですが1つの大きな違いは“チームのリソース”。BTSさんをマネジメントしている「HYBE(旧Big Hit Entertainment)」は上場する前からマネージャーが100人いたという話を聞いたことがあります。今は社員が1000人規模で、資金調達は2018年の時点で200億円以上。そういう規模感で戦っているグループって、やはり周りと比べても抜きに出るわけで。

──資金力があれば、プロモーションも楽曲やMVに力を入れることも出来ますからね。

柳瀬:しかし、神宿はそういうバックボーンがあるわけじゃなくて、小さいチームでやってきてるじゃないですか。日本の音楽事務所だったり、アイドルのマネジメント事務所が資金調達をしようとしたら、中々難しいんです。色々チャレンジしましたが世の中的には与信がない業態だと思われているので、銀行もお金を出してくれるわけじゃないですし。とはいえ神宿はいろんな方に助けていただきながら、幕張メッセもやれましたし、うまいことやれてきてる自負はあって。

──幕張メッセはどうでした?

柳瀬:開催するために見積もりを作成してもらうんですけど、そこに8000万円と記載されてて。「5000人キャパに対して8000万円だと、1人1万円のチケット代でも3000万円の赤字じゃん」と。

──それって会場物販が売れたとしても赤字じゃないですか。

柳瀬:だけど、そういう勝負ができないグループになりたくないんです。神宿はインタヴューの機会があれば、メンバーの考えや楽曲の魅力をちゃんと自分の口で伝えることを大事にしてきたじゃないですか。その思いをファンや関係者に伝えることで賛同してくれる方が見つかったり、新たな出会いが生まれてきたり。そういうのを経験してきたので、まずはそこを加速させたいと。リスクを抱えながらも大きい会場で勝負することによって、皆さんの関心を引きたいと思いましたし、大きなエンターテインメントを、僕らの本気を見せたいと思いました。……こういうお話って、中々皆さんにお伝えする機会を作ってこなかったんですよね。何でもかんでも裏側を話せばいいわけじゃないんですけど、お客さんや関係者の方の理解を深めるために、自分の出来ることをやっていきたい。これがS N Sを始めた1番の目的ですね。熱量が高いファンの皆さんが神宿にとって1番の財産だと考えています。

──ちなみにClubhouseでどんな話しをしたんですか。

柳瀬:「2020年に神宿が何を思って活動していたのか」という話題もそうですし、あとはメンバーの個人ファンクラブの話をしました。1人につき月額880円の会費で、プラットフォーム手数料がすごく安いんですよ。10%なので決済手数料を合わせて13.6%、残りの86.4%を全てメンバーに還元するシステムを去年6月頃に発表させていただいて、ここから少しお金の話をしますね。僕らのチームは神宿のマネジメント会社なので、このグループを成功させることが全員のミッションなんです。一方で、僕が倒れてしまったりチームが崩れてしまったら、メンバーに何が残るんだろうと考えたんですよ。Twitterのフォロワー数とかYouTubeの登録者数とか、そういうものは残りますけど、それらの数字が資産になっているのかと考えたら直結してないと思ったんですよね。

──そこで思いついたのが、メンバーに多くの売り上げを還元する個人ファンクラブだった。

柳瀬:そうです。ファンの方が直接お金を渡すことができて、メンバー個人のコミュニティを形成できる。仮に事務所がなくなったとしても、彼女たちの収益は確保できるし、ファンとの関係性も残るじゃないですか。直接的なファンとメンバーの関係性を事務所が斡旋するって、中々ないことかもしれないですけど、これが必要な仕組みだと思ってやらせていただきました。メンバーひとりひとりが思慮深くなったりとか、知性や美的感覚など様々なものを自ら身につけるためには、金銭や時間の余裕が必要だろうと思っているんです。

──改めて聞きたいんですけど、柳瀬さんにとってアイドルビジネスで大事なことは何でしょう?

柳瀬:アイドルマネジメントで言うと、シンプルに客数×客単価を上げることが僕らの大事なミッションです。これってホテル経営と一緒なんですよ。

──ホテル経営と一緒?

柳瀬:客数×客単価を追求するのが表のビジネスだとすれば、裏側もあるという考え方。最初は10億円で買ったホテルの評判が上がり、何倍もの金額で売られるのはよくある話で。資産価値を上げて、元よりも高い値段で物件を売るのがホテルビジネスの裏側なんです。ホテル経営者はそこを意識しているからこそ、クチコミの評価を上げていきたいし、客数×客単価も含めた全ての数字も日々チェックする必要がある。そこがアイドルビジネスと似ていて。ちなみに神宿がどこかの事務所に移籍する予定があるとか、移籍金をもらうために計画をしていると言うことは全く考えてないですよ(笑)。

──アハハハ、そう言ってるのかと不安がよぎりました。

柳瀬:そうではなくて、神宿というグループの資産価値を上げることを何よりも重視してやっているし、そこがアイドルマネジメントで一番大事じゃないかと思ってます。だから水着のグラビアをやってこなかったんです。資産価値を下げることをしてマネタイズする方法はいくらでもあるんですけど、それは基本的にやりたくない。

──水着のグラビアって認知が広がりやすいというか。「まず知られる」という点では効果的ですけど。

柳瀬:おっしゃる通りです。僕も昔は「何よりもまず知られることが重要」だと思っていました。確かに知名度は大事かもしれないですけど、そこを求めるあまり“本当に自分たちの伝えたいこと”が変わってきてしまう危険もある。急に神宿が水着姿になったらファンの中にはガッカリする方もいるでしょうし、新しくファンになった方は「次はいつ水着になるんだろう」と僕らがやっていることと違う期待をさせてしまう可能性もあると思って、そういう理由で水着グラビアはやらないですね。

──特に、コロナ禍になってブランディングが大事になってきましたよね。

柳瀬:資産価値を崩してマネタイズするのが一番楽な選択肢だと思うんですけど、アイドルって一度それをやってしまうと、中々歯止めが効かなくなってしまうので、見るべきところはグループの資産価値を作ること。それは僕らの大事な仕事で、目に見える数字だけじゃないからこそ難しいですね。

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