SILENT POETS 『HOPE』
ANOTHER TRIP / Dub, Downtempo
7年ぶりの新作。更新されるサウンドと変わらぬ美学が響き合う、やはり唯一無二のダブ・ダウンテンポ。そのサウンドで描くのは、デマゴーグとレイシズム / 植民地主義、そして暴力が跋扈するこの世の中で、それらに抗う力強い『HOPE』。ひさびさとなった生ストリングスの導入は荘厳な世界観の広がりを招き入れ、ランキン・アンやアースラ・ラッカーなど過去作以来ひさびさとなる参加や新たな顔も含めた海外シンガーの起用は文字通り多様な文化との混交による音楽の力強さを示す。また屋敷豪太をはじめ国内ミュージシャンも参加。そしてガザ在住のシンガー、Amalの歌もフィーチャーした“Struggle”では、ガザでの虐殺に対する現地の1日でも早い平穏を祈る悲痛な叫びにもきこえるこだま和文のトランペットとのコラボ(共闘)はやはり印象的だ。
OVERFALL 『旋回』
OVERFALL Records / Dub, Down Tempo
と、ある意味でSILENT POETSが切り開いたダブ・ダウンテンポの新たな継承者とも言えそうなのが本ユニット。Leo IwamuraとShinyAppLeのビートメイカーに、ダビーなSSW、Daisuke Kazaokaを加えたトリオの新体制となって初のアルバム。音源制作段階からミックス・マスタリングまでメンバー自身が徹底的に関与したというロウなダウンテンポに、穏やかなフィーリングのループが作り出す、涼やかなビート集。ダブ・ミックスで空気に淡くとけていく音像は、ゆらゆらと白昼夢を見るようなメランコリックなサウンドで蒸し暑いこの国の夏の温度と湿度を少し和らげてくれるはず。生楽器とビート・ライヴが交叉するというライヴも観て見たい。
Daisuke Kazaoka 『Soundscape from Another Planet』
5Windows Freak / Dub, Reggae
と、上記のOVERFALLのメンバーでもあるDaisuke Kazaokaが、そのダビーな音像で好事家たちを唸らせたセルフ・プロデュース・アルバム『サウンドスケープ』。そのリリース1年を経て、これまた自らダブ・ミックスを行った全編ダブ・アルバム(「全編ダブ・アルバム」なんて素敵な言葉なんだろう)。カッティング・ギター、ベースライン、ドラムがエコーの間に浮かんでは消えていく。ダブ・ミックスで断片化された歌詞が飛び回り、その隙間に記憶の「あの夏」がスッと入ってくるような、どこかノスタルジックでサイケデリックなサウンド。こちらも冷房効果は抜群ですな。オリジナル・アルバムの「ゴースト」なジャケットもナイスな「わかっている」ダブ仕様。つい先頃、ライヴ・ダブ音源も1曲リリースされている。