REVIEWS : 102 ダブ、テクノ(2025年7月)──河村祐介

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューするコーナー。今回の更新は、OTOTOY編集長でもあり、昨年、監修本『DUB入門』刊行した河村祐介が「『DUB入門』その後」的な新作+テクノ〜ハウスなどの気になる作品を隔月で紹介します。
OTOTOY REVIEWS 102
『102 ダブ、テクノ(2025年7月)』
選・文 : 河村祐介
G VERSION III 「Summer Night Blues EP」
Riddim Chango / Dub, New Roots
京都を拠点に活動、2024年にミネソタの〈Digital Sting〉からのカセットのリリースで世界にその名をしらしめたG VERSION III。初のアナログ・シングルとなる本作は国内レーベル〈Riddim Channgo〉より。いわゆるサウンド的にはアバ・シャンティー・アイあたりのクリアな音質のUKデジタル・ニュー・ルーツ・ダブの流れを組みつつ、ジョン・T・ガストにも通じるミステリアスなエレクトロニック・ダブにも接続。サウンドシステム・スタイルの重厚ステッパーなタイトル曲+ダブに、そのリフにハメられるミドルテンポ・ステッパーなA1、そして個人的にはコズミックにシンセが響く、デジタル・ニュールーツとデトロイト・テクノが出会ったようなエレクトロ・スタイルのA2にぐっときた。
Mark Stewart 『The Fateful Symmetry』
MUTE / Dub, Post-Punk
ポップ・グループではフリーキーなダブ・ファンクを、ソロではエイドリアン・シャーウッドやタックヘッドとの共闘でインダストリアル・ダブ〜ヒップホップと、さらにスミス&マイティのフックアップなど、ブリストル・サウンドのゴッドファーザーとも呼ばれるマーク・スチュワート。2023年に没したが、生前録音されていた遺作がリリース。ユースやエイドリアン、ブリストルの〈Cup Of Tea〉などでのリリースで知られるアンディ・ジェンクスらがプロデュースに名を連ねる。レゲエ、ダブステップ、ピアノ・バラードまで、ダブ処理は抑えめながらマークの歌のキャラクターが生きた9曲。最後の“A Long Road”はどこかエンディング曲のようで……。
Adrian Sherwood 『The Grand Designer』
ON-U SOUND / Dub
そのマーク・スチュワートやマーク・ルグラン(タックヘッドのドラマー)といった朋友たちの死に直面し制作がスタートしたというエイドリアン・シャーウッド、13年ぶりのソロ・アルバムから先行カット。〈ON-U〉ファンにはおなじみの10インチ・シリーズにて4曲入りEP。抑制されたダンスホール・ビートの上を印象的なギター、そしてさまざまなサウンド・コラージュがサイケデリックな空中戦を繰り広げるタイトル・トラック、同オケで2曲目はリー・ペリーによるトースティングもありなダブ・ヴァージョン。3曲目はピンチとの共作を思い出す、アグレッシヴなダブステップ、そしてラストはアフカン・ヘッド・チャージにも通じる、サイケなギターのダブ・ダウンテンポ。