ヒップホップにも通底する「リフの美学」
──“Mondo Blues”は、この曲だけ作曲が3人名義ですよね。
Duran:これは、「あと1曲入れよう」ってその場でセッションしてできた曲なんです。
──装飾音もいろいろ入ってるように聴こえました。
Duran:実はギター、ベース、ドラムしか鳴ってないですよ。ギター・アンプを2台同時に鳴らして、それぞれに違うエフェクターをかけてるんです。片方はファズ、もう片方はオーバードライブとか。ステレオに聴こえるのはそのせいですね。ギター・ソロも、片側だけピッチをベンドできるエフェクターを使って、1人で2人分を弾くような録り方をしてるんですよ。
──へえ~! 演奏してるときは自分の音をどう聴いてるんですか?
Duran:基本はスタンダードな方だけですね。クリックも使ってないし、本当、ライブ感覚で録ってます。
──オーバーダブがないということは、最後の爆発音みたいなのは?
Duran:あれもエフェクターで、ギターで鳴らしてます。あとは僕の叫びだけ(笑)。ストゥージーズっぽいですよね。
──ストゥージーズといえば、イギー・ポップの来日公演は観に行きました?
Duran:海外にいたので行けなかったんですよ。大好きなので行きたかったんですけど。ストゥージーズもイギー・ポップも、自分にとってはすごく影響を受けた存在なので。ジョン・スペンサーもそう。“Mondo Blues”は、ジョン・スペンサーが好きな人なら「はいはい、これね!」って思うはず。
ジョン・スペンサーも、この前ギターウルフ主催の〈シマネジェットフェス・ヤマタノオロチライジング2025〉で、来日してましたよね。(2025年10月11日、12日)ギターウルフとケイゾウさん(キング・ブラザーズ)とジョン・スペンサーっていう、僕のロック・バイブル三天王が出演してたから、「マジかよ!?」って。行きたかった……。
──アルバムにはカニエ・ウェストの“Black Skinhead”のカバーも入ってます。この曲を取り上げた理由を教えてもらえますか?
Duran:カニエの『Yeezus』(2013年)が好きで、当時ずっと聴いてたんです。この曲のトラックが、僕にはギターのリフに聴こえて、「ギターで弾いたら絶対かっこいい」と思って。ライブで何度かやっていたので、今回ちゃんと録音しました。
──ライブではケンドリック・ラマーの“HUMBLE.”もインストでやっていましたよね。
Duran:そう、ヒップホップのカバーはライブでよくやります。最近のロックって要素を詰め込みすぎて複雑になりすぎてる気がして。僕が好きだったロックは、リフひとつで成立してたんですよね。ロックの本質って「歌えるリフ」にあると思っていて、むしろ今はヒップホップのほうにその要素が残ってる気がします。
──たしかに、“Black Skinhead”の出だしもBooker T. & the M.G.'sの“Green Onions”を思わせる印象的なリフですよね。
Duran:そうそう。ヒップホップの曲って、ひとつのテーマとなるリフをループさせて展開していくじゃないですか。だからライブでカバーするときもそういう曲を選ぶことが多いです。
──つまり、“Black Skinhead”は歌詞のメッセージから選んだというより、音楽的な理由が先だった?
Duran:うーん……、この曲って黒人社会の怒りや孤独をむき出しにしてる曲ですよね。だから自分がカバーするのは正直、センシティブな部分もあって。でも、単に人種や人権のことを歌っているだけじゃなくて、それを超えて「壁をぶち壊す」エネルギーがこの曲にある。そのパワーとか、グルーヴ、ビートで表現してる感じに惹かれるんですよね。もちろん「どう思われるかな」とは考えましたけど、それでも胸を張ってやりたいと思いました。
──そういう強いエネルギーを、怒りや喜び、悲しみも含めて3人で共有できるのがこのバンドの魅力ですよね。だからこういうアルバムになるんだろうし。あんまり人がたくさんいたらできないんじゃないかと思うんですよ。
Duran:それはありますね。人数が多いと面倒くさいですから(笑)。それに、女性のほうが集中力も音楽へのパッションもまた違って面白いんですよ。男ばかりで集まると、部活みたいになるというか(笑)。女性がいると、絶対男に負けないってとこと、しなやかさもある。そして真面目(笑)。ライブも自然と引き締まるんですよね。テンションのバランスが取れるというか。


──“Goose Egg”は、どんな発想からできた曲ですか?
Duran:デヴィッド・リンチの映画『イレイザーヘッド』(1977年)の主人公目線で書いた歌詞です。僕は映画好きなので、自分目線というより物語の主人公になりきって歌詞を書くことも結構あります。
──“Chevy Malibu 1984”も印象的です。あの展開はセッションから生まれた?
Duran:そうですね。メインのテーマを軸に、ABCDみたいに構成を組み立てました。1950年代のアーチトップ「Harmony」をオープン・チューニングでスライドを使って、そこからリフを4~5パターン作って。ドラムとベースと合わせながら並べて、違ったらまた作り直して……そんな感じでした。
──この曲って何を歌っているんですか?
Duran:『レポマン』(1984年)っていう、僕が生まれた年に公開されたB級SF映画があって、それをモチーフにしてます。めちゃくちゃパンクでアナーキーな世界観で、UFO信者が出てきたり、とにかくゴチャゴチャしてて(笑)。その映画で出てくる「Chevy Malibu(シボレー・マリブ)」という車からタイトルを取りました。歌詞はその映画の主人公目線で書いてます。こういう話、ちゃんと言っとかないと誰も気づいてくれないんですよ(笑)。
──“Golden Boy”は高速パンク調から急にカントリーになるユニークな曲ですが、テクニカルに弾きまくってます。
Duran:これは楽しかったですね。速くて難しかったから何回も録りましたけど。最初はメタルっぽい2ビートにしてたんですけど、「それだけじゃつまらないな」と思って、カントリーの2ビートを混ぜたらハマった。
──ところで、アルバムタイトル『Vornak』ってどういう意味なんですか?
Duran:マジで意味ないです(笑)。音の響きだけで決めました。変な先入観を持たれたくなくて。






















































































































































































































![高野寛ライヴ音源DSD独占配信&インタビュ—『Live at VACANT [ONE, TWO, THREE]』](https://imgs.ototoy.jp/feature/image.php/20121009/6.jpg?width=72)







































































