自分が果たすべき役割、音楽に何を残すのか
──ファースト・アルバムのときは、ラブ・ソングの甘い歌詞も書いてましたよね。
Duran:あれはちょっと頑張って書いたんですよ(笑)。あの頃は「色んな路線に挑戦してみようかな」とちょっと無理してた部分もありました。今は自分がやるべきことや、ミュージシャンとしてできることがだいぶ見えてきて。ブルース・アルバムを出したときもそうですが、自分が音楽に対して残せるものを意識しています。ブルースってなくなっても誰も困らないけど、なくなってほしくないというか。誰かがやってないとね。
──「残したいもの」という意味では、自分もさっきジミヘンやツェッペリンの名前を出して話しましたけど、リスナーには好きなアーティストのルーツを辿って知ってもらいたいという気持ちがあります。
Duran:そうですね。僕はいまだに古い音楽ばかり掘ってる途中なんですよ。いい音楽がありすぎて、新しい音楽にまでたどり着かない(笑)。2025年の音楽のこと、正直まったくわかんないですもん。
──最前線のアーティストと一緒にやってる人が何言ってるんですか(笑)。
Duran:ほんとですよね(笑)。だから、なんで僕が呼んでもらえてるのか不思議です……。ありがたいですね。でも、彼らと一緒に音をだしていて純粋に面白いなと思ってて。藤井 風さんやVaundyさんは、ギターへのアプローチがむしろ新鮮な気がするんですよ。一周まわって”ギターらしい音”を求めてるんだと思います。彼らのセンスってほんとに素晴らしいなと思います。
──ファースト・アルバムの “READY4LOV”とか“SUPERLADY”の要素は今のDuranさんからはなくなったのかと思っていたら、それこそ藤井さんのアルバム『Prema』を聴いたときに「あ、ここでやってるんだ」って思いました。
Duran:そうそう。僕も楽曲づくりはいろいろ試行錯誤してきましたけど、ギタリストとしてやってること自体はまったく変わってないんですよ。ファーストを聴き返しても、ギターだけは相変わらず汚い(笑)。
──そういえば、ここ数年〈DURAN presents 未来響〉というイベントで、地方の小中学生に楽器を教える活動も続けていますね。
Duran:子どもたちは、ライブを観る機会がなかったり、生の楽器の音を体感したことがなかったりすると思うんですよね。そういう子たちが耳にする音楽って、テレビやYouTubeから入ってくるものだと思うんですけど、「音楽ってそういうものだけじゃないよ」っていうことを伝えたくて。知らないって、いちばんもったいないことだから、そういう体験を届けたいんですよね。ブルースを聴いて何かに目覚める子がいたらうれしいです。
──そういう循環が起きていくといいですよね。『ミュージックステーション』で演奏してるDuranさんを観た子がアルバムを聴いて、「なんだこれは!?」と驚くかもしれない。そこからさらにストゥージーズやジョン・スペンサーを知って、ルーツを掘って行ってくれたらうれしいですよね。
Duran:本当にそう。みんな同じ方向ばかり向いていてもつまらないし、僕みたいなやつもいることでバランスが取れるんじゃないですかね。流行りに合わせる人も多いけど、業界人に新しいアイデア、リスク背負ってでも面白い事をしようって人が減ってる気がするというか……、だから焼き回しみたいなのが多いのかもですね。
──今年は2曲入りシングル「Beep Beep」もリリースしています。表題曲はフィリピンの伝説的バンド、Juan Dela Cruz Bandのカバーですよね。
Duran:そう。フィリピンではレジェンド的存在で、日本で言えばピンククラウドみたいなアーティストです。フィリピンではどこでやっても盛り上がるんですよ。それで、フィリピン・ツアー後に「何か形に残したい」と思ってカバーしました。
──フィリピンでのツアー経験は、自分に返ってくるものも大きかった?
Duran:そうですね。僕、もともとフィリピンのアメリカン・スクールで青春時代を過ごしてるんです。理想としては、日本とフィリピンを半々くらいので行き来できたらいいなと思っていて。次のツアーでも行く予定だし、向こうでの土台も少しずつ作っていきたいなと。
──以前は「とにかく曲を作って出さないと気が済まない」と話していましたけど、今はどうですか。今後こうなっていきたいなっていうことはありますか?
Duran:「こうなりたい」とか「こうするべき」みたいなことは、あまり考えないように、衝動とかそういう瞬発的なとこを大切にしてます。心が燃えていたいですね。金稼ぎたいとか、有名になりたいとか、そうじゃなくて、いち音楽家が大切にしないといけないのは”芸”を極める事だと僕は思っていて。それによって見えてくる景色が面白いものになってくと、僕は信じてます。ツアーもすぐ始まるので、ぜひ観に来てください。
編集 : 石川幸穂
飾り気も、繕いも、逃げ場もない。生身の衝動が刻まれた11曲
ライブ情報

詳細:https://duranofficial.com/tour/
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PROFILE : DURAN
DURANは、ギタリスト/シンガーのDuranを中心に、MASAE(ベース)、Shiho(ドラム)の3人からなるロック・バンド。
轟音のファズ・サウンドとブルースを軸にした衝動的で生々しいアンサンブルで、現代ロック・シーンに独自の存在感を放っている。
2018年にDuranのソロ・プロジェクトとして始動。2021年には2ndアルバム『Kaleido Garden』を引っ提げて渋谷Spotify O-Eastを満員で締めくくり、2023年には前衛的なサウンドを展開した3rdアルバム『Electric Man』をリリース。2024年にはブルース・アルバム『30 Scratchy Backroad Blues』を発表し、アメリカのブルース音楽サイト「American Blues Scene」にも取り上げられるなど注目を集めた。同年2月にはフランス・ツアーを行い、8月の恵比寿LIQUIDROOM公演も超満員で成功を収める。そして11月にはフィリピン国内で全8公演に及ぶツアーを敢行するなど、国内外で活動の幅を広げている。
2025年からは「DURAN=バンド」として本格的に活動を展開。スタジオ録音もライヴ同様に一発録りを貫き、テープに刻まれるのは飾り気も逃げ場もない、生身の衝動と震えだ。
最新作『Vornak』(2025)は、怒り、信仰、破滅、性愛、金、そしてブルースまでも破壊しながら、音と叫びと沈黙のあいだを彷徨う全11曲を叩きつけた。ロックの最もプリミティヴな衝動を刻みつけた作品となっている。
■Official Site : https://duranofficial.com/
■X : @DURAN_theband
■Instagram : @durantheband
■YouTube : @DURANofficial


























































































































































































































![高野寛ライヴ音源DSD独占配信&インタビュ—『Live at VACANT [ONE, TWO, THREE]』](https://imgs.ototoy.jp/feature/image.php/20121009/6.jpg?width=72)







































































