【連載】白水悠のバンド・サヴァイヴ術~MY LIFE AS MUSIC~第3回
ライター、岡本貴之が3回に渡ってお送りする白水悠(KAGERO / I love you Orchestra)へのインタヴュー短期連載『白水悠のバンド・サヴァイヴ術~MY LIFE AS MUSIC~』。つい先ごろ、KAGEROのニュー・アルバムのリリースが発表されましたが、今回はライヴ活動、そしてバンドの運営について、その未来を話しています。(編集部)
第1回「バンド運営とリーダーの役割」編はコチラ
第2回「音源制作とリリース」編はコチラ
第3回「ライヴ活動について~バンド運営の未来」
制作・リリース以上に、バンドにとって活動の軸となるライヴ。I love you Orchestra(ilyo)は都内を中心に頻繁にライヴを行い、急遽決定したイベントにもその都度メンバー構成をフレキシブルに変えつつ出演している。一方、頻度はそれほどではないものの、KAGEROも継続的にライヴを行っており、制作と並行して常にバンドのエンジンはかかっている印象だ。白水はライヴ活動に対してどんな思いを持っているのだろうか。短期集中連載最終回となる今回は、ライヴハウスとの関係、ツアーに対する思考を中心に話を訊き、バンド活動を続けて行く上で大事な考え方を改めて語ってもらった。
企画・インタビュー・編集 : 岡本貴之
PHOTO : Kana Tarumi
KAGERO 約3年振りとなるニュー・アルバム、9月19日(水)ハイレゾ配信
配信は9月19日(水)0時より
KAGERO presents “FUZZ’ EM ALL FEST.2018”
2018年9月29日(土)新宿LOFT
OPEN 12:00 / START 12:30
出演:KAGERO, SAWAGI, 絶叫する60度, アラウンドザ天竺, memento森, about tess, Palitextdestroy, ▲'s, I love you Orchestra, conti, Manhole New World, mahol-hul, 銀幕一楼とTIMECAFE, Last Planet Opera, killie
FUZZ’ EM ALL FEST.2018のチケット詳細、タイムテーブルなどはKAGERO公式ページへ
http://www.kagero.jp/
ライヴハウスとの関係
──ilyo、KAGEROは都内でのライヴが中心で、大塚Hearts、新宿LOFTといった密な関係を築いているライヴハウスがあると思うんだけど、どうやってそういう関係を築いていったんだろうか。
メンバーとの関係と同じで、こればっかりは人と人だよね。色々な偶然が必要だけどね。たまたま出会ってたまたま仲良くなっていくっていうか。
──大塚Heartsのスタッフの伊藤さんが自転車を漕いで発電するライヴの映像を観たけど、あんなことやるライヴハウスの人っていないでしょ、普通(笑)。
あははははは(笑)。まあ伊藤なんかはもう普通に友だちだからね。あいつも表現者だし。そのへんも含めてたまたまだよホント。
──それは、何かの理由で大塚Heartsで頻繁にライヴをしていたっていうこと?
ローザ・パークス(白水とilyoの中平Jim智也が所属するバンド)が僕が加入する前から大宮時代のHeartsに出てて、伊藤がブッカーでローザの担当やってて。もともとJimとかが伊藤と仲良くしてたから、その流れで仲良くなったのかな。全員タメ年だしね。でもそこはもうウマが合うかどうかだよね。別に付き合いが長くても全然密な関係じゃない人もいっぱいいるし。僕は人の好き嫌いっていうか、合う合わないが結構激しくて(笑)。でもそれは音楽もそうで。好き嫌いがすごくハッキリしてて、しかも嫌いなもののほうが圧倒的に多い。だから逆に好きなものとか自分に合うひとってのは稀少な存在だから、ちゃんと大切にしようって。そんな感じで生きてきたら、まぁ良い関係になれる人が少しは増えたかなぁ。人だけじゃなくて、ライヴハウスっていう「場所」自体に対してもそういう感覚かな。
──ライヴをやるときには、そういう人がいるライヴハウスをまず思い浮かべるのかな。
まぁなんつってもいろいろな融通が利くからね。そうすればパッと思いついたものを、思いついた通りのカタチにしやすくなる。朝コアを思いついた時の新宿ロフトとかもそう。融通効かないハコは本当話が通じないもん。異文化コミュニケーションだよ(笑)。あと正直ライブやるってことはそのハコにお金が落ちるわけだから、そしたらまぁ、長く続いて欲しいなぁってとこに落としたいよね。ほとんどのライブハウスっていうのはバンドのお客さんで成り立ってるわけだからさ、そこから先は「融通」の世界だと思うんだよね。お金を値切る、って意味じゃなくてね。話が通じるかどうか。ライブハウスに限らず全部ヒト対ヒトだからさ、地位とか関係なしに、融通が利かない、密な意思疎通ができないタイプの人間は全力で避けるようになったなぁ。そこはセンスと文化の問題もあると思うんだけど。昔はさ、名前が通っているライヴハウスの方がいいなって思ってて。でもその観点だけだと中には当然融通が利かない場所もあるわけで。だから今はそんなことより、文化的な事が好きな人間と絡んでるほうが全然おもろいなぁって。
使命感に駆られて「絶対に東名阪ツアーをやらなきゃ」っていう思考は危険
──作品を届けるためにツアーをやるバンドも多いし、それで全国にファンを持っているインディーズバンドもいると思うんだけど、そういうことをやらなきゃいけないかなって考えたことはない?
んー、最近は、特にilyoに関してはそこに絶対的なこだわりはないかなぁ。いや、ツアーをすること自体は全然否定しないよ勿論。てか必要な時はツアーしてるし(笑)。
──東京にいるからこそ、地方の人にライヴを見せたいっていうのがそもそも全国ツアーの発想だと思うんだけど。
そうだね。北海道とか、石巻とか。こないだのガンケフェスとか。その「場所」自体に行きたいってとこには積極的に行く。ただ、別にそうでもない場所に関しては、うーん、理由があれば行くよーって感覚かなあ。今はね。作品をリリースしたから使命感に駆られて「絶対に東名阪ツアーをやらなきゃ」って思考は少し危険で。もちろん絶叫する60度が47都道府県ツアーをやってたりするのをみると本当にすげえなって思うし、心から尊敬するし。ただ、今の僕はその時間とエネルギーを次の創作に充てたいって気持ちがあるのも正直なところで。
──実際、地元に来ないから東京に観にきてる人もいるだろうね。
んー、まぁそういうこともあるかもしれないけど。やっぱりお客さんに「うちの地元にも来て下さいー!」って言われると心情的には行きたくなるよね。KAGEROみたいに固定のギャラが発生するならまた別だけど、例えばilyoが大阪に行くのに(車で)往復交通費だけで4万円くらいでしょ。泊まるとしたら宿泊費が安くても1人4,000円。メンバーが6人いるとしたら24,000円、交通費と合わせて64,000円。チケット代が2,500円で1枚目からハーフバックで返してくれるとして、1枚1,250円だから、64,000円÷1,250円で52人お客さん来てくれてトントン。まぁ物販で補填するとして、まぁそれでも25人〜30人くらいの集客+物販がちゃんと出てトントン。大人が何人も、1日半なり2日なり丸々潰して。だからまぁイージーな話ではないよね。「遊びだ!ロマンだ!」って完全に割り切るなら全然いいけどね。
──「リリースしたからツアーをやらなきゃいけない」っていう考えでやっていると、赤字になってしまう?
そう。だからそれが思考停止状態でやってるんだとしたらマズイよね、ってだけの話。バンドなんだからツアーや遠征に出ること自体はひとつの哲学というか美学だと思うし。地道に全国回るからこそお客さんも増えるし。ただ、それが今、自分たちに本当に必要なのかはタイミングによって違う。ロマンだけを追う時期もあっていいと思う。ただ、何回も言うけど、バンドが上手くいかなくなる理由なんて結局のとこ全部「疲弊」だから。
──ツアーをやるべきタイミングがあればやった方がいいけど。
そうそう。ツアーってことにピックして話すとなんかアレだけど、なにも考えないで流されてとった行動ひとつで、メンバーの誰かに無理が来て組織が疲弊する時もある、ってこと。ilyoなんかは特に、犠牲の方が大きくなっちゃう、って判断したときは無理矢理な遠征はしない。当たり前といえば当たり前の話なんだけどね。イベンターとかライブハウスに誘われて、そこで何かが起こせそうならやるし、そうじゃなかったらやらない、って感じ。ただ、常にフットワークは軽くありたいけどね。
ライヴは「新規のリスナー獲得のため」だけにあるわけじゃない
──ilyoがI love you Orchestra Swing Style(ilyoSS)とかI love you Orchestra Noise Style(ilyons)とか色んな形態で、そのとき集まれるメンバーでやろうというのも、フットワーク軽くライヴをやりたいから?
根本として「毎晩ステージに立ちたい」っていうのがあってさ。別にどんな形態でもいいから、いつでもステージに立ちたいってのは昔から思ってて。でもひとつのプロジェクトで頻繁にライヴして、それで毎回本当に意味を見い出すのってそんなに簡単な事じゃないから。だから自分発信のプロジェクトが自然と派生しちゃっただけかなぁ。あとまぁライヴって「新規のリスナー獲得のため」だけにあるわけじゃないからさ。いや、もちろん、いつだって新規の方が増えたらいいんだけど、でもコアな人達がより僕らの衝動的な表現を楽しめたりとか、より僕らの思想を深く理解してくれるようにっていうのも大切なことで。自分たちのお客さんがまずしっかり楽しめる、週に何回来ても全然飽きないっていうアイデアのあるライヴを創って、それが盛り上がってる中で新規のファンが生まれるかもしれないっていうのがそもそもじゃん。伊藤がチャリを漕いで発電するライヴで新規の方を獲得しようなんて思ってないからさ(笑)。
──ははははは(笑)。
だから根本は自分の表現衝動のためにフットワークは軽く、でもそこについてきてくれる人たちがいるわけで、だったら当たり前にその人たちを楽しませなきゃいけないし、楽しませたいと思うしね。
──“I love you”ってバンド名につけるくらいだもんね。
そうそう。だからツアーもさ、本当に愛されてるならどんなコストかかったって行くわけじゃん。北海道なんて完全にアタマおかしいもん。お客さんもライブハウスもレコ屋も。さっきもゆったけど、札幌のタワレコが最初に大きく展開してくれていて、そこからHMVがあんなにやってくれるようになって。こっちがHMV盛り上げてたのに、タワレコが去年の年間ベスト10枚にilyoの『Trigger』を入れてくれてて。それ見たとき泣きそうになったもん。だから北海道は多少無茶なスケジュールでも全然行っちゃうわけで。
「FUZZ’ EM ALL FEST.」の共演者は一年がかりでスーパー吟味して決めてる
──ライヴでは、対バンってどうやって決まってるんだろうか。イベントにもよるだろうけど。
KAGERO主催の「FUZZ’ EM ALL FEST.」に関しては、それこそ一年がかりでスーパー吟味して決めてる。必ずメンバー4人の総意で。ilyoに関しては仲良ければ全然やるよってスタンス。インストだろうが歌モノだろうがアイドルだろうがジャンルは全然気にしてない。別に共演NGなバンドがあるわけじゃないし(笑)。ただ、そもそも好きなバンドっていうか好きな音楽が全然多くないからね。だからilyoが主催するときは昔から2マンが多いね(笑)。本体とSSとノイズで対バンの相性が違うから、まぁそこは少し相手の音楽性っていうか文化性を加味してこっちの形態を変える感じかな。
──定期的にワンマン・ライヴをやりたいという気持ちはない?
んー、元々ワンマンにはあんまり興味がないんだよね。2マンが一番楽しい。
──それは、対バンのお客さんがいるから?
そう。100%うちのお客さんだけしかいないって状態は甘えが許されちゃう気がしてて。ただ、お客さんはワンマンを期待してる、ってのはすごく理解してる。
──以前、アイドルが出るイベントに一緒に出たりしていたけど、そういうときもイベント自体が面白そうなら出ている感じ?
そうだね。
──そこには、戦略的な考えは何もない?
いや、絶叫する60度の時と同じで「繋げたら色々できるじゃん」っていう長期的な戦略はあるよ。ただ目の前の戦術は他と一緒。KAGEROなら表現し切るだけだし、ilyoなら場の空気に合わせて策を練る。でもまぁ正直今は「共演者がどう」ってのはそこまで気にしてないかなぁ。名前が通ってるかどうかもあんま気にしない。有名だからって良い音楽をやってるとは限らないってことを死ぬほど知ってるから。
武藤敬司とグレート・ムタ= ilyoとKAGERO「二面性にすごく支えられた」
──とはいえ、アイドルとも共演できるフットワークの軽さはilyoならではだと思うし、ストイックなイメージのあるKAGEROだけを突き詰めて行ったら、どんどんシリアスになって死んじゃうくらいになったんじゃないかなと。だから、白水悠はilyoを始めて命拾いしたんじゃないかと思うんだよね。
それはまぁ、うん、本当にそうかもね。二面性が出せる場が生まれたことで救われたっていうか。言ってみれば武藤敬司とグレート・ムタっていうかさ。
──いきなりプロレスを例に出してきた(笑)。
グレート・ムタっていうブランディングによって、武藤さんの選手生命って伸びたと思うんだよね。
──ああ~なるほど。ということは、ilyoがムタでしょ?
いや、最初はそうだったんだけど、そこは存在が逆転したんだよね。前は飛び道具的って意味でilyoがムタだった。でも今はKAGEROがムタっぽくなってる気がする。めったにやらないし、サディスティックだし。武藤っていう存在によってムタの残虐性がフューチャーされたみたいにさ、ilyoって存在があるからKAGEROの残酷な表現に光を当てることができたわけ。その二面性にすごく支えられたんだよね。あのままKAGEROだけしかなかったらイマジネーションの幅も深度も今より貧弱になってたかもしれない。色んな意味できつかったかもね。
──そこで生まれたilyoは、本人の精神衛生上、ものすごく救いになったんだ?
うん、本当そう思う。KAGEROに不要なものをilyoで全部表現してるって感じるから。
──そうなると、その状態からできたKAGEROの新作がものすごく楽しみになるね。
そうでしょ?「KAGEROはムタ」って言ってる意味がわかると思うよ。毒霧と凶器とムーンサルトプレスの応酬だから(笑)。
「やり方をしらないから」って解散するのはもったいないし悲しい
──人間同士でバンドをやっている以上、メンバーの脱退、活動休止、解散っていうネガティブなことが起こる可能性は常にあると思うんだけど……。
そうなっちゃう原因を一番まとめる言葉で言うと、やっぱり「何かが疲弊したから」でしょ。それはお金のことだったり、メンバーの人間関係だったり、個人的な問題だったり。犠牲を払ってやった事が上手くいかなかったら仲も悪くなっていくし。それが嫌だからさ、頭を使うしかないよね。「chemicadrive」なんてまさにそう。銀幕一楼とTIMECAFE、BARBARS、palitextdestroy。みんなやってること自体は素晴らしい人達で、だから疲弊しないように「こうやるとわりと上手く回るよ」ってことを伝えてるだけ。周りのバンドが解散しようが活動休止しようが、基本的には好きにすればいいと思うんだけど「やり方をしらないから」って解散するのはもったいないじゃん。何より悲しいじゃん。これ以上友達の解散見るのは嫌だなぁ、って単純に思うもん。何も考えてなかったら組織なんて終わっちゃうのは当たり前だよ。難しいのは、イメージ産業のくせにお金はしっかり回さないといけないっていうバランス。センスとバランス感覚がないと回すのは難しい。今でいうと例えば打首さん(打首獄門同好会)なんかは本当センスとバランス感覚がある人達だなぁって思うよね。会長にはあのやり方がフィットしてて、でもあのやり方しかないわけじゃなくて、人によってフィットするものは違うから、だからちゃんと自分らしくバランスを保ってやることができれば、バンドっていう組織が成熟して発展していけると思うよ。
──インディーズとメジャー、プロとアマチュアっていう境界線はあってないようなものだと思うんだけど、バンドを取り巻く世界ってこれからどうなって行くと思ってる?
んー、正直他人のことはよくわからないなぁ。世の中にはいろんな価値観があるからね。ただ、CDが売れなかろうが音楽は絶対になくならないから。僕個人的にはバンドっていう狭い世界じゃなくても構わない。今は音楽以外の芸術と、あと実は自分の音楽に自分ですごく刺激を受けてて(笑)。パンク精神……まあパンクって言葉がどう伝わるかわからないけど、反社会性、パンク的な要素こそが表現って世界の根本だと思うし、誰も聴いたことがない音楽を創るっていうのが本当のロックだと思うしパンクでしょ。クスリ打って酒に溺れて「今日は最高だった」っていうのがパンクだっていうなら、僕は全然パンク性のカケラもないけど(笑)。だからここ何年かすごく楽しいよ。日々すごく楽しい。
──KAGEROもilyoも、全然解散するような気がしないもんね。
まぁわからんけどね。誰かが死ぬかもしれないし。僕が音楽書けなくなったら解散するだろうし、回避出来ないことが起きたら解散するかもしれない。でもまぁ、今は大抵のことはクリアできるくらい頭が回ってるから。しばらく大丈夫なんじゃない。そもそもバンドを解散するメリットなんて僕にはないから(笑)。
ソロ「I love you Alone」で初めてモノを創ることが好きになった
──ここにきて訊くけど、「考えるようになった」理由ってなんだったんだろう?
んー、最初にメディアファクトリーと契約したときにさ、寿福(FABTONE代表の寿福知之氏)に「しっかり考えて、ゆくゆくは自分1人で何でもできるようになった方がいいよ。音楽レーベルなんてこの世からなくなるから。」って言われたんだよね。契約したその日だよ?すごくない?てか酷くない(笑)?もちろん最初はどういう意味だかわからなかった。でもそれからガキの頃に思い描いてた環境を手に入れて、そしたらすごく混乱して。間違った世界に入れられた気分っていうか。フェイクばっかじゃん、って。でもその後「I love you Alone」でソロで音楽を創って、初めてモノを創ることが好きになったんだよね。それまでも楽しくはあったけど、でもいろんな制約があって。いろんなことがルーティンに感じてて。曲創り、レコーディング、撮影、リリース、キャンペーン、ツアー、また曲創り、レコーディング、撮影…。でもアローンで何の枠組みもないノイズ・ミュージックを創って、初めて音楽を好きになれたというか。あのときの経験で自分がバンドマンからミュージシャンになれたんじゃないかなって思う。今あんまり自分のことをバンドマンだと思ってなくてさ(笑)。
──「バンドサヴァイヴ術」っていうタイトルの連載なんですけど(笑)。
今は芸術的な人以外だと、会社を経営してる人とか、他ジャンルの人の話を聞いてる方が楽しい。どんな企業だって、新規の獲得はもちろん大事で、でもどんどん新しい競合が出てくる中で自分のお客さんを守ってる。必死に頭使って、それこそシノギ削ってるから。
──それは、音楽業界に限らず、生きて行く上で色んなことに共通していえることかもしれない。
あとまぁバンドとかイベンターさんはフライヤのデザインとかにもちゃんと気を回したほうがいいと思うよ。フォントとか写真の繊細なデザインコントロールと、音楽の繊細なアレンジとかお客さんへの細かいホスピタリティとかっていうのは、思考として共通するからね(笑)。
バンドっていう組織を続けるなら、自分の中に表現者として確立されたものがないと
──連載は今回で最終回ということで、最後にまとめると、バンド活動を続けて行く上で大事な考え方とは?
何度も言うけど、思考を止めない事。バンドってイメージ産業だけどさ、やっぱり「利益最優先じゃない企業」だと思うんだよね。普通の企業は利益を追求することが一番大事。バンドってのはそこが一番ではないんだけど、二番目にはそこが大事。組織を回す方法論って色々あるけど、その中で全部共通してるのは「人が歩んだ道を歩んでも、その人には勝てない」っていうこと。ハイスタがやってきたことをなぞったってハイスタにはなれない。音楽自体もそう。誰かみたいな音楽をやったってその誰かに勝てるわけない。ガキの頃は憧れだけでやっていいかもしれない。でもそれ以上バンドっていう組織を続けるなら、自分の中に表現者として確立されたものがないと、待ってるのは全部フェイクな世界だからね。自分の道を拓いていく上で「こうしたい、ってことはこうすればいい」っていうロジックを組んでいけば、すげえ楽しい日々になると思うよ。
編集後記 : ~MY LIFE AS MUSIC~音楽を人生として選択したすべての人に
この連載を始めるきっかけのひとつに、単純に「インディーズミュージシャンってどうやって生活しているんだろう?」という現実を覗いてみたいという、若干ゲスい気持ちがあった。仕事をしながら音楽活動を続けているバンドマンは多いだろうし、そのスタンスが自分にフィットしていて、表現活動が行えるなら、そんなに良いことはないと思う。ただ、バンドを続けたいがために日々の生活が逼迫してしまい疲弊していくことがあったとしたら、それはとても切ない。白水悠の人生にもそうした危機が全くなかったわけではないだろうし、この先もそうだろう。だからこそ、「日々すごく楽しい」ミュージック・ライフのために白水は思考を止めない。そして、彼はそのために人知れず肉体的な努力も日々続けていることを付け加えておきたい。
~MY LIFE AS MUSIC~ 音楽を人生として選択したすべての人に、この連載の内容が少しでも役立てば嬉しいです。ご愛読ありがとうございました!!(岡本貴之)
第1回「バンド運営とリーダーの役割」編はコチラ
第2回「音源制作とリリース」編はコチラ
KAGERO、配信中の近作
レーベル Ragged Jam Records 発売日 2015/12/09
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11.
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I love you Orchestra、配信中の近作
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01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12.
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レーベル Ragged Jam Records 発売日 2017/10/11
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11.
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レーベル Ragged Jam Records 発売日 2016/09/14
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12.
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