自分の名義で出すなら、自分で歌いたい
──そんな日々のなかで『With Regard to Christmas』が制作されてリリースされますが、なぜクリスマス・アルバムがリリースされることになったのでしょうか?
諭吉 : 自分が急にスタッフの方々へ「クリスマスの曲作りました」って送りつけた感じなんです。クリスマスのような大きなテーマありきの音楽をつくるのって、たとえばアイドルだったら、アイドルとしてのキャラクターがあるからこそできるっていうのが大きいと思うんです。自分も「伝えたい」よりは「作りたい」がまず先にあって、それを聴いてもらえたら面白いよね、っていうところから入っているので、もともとわりと近いことをやっているというか、クリスマスありきでキャラクター勝負をするというのも違和感がないことかもしれないなっていうのがあって。クリスマスっていうのには特に意味はないんですけど、そう決めて作ったら面白いんじゃないかなっていう第三者目線みたいなものがありました。
──クリスマスはお好きですか?
諭吉 : 別に嫌いではないけど、特別好きなわけでも思い入れがあるわけでもないです。
──そういう諭吉さんが作った「CHRISTMAS AFTERNOON」からアルバムは始まりますが、ストリングスの音は生ですか?
諭吉 : 生ですけど、それ前提で作ってたわけではなくて、YGQさん(ディレクター)から「やってみたらどう?」って提案してもらって。
──生のストリングスを入れると言われて、「嬉しい」「ニュートラル」「ふーん」の3つの感覚でどれでしたか?
諭吉 : 「嬉しい」寄りのニュートラルでした。単純に自分が作ったものを誰かが演奏してくれるのが嬉しいな、練習してくれるのが嬉しいな、再現してもらえるのが嬉しいなっていうのがまずあったんです。けどちょっとニュートラルなのは、自分は正直、何もわからずに打ち込みをしてるんで、演奏家の方が弾くときに、おかしなことをしてないかなっていう不安がすごくあって(笑)、そこは形になってありがたいなって。
──過去のインタビューで、自分が認識されたいっていう気持ちが強いという発言があったり、何かをやらされるのも好きだって発言していたじゃないですか。第三者と関わりたいという気持ちもあるんですかね。
諭吉 : そうだと思います。ひとりで立派に活動されている方もたくさんいらっしゃいますけど、最近すごく思うのは、ひとりでやっていると単純に寂しいっていうのもあるし、比べる要素がないので「自分はこう」っていう立場を示すのって難しいなってことで。まあ、ひとりで頑張れよ、って話なんですけど。単純にふだんの活動の上でも、誰かとやれるのって楽しいだろうな、っていう気持ちはあります。
──こうやって取材を受けることはどういう感覚なんですか?
諭吉 : 取材は楽しいです。質問してもらうと、答えながら自分でも「あ、それってたしかにそうだな」って自分自身に共感することもあるんで、すごい面白いです。
──良かったです。「CHRISTMAS AFTERNOON」のMVは戸田真琴さんが監督ですが、どういう経緯だったのでしょうか?
諭吉 : 戸田さんと多少SNS上で交流があって、以前、MVを撮りたいって言ってくださってたこともあって。少し前に初めてライヴにも来てくださって、お会いできたというのもあり、これを機にお願いしてみようじゃないかという話になりまして、お願いしました。
──ご自身はヴォーカリストとしての自分はどう見ていますか?
諭吉 : やるからには頑張ろうと思うんですが、自分の声は全然好きじゃなくて。でも、自分の声はこれしかないし、この声を使うしかないので、「自分で歌ってます」って言いたいがために、自分の声を使ってるっていう感じなんです。自我が強くて、「自分が自分が自分が」ってグイグイしている精神があるので(笑)。自分の名義で出すなら、自分で歌いたいって気持ちが第一ですね。でも、慣れもありますし、どう歌おうかということに対して、どんどん意識的にはなれていると思います。