INTERVIEW : 柴田隆浩(忘れらんねえよ)

忘れらんねえよが、OTOTOYに帰ってきた! 〈ツレ伝フェス2023〉や「THE 100km TAKE」といった数々の企画におけるレポートはニュースコーナーで随時お届けしてきたものの、じつは作品発表に伴うインタビュー取材は数年振りとなる。10曲連続配信リリースを経て発表される4年ぶりのアルバム『いまも忘れらんねえよ。』は2枚組で、DISC 1にはオリジナル15曲を収録。DISC 2では【スペシャル・トリビュート・プロジェクト「忘れらんねえよを歌ってみた」】と題して、豪華アーティストによる5曲の忘れらんねえよ楽曲カバーを収録している。最後に収録された デビュー曲 “CからはじまるABC”では、歌詞に出てくるチャットモンチーの元ヴォーカリストであり憧れの存在、橋本絵莉子との初共演が実現した。そんな記念すべきアルバムのリリースを、柴田隆浩(Vo.Gt)はどんな心境で迎えるのだろうか。アルバムのことを中心に、バンド結成15周年を迎えた忘れらんねえよについて、みっちり話を訊かせてもらった。
インタヴュー・文 : 岡本貴之
写真 : 大橋祐希
これは今俺がやるべきこと
──バンド結成15周年、この1年はどんなことを感じながら活動してきましたか?
柴田隆浩(以下、柴田):最近、なんか後輩ができちゃうんですよ。とはいえお客さんからすると年齢なんて関係ないし、歳を取ってるから音楽が良いとかって関係ないじゃないですか? だから後輩のバンドマンもライバルだと思ってるし、俺の方が上だなんて1ミリも思ってないんです。ただ、15年間やってる中で彼らにはない経験と知識があるのは事実だから、それを素敵な後輩バンドマンに教えてあげるという意味では、むしろ義務があるんじゃないかって思うんですよ。
──それは、ここ何年か思うようになってきたことなんですか。
柴田:ここ数年、「忘れらんねえよ、聴いてました」とか「文化祭でコピバンやりました」っていうバンドマンがちらほら現れてきたんです。そういう人たちに対して「いやいや、俺も一緒だから」って言うのも、半分本当だけど半分ちょっとダセぇな思うんです。せっかく好きって言ってくれる後輩バンドマンに対して堂々としていないとなって。だから、彼らに伝えられることもあるなと思ってちょくちょく飲みに行ったりしてるんですけど、奢らないといけないから嫌なんすよね・・・。
──(笑) だって、たぶんフルカワユタカさん(DOPING PANDA)には奢ってもらうでしょ?
柴田:そうそう。フルカワさんが意地でも奢ってくれるから、「フルカワ会」の人間として俺も後輩に奢らざるを得ないっていう。だからだんだん安い店を選ぶようになりました(笑)。でも本当に、15周年だから気づいたっていうよりは、最近そういう機会が増えたのは確かですね。その中でバーンと行くバンドもいれば、ずっと地道に頑張ってる人もいるし、面白いなって。自分がフラカン(フラワーカンパニーズ)とかピーズとかを聴いてバンドを始めて対バンするようになった感覚って、そういうことなんだろうなって思います。
──それこそ今回、ずっと憧れていた「えっちゃん」こと橋本絵莉子さんと“CからはじまるABC”を一緒に歌うなんて、こんなバンドドリームはなかなか起こらないんじゃないですか。
柴田:めちゃくちゃ一緒にやりたいけど、めちゃくちゃやりたくないみたいな。えっちゃんで始まって、それを一つの作品に結実するって作品としても物語としても最高なんだけど、別に俺、えっちゃんと会いたくはないんですよね。友だちになろうなんて1ミリも思わないし、自分の存在を認識してほしいとかないっていうか、認識されたくないとすら思うから、複雑なんですよ。
──そこは、自分がっていうよりはファンに向けての贈り物?
柴田:いや、そんな気持ちは1ミリもないです。これは今俺がやるべきことっていう感じ。最初にトリビュートの参加アーティストを考えたときに、「えっちゃんを呼ぶのは何か違うよね」って話をしてたんです。だから、自分の中でのチャットモンチーのストーリーは〈ツレ伝フェス2023〉での共演で完結するつもりだったんですけど、予想以上にそのステージがキラキラしていて、「これで終わり」みたいな感じじゃなくてすごく可能性を感じたんですよね。それでダメもとでトリビュートの話をしたらOKをいただいたんです。だから、元々そうしようと思ってたわけじゃないんですよ。
2023年7月23日に行われた〈ツレ伝フェス2023〉のクイックレポート
──やっぱり橋本さんと共演するとかこういう音源を作るって、デビュー以来の忘れらんねえよ、柴田さんにとって究極のゴールというか、最終回ぐらいの感じなんじゃないかと思うんですよ。
柴田:いや本当、そうなんですよ。「一つの物語が終わるんだな」っていう寂しさみたいなものは感じました。
──今回の “CからはじまるABC” もそうですけど、ちょうど1年前から今年の頭にかけて “この高鳴りをなんと呼ぶ” をテーマにしたツアーや【THE 100 TAKE】を開催したり、“俺よ届け” YouTube再生回数100万回突破記念企画【THE 100 km TAKE】に挑戦したりしながら、これまでの忘れらんねえよを象徴する曲を整理しているような印象も受けました。
柴田:1つずつ極まった状態に到達させる作業をしてるかもしれないですね。“CからはじまるABC”も、これからえっちゃんとMVを撮るんですけど、その作品が世に出た瞬間に完成するというか、やり残したこと無しみたいな。別にこれで “CからはじまるABC” を封印するわけではないです。ただ、えっちゃんともう二度と会わないですけど。
──いいんですか、そんなこと言って。
柴田:いいんです、二度と会いません。作品に残せたんでそれで良いです。