年齢とか国籍とか性別とか関係なく一緒にできるのが音楽のいいところ
岡村 : 少年ナイフが活動されるなかで、自分たちの影響を受けているなと思う若いバンドに出会う事はありますか?
なおこ : 音楽性は全然違うんですけど、そういうことを言われることは結構ありますね。リンダリンダズのメンバーは、彼女たちが幼稚園に通っているくらいの年齢のときに、お父さんに連れられて少年ナイフのライヴに来てくれたんですよ。当の彼女たちは、手作りの少年ナイフの衣装をお揃いで着ていたのが印象に残っています。
岡村 : すごくおもしろい話ですね! これまでに出たライヴのなかで印象に残っている対バンや、アーティストとのエピソードはありますか?
なおこ : 少年ナイフがはじめて海外でライヴをやった時の対バンに、サーストン・ムーアやレッドクロスのメンバーとか、ホワイトフラッグのメンバーのセッションバンド「Tater Totz」が出ていたんです。それは印象的でした。ソニックユースが、大阪でライヴをやる時にもサポートで一緒に出たりしましたし、モーター・ヘッドのレミィが少年ナイフのライブを見に来たので、楽屋で一緒に写真を撮ってもらったのも嬉しかったですね。他にもいろいろ色々ありますけど、ニルヴァーナとツアーをしたのも、大きな思い出ですね。
野中 : カート・コバーンさんとのエピソードも、ぜひ聞きたいです。
なおこ : カート・コバーンさんはポップな音楽も好きだったんですよ。少年ナイフのライヴも舞台の袖で見に来てくれていました。カートに「自分たちのシークレットギグで、少年ナイフの“Twist Barbie”という曲をやりたいから、コードを教えて」って言われて、一緒にギターを弾いたのも良い思い出です。ほかにもピーナッツバターとジャムのサンドイッチをくれたり、親切な人でした。
岡村 : お話を聞いてると、国内外で差別を受けたりといった、そういった難しい経験はなかったのでしょうか?
なおこ : ライヴやツアー関係ではなかったです。やっぱり少年ナイフが好きで見に来てくれるお客さんなので、みんな私たちのことをわかってくれているんです。差別とか、そういったこともなかったです。
野中 : お話を聞いていて、とんちんかんな要求をされないように、自分はこうだというのを普段から出していくことが大事なのかもしれないなと思いました。少年ナイフは、来年の海外ツアーも決定してるんですよね。
なおこ : 3月から5月に、ヨーロッパとイギリスをたくさん回ります。2年も延期したので、楽しみです。
岡村 : 少年ナイフは、メンバーそれぞれが別の場所で生活をされていますが、リハーサルはどのようにされているんでしょうか?
なおこ : 私とドラムの、りさちゃんは大阪在住なので、いつも一緒に練習してます。あつこはロサンゼルスにいるので、ライヴの前にビデオ通話を繋いで一緒にやってます。「ズレてる」とか「タイムラグがある」とか言いながら練習したり、現地にちょっと早めに入ってスタジオで練習したりしています。年齢とか国籍とか性別とか関係なく一緒にできるのが音楽のいいところですね。
野中 : 次のアルバムも制作されていると思いますが、どんな作品になりそうですか。
なおこ : 少年ナイフは、これまでコンセプトアルバムみたいなものを作ったことはないんですよ。そのときそのときで曲を作っていって、それが充分集まったらアルバムにしています。いままでと変わらず、楽しい作品にしたいです。アルバムを聴いた人が笑ってくれて、楽しんでくれたらいいなと思っています。
PROFILE : なおこ (少年ナイフ)
1981年に大阪で結成された女性3人組ロックバンド「少年ナイフ」の創設者兼リーダーでボーカルとギターを担当。90年代にはニルバーナのカート・コバーンをはじめ、ソニックユース、レッドクロスなどのアーティストから絶大な支持を受け、人気が海外に広がる。
PROFILE : 野中モモ
東京生まれ。翻訳 (英日) およびライター業に従事。訳書にヴィヴィエン・ゴールドマン『女パンクの逆襲――フェミニスト音楽史』(ele-king books)、レイチェル・イグノトフスキー『世界を変えた50人の女性科学者たち』 (創元社)、キム・ゴードン『GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝』 (DU BOOKS) など。著書に『デヴィッド・ボウイ 変幻するカルト・スター』(筑摩書房)、『野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る』 (晶文社)。
PROFILE : 岡村詩野
東京生まれ京都育ちの音楽評論家。京都精華大学ポピュラーカルチャー学部非常勤講師。FM京都(α-STATION)『Imaginary Line』(日曜21時)パーソナリティ。『ミュージック・マガジン』『朝日新聞』『VOGUE NIPPON』『The Sign Magazine』『CDジャーナル』など多数のメディアで執筆中。2017年、ウェブ・メディア『TURN』( turntokyo.com )をスタートさせた。