スカート・澤部渡に訊く2017年に聴きたい旧作&今年の作品、シーンを紐解く『Year in Music 2017』

岡村詩野が講師を務め、音楽に関わるさまざまな表現を学ぶ場『岡村詩野音楽ライター講座』。先日まで開かれていた2017年の10月期では『Year in Music 2017』を共通テーマとし、2017年にリリースされた作品の中からベスト・ディスクを選出し、原稿を執筆してきました。本ページでは、今回の講座の最終回にゲスト講師として登場していただいた、スカートの澤部渡氏と岡村詩野のトークセッションの模様を掲載。さまざまな音楽が生み出された2017年に聴くべき名作について語ってくれています。またライター講座の講座生によって選定された、2017年のベスト・ディスクについてのレヴューも掲載。昨年の音楽シーンの振り返りにもどうぞ!

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ゲスト講師・スカートの最新作はこちらから

スカート / 20/20

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz)

【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム 2,057円(税込)

【収録曲】
1. 離れて暮らす二人のために
2. 視界良好
3. パラシュート
4. 手の鳴る方へ急げ
5. オータムリーヴス
6. わたしのまち
7. さよなら!さよなら!
8. 私の好きな青
9. ランプトン
10. 魔女
11. 静かな夜がいい

INTERVIEW : 2017年に聴くべき作品はどんな作品?

澤部渡が選ぶ、2017年に聴きたい旧作はこちら!

・小沢健二 / 刹那
・西岡恭蔵 / 街行き村行き
・高橋幸宏 / Saravah!
・XTC / Apple Venus
・THE COLLECTORS / 幻想王国のコレクターズ
・The Zombies / Odessey & Oracle
・Paul McCartney / Chaos And Creation In The Backyard
・チャクラ / 南洋でヨイショ
・Pizzicato Five / Playboy & Playgirl
・Eternity’s Children / S.T.
・Ranny Sinclair / Another Autumn

文&構成 : 福田愛

楽曲を聴きながらお話を訊いていきますよ!

岡村 : 澤部さんは基本的に古い音楽から多大な影響を受けているわけですが、そうした過程を経て作られたスカートの音楽は、しかしながら全くノスタルジックではなく、今のポップスとしてヴィヴィッドに輝いています。つまり、澤部さんの音楽の聴き方と制作者としての眼差しは時代を越境しているというわけですが、実際に今回選んできていただいた作品もすべて旧作なんですね。まず、最初に伺いたいのは、今回の選曲の中で1番最初に好きになったのはどの作品ですか?

澤部 : 小沢健二さんじゃないですかね。僕が7、8歳の頃に『LIFE』が出て。

岡村 : 『LIFE』は1994年の作品ですね。ただ、今回選んでいただいたのは『刹那』に収録されている曲。せっかくですから、聴いてみましょうか。

小沢健二「夢が夢なら」(『刹那』2003年)


小沢健二『刹那』

【収録曲】
1. 流星ビバップ
2. 痛快ウキウキ通り
3. さよならなんて云えないよ(美しさ)
4. 夢が夢なら
5. 強い気持ち・強い愛
6. それはちょっと
7. 夜と日時計
8. いちょう並木のセレナーデ
9. 流星ビバップ


小沢健二/夢が夢なら

澤部 : この曲は自分の中で、日本のポップ史に燦然と輝く大名曲だと思っております。

岡村 : それにいつごろ気づいたのですか?

澤部 : 20歳過ぎぐらいの時ですね。この曲の素晴らしい点がいくつかあって。まず展開が少なくて転調で陰影をつけているところ。Aという展開があってBという展開がある、という非常に古いスタイルのメロディ・パターンなんですけれど、それをどんどん転調していくことによって陰影をつけている、というのがまず素晴らしい。60年代くらいのやり方だと、所謂A、Bスタイルの曲はここまで引っ張れてないんですよ。それをどんどん転調していったり音の厚みを増やしたりすることによって成り立たせている、というのが90年代でしかできないことの1つ。

あとメロディが“ヨナ抜き音階”という組み方でつくられていて、いわゆるアジアっぽい雰囲気が出るんですね。それに対して、サンプリングのビートを乗せてるんですよ。『LIFE』というアルバムはポップスのアルバムではなくサンプリングやヒップホップ的に優れたアルバムだと僕は思うんですね。何か1つないし複数のサンプリング・ソースを持ってきて、それをあくまで立体化して表現している。それはポップ・ミュージックとサンプリング・ミュージックの融合、という意味合いだとおもうんですけど、「夢が夢なら」はその更に先をいっているな、と。ブレイク・ビート的なサンプルに、ジャズ・ピアニストの渋谷毅さん、ジャズ・ベーシストの川端民生さんをあててるんですね。とにかくいろんな要素をめちゃくちゃ乗せてるんですよ。

岡村 : やり方としてはハイブリッドだけど、曲はAとBの2つしかない構成。でも、そういう構造自体がすごくワクワクさせる、と。

澤部 : ワクワクというか、側から見たらあくまでも歌謡曲として成り立っていることの凄さ。最後の方にストリングスが入ってくるんですけど、そういう情緒もしっかり忘れないのが本当にすごい。1つのものに対して新しい投げかけをするとしたら、普通はそこにせいぜい1つか2つ足すことしかできないけど、この曲に関しては幾重にも重なっているんです。そういう意味で小沢さんの制作のピークのひとつはここだと思っているんですよね。

岡村 : ちなみにこの『刹那』は、B面やシングルの曲を集めた変則的なコンピレーションです。もうこの時代にはリアルタイムで色々なポップスを聴くようになっていたわけですね。

澤部 : そうですね。リアルタイムで聴いてました。1つの音楽を好きになったら、まだ何か裏があるんじゃないかって疑い深く、ずっと聴き続けることも大事だと思うんですよ。そういう結果、良い発見はできたんじゃないかなあ。

岡村 : 逆にこの曲の第一印象はどういうものだったのでしょう?

澤部 : サビの〈夢が夢ならそれでも構わない〉というメロディがすごい気持ちよかったんですよね。自分の中でぐっとくるものがありましたね。

岡村 : では、その次に出会ったのは?

澤部 : 西岡恭蔵さんの『街行き村行き』かな。所謂フォーク的な曲なんですが、プロデュースに細野晴臣さんがついてるんですね。バックのメンバーもはちみつぱいとかその辺の人達で。

西岡恭蔵「海ほうずき吹き」(『街行き村行き』1974年)


西岡恭蔵『街行き村行き』

【収録曲】
1. 村の村長さん
2. 春一番
3. どぶろく源さん
4. パラソルさして
5. ひまわり村の通り雨
6. 飾り窓の君
7. 海ほうずき吹き
8. うらない師のバラード
9. 朝の散歩道
10. 街行き村行き

澤部 : 「海ほうずき吹き」の編曲は西岡さんなんですが、何曲か細野さんが編曲した曲があるんですけど、それがすごく良くて。

西岡恭蔵「ひまわり村の通り雨」(『街行き村行き』1974年) ※細野晴臣編曲

澤部 : 「海ほうずき吹き」と絶対的に違うところがあるんですよ。リズムがね、ドラムマシーンなんですよ。出たのが1974年なんですけど、フォークのシンガーがこういうのをやってるという発想があんまりない気がしていて。リズムマシーンを意識的に使った代表的なのってSly & The Family Stoneというバンドで、彼らはそこに生のドラムを乗っけてるんですけど、細野さんはリズムマシーンとはある種逆であるフォークの世界で、リズムボックス一発でやっていて。でも違和感をしっかり可愛げのあるものとして同居させてる…。プロデュース能力の凄さを感じたんですよね。

岡村 : このアイディアも細野さんだったんでしょうか?

澤部 : 絶対そうですよ。そこに、こういうアコギの広がる感じとチャカポコいってるリズムボックスが密室的にならないっていうのがね、僕の中ではすごい大事なんですよ。

岡村 : 密室的にならないっていうのは、宅録っぽくならないということですか?

澤部 : そうそう。Sly & The Family Stoneにしてもなんか密室的になるというか。Sly & The Family Stoneも聴いてみましょう。

Sly & The Family Stone「In Time」(『Fresh』1973年)


Sly & The Family Stone『Fresh』

【収録曲】
1. In Time
2. If You Want Me To Stay
3. Let Me Have It All
4. Frisky
5. Thankful N' Thoughtful
6. Skin I'm In
7. I Don't Know (Satisfaction)
8. Keep On Dancin'
9. Que Sera, Sera (Whatever Will Be, Will Be)
10. If It Were Left Up To Me
11. Babies Makin' Babies

岡村 : スライはいつ頃聞き始めたのですか?

澤部 : スライはyes, mama ok?がカヴァーしていて知りました。はじめて聴いたのは高校1年ぐらいじゃないかな。録音はほぼ73年です。後ろでチャカポコいってるんですよ。リズムボックスの正確さと人間の揺れるリズムを合わせるのが快感だと思うんですね。そういうのがもしかしたらYMO的へ発展していったのかもしれない。本来だったらファンク・ミュージックってもっと人間の揺れとかのはずなのに、リズムボックスをつかうことで一個制限をつけ、それによって全体が締まる、という演出方法なんです。だけど西岡さんの「ひまわり村の通り雨」だとそれが、どこか解放感にもつながる感じがするんです。きっと生のドラムだったらああいう解放感にはならなかったのだろうな、とも思うし。もう1曲細野さんが編曲してる曲があって、それもリズムボックスを使ってるんですよ。だからプロデュースで実験をしていたんじゃないかなあ、と。それもすごく良いので聴いてみましょう。

西岡恭蔵 「飾り窓の君」(『街行き村行き』1974年)

澤部 : 後ろでずっとオルガンが鳴っていたり、決して窮屈なものには聞こえない…いいっすよねえ(笑)。

岡村 : いいですよねえ。いま聴くと、ただ単にフォーキーだとか質感がウェットだから良いとかじゃなくて、ある種ハイブリッドですよね。さっきの小沢健二もそうですけど、順当に考えたらこうはしないよねっていう組み合わせや音をぶつけるみたいなところがある。

高橋幸宏「LA ROSA / ラ・ローザ」(『Saravah!』1978年)


高橋幸宏『Saravah!』

【収録曲】
1. VOLARE (NEL BLU DIPINTO DI BLU) / ボラーレ
2. SARAVAH! / サラヴァ!
3. C'EST SI BON / セ・シ・ボン
4. LA ROSA / ラ・ローザ
5. MOOD INDIGO / ムード・インディゴ
6. ELASTIC DUMMY / エラスティック・ダミー
7. SUNSET / サンセット
8. BACK STREET MIDNIGHT QUEEN / ミッドナイト・クィーン
9. PRESENT / プレゼント

澤部 : これも細野さん関連なんですが、最初のソロ・アルバムです。本人が曲書いてるのはちょっとでカバーや提供曲が多くを占めています。割とラグジュアリーなアルバムですね。次のアルバムはニューウェイブらしい刺々しい感じになるんですけど。4曲目の「LA ROSA / ラ・ローザ」は加藤和彦さんが書いてる曲で細野さんがベースを弾いてるんですが、間合いのとり方が絶妙なんですよ。ベースがこれだけ動いてもメロディを邪魔してないのがすごいなあ。鍵盤やアレンジは坂本龍一さん。細野さんの『はらいそ』というアルバムでYMOのメンバーがそろった、という話もあるんですけど、『Saravah!』ではあの3人のガチのセッション・プレイを楽しめるアルバムなんですよね。

岡村 : では、目先を少し替えてて、いわゆるイギリスの音楽という枠組みの中で好きなものをいきましょうか。

XTC「Easter Theatre」(『Apple Venus』1994年)


XTC『Apple Venus』

【収録曲】
1. River Of Orchids
2. I'd Like That
3. Easter Theatre
4. Knights In Shining Karma
5. Frivolous Tonight
6. Greenman
7. Your Dictionary
8. Fruit Nut
9. I Can't Own Her
10. Harvest Festival
11. The Last Balloon

澤部 : 特に好きな曲があって。この「イースター・シアター」って曲なんですけど。とてもロック・バンドのアルバムとは思えないでしょ?これが1番イギリスっぽいと思うけどね。これだけ難解なAメロを経て、ちゃんとポップ・ミュージック的なカタルシスがあるでしょ。もう、これがたまんない。で、ちゃんとギターソロが歪んでるんですよ。ギターというよりか器楽的な要素なんですけど、ロック的ものも感じられて、そのアンビバレンスな感じがたまんない。これだけ弦や管をふんだんに使ってたらギターを歪ませる必要なんてないのに、歪ませる。意味があるんです、ちゃんと。それからとにかくこの曲はベースが素晴らしい。

岡村 : 澤部さん、ついベースを聴いてしまう癖があると。

澤部 : そうなんですよ。この曲では終盤のベース・ラインが素晴らしくて、3分3秒頃にブレイクが入るんですけど、その後。これ、一瞬おいてトゥートゥーって高い音を2音だけ弾く。もう、すげえなって、たまんないですね。この後もう1個でかいのがくるんですよ。3分25秒頃のところ、いままで低く、四分音符とかだったのにオクターブ上に移動して1小節の間だけ細かく弾く。そういう陰影のつけ方をするのがたまんない。こういうベース・ラインってある種の破綻なんですよ。一見見栄えは美しいのに何かざらつきがある。それが優れたポップスだと思うんですよね。

岡村 : 破綻なり違和感なりをもたらす、そういう部分があるのは仕掛けなのか、意図せずなのか。澤部さんの場合はどうなんでしょう。

澤部 : それを求めて、ドラムやキーボード、ベースを人に任せてるっていうのはあります。

岡村 : なるほど。スカートの鍵盤奏者の佐藤優介さんはストリングス・アレンジもできるし、いわゆる器楽としてのポップスに精通してるじゃないですか。ああいうような人の裏方的な仕事が、今日どうやってメインストリームで生かせるのかを考えたときに、いま改めて『Apple Venus』を聴いて、今日でもそういう感覚が主軸になりえるんだなと思いましたね。さて、では、そのXTCに影響を受けた日本の作品と言えば、これでしょうか?

THE COLLECTORS「時計発明家」(『幻想王国のコレクターズ』1990年)


THE COLLECTORS『幻想王国のコレクターズ』

【収録曲】
1. マーブル・フラワー・ギャング団現わる!
2. ぼくのプロペラ
3. 時計発明家
4. 地球の小さなギア
5. …30…
6. ちびっこアドルフ
7. 気狂いアップル
8. 彼女はワンダーガール
9. Dear トリケラトプス
10. 消えろ!けむり野郎
11. ダイスをころがして
12. チョークでしるされた手紙
13. あの娘は僕の太陽なのさ
14. S・P・Y
15. ロケットマン

澤部 : いまは割とロック的な感じだけど、昔はもっとモッズ的なバンドで、モッズの中でもひねくれてるイメージで。

岡村 : 一等最初… 前身バンド時代はブルーハーツとかと同じフィールドにいましたよね。

澤部 : そう、ネオモッズ・シーンみたいな。で、まさにブルーハーツに足りないものを持ってるのがコレクターズだと思ってるんですよね。87年にデビューして毎年1枚ずつアルバム出して、最初はビートっぽいパンキッシュなノリとかもあったんですけど、やりたいことはそれだけじゃないってなっていくんですよね。その中で加藤ひさしのエゴと才能が爆発したアルバムが『幻想王国のコレクターズ』です。そのなかで1番好きな曲が「時計発明家」。いわゆるイギリス的な音像やメロディ、コード進行とかありますよね。

岡村 : 素晴らしいですね。彼らは今やロック・バンドとして確立されてるんですけど、ただ、こういう曲をもう加藤ひさしさんは作らなくなったし、ライヴでもやらなくなってしまった。だから実は澤部さんにプロデュースしてもらいたいな、と思うんですけどね(笑)。

澤部 : (笑)。

岡村 : これはライヴ・バンドとしての全盛期に突入する前段階の時代の作品であり、加藤ひさしさんがスタジオ・ワークに没入していた時代を代表する作品ですね。加藤さんがベースを弾いている曲もあります。

澤部 : 作曲家ってキーボードでつくるか、ギターでつくるかの、大きく分けて2通りあって。キーボードでつくる人って学理があるから、難しいコード展開でポップなメロディつくったり、難しいことやるんですよ。でもギターでそれをやるのって実は凄い難しくて。ポール・マッカートニーが変な転調するときも、実はピアノでつくっていたり。そういうのもあって、ギターの人が自分のやれる楽器の中でどんどん深みにはまっていく様、それの極端の例がこのコレクターズの4枚目のアルバムだといいな、と。この頃、加藤さんがギターで曲を作っているかはわからないんですが、そうだったらいいな、と思ってしまいますね。

しかもこの「時計発明家」という曲はほんとに加藤さんお気に入りの曲で、これをつくったとき、「俺は世界を変えられる!天才俺!」みたいな手ごたえがあったらしいですね。では、ギタリスト、ピアニスト、ベーシストの作曲家の対比みたいなのが1つあるので、それ聴いてもらってもいいですか。ザ・ゾンビーズの『Odessey & Oracle』なんですけど。

岡村 : いいですね。当時といまでゾンビーズを聴くポイントって違う気が実はしているんです。だから澤部さんの解釈が聞きたい。

The Zombies「Care Of Cell 44」(『Odessey And Oracle』1968年)


The Zombies『Odessey And Oracle』

【収録曲】
1. Care Of Cell 44
2. A Rose For Emily
3. Maybe After He's Gone
4. Beechwood Park
5. Brief Candles
6. Hung Up On A Dream
7. Changes
8. I Want Her She Wants Me
9. This Will Be Our Year
10. Butcher's Tale (Western Front 1914)
11. Friends Of Mine
12. Time Of The Season
13. Care Of Cell 44
14. A Rose For Emily
15. Maybe After He's Gone
16. Beechwood Park
17. Brief Candles
18. Hung Up On A Dream
19. Changes
20. I Want Her She Wants Me
21. This Will Be Our Year
22. Butcher's Tale (Western Front 1914)
23. Friends Of Mine
24. Time Of The Season
25. A Rose For Emily (Alternate Mix 2)
26. Time Of The Season (Alternate Mix)
27. Prison Song (Care Of Cell 44 Backing Track)


The Zombies - Care Of Cell 44 (Lyric Video)

澤部 : Aメロですでに起伏にとんだメロディが出ていて、素晴らしい。少し言い方は悪いですけどインテリ風な曲作りなんですよ。ロッド・アージェントとクリス・ホワイトの2人のソングライターがいて、この曲はロッド・アージェントですが、もう1人のクリス・ホワイトはたぶんシンプルに曲を書く人だと思うんですよね。

岡村 : ではクリスの方も聴いてみますか。

The Zombies「Friends Of Mine」(『Odessey And Oracle』1968年)


The Zombies - Friends Of Mine (Lyric Video)

澤部 : さっきの曲に比べると、ちょっと可愛らしいものなんですよ。

岡村 : 素朴な感じですね。

澤部 : そう。その分メロディがたつような部分があって。よく言えば肩の力が抜けてるように聞こえるっていうのは、ギタリストが書く曲の特徴の1つだと思うんですよね。ギターという楽器は狭い音階の範囲でしか和音をつくれなくて、どうしてもそれが枷になるんですよね。その制限がポップスたるものに近づく近道なのかもしれないと思う時もあるし、それこそが同じになる1つの原因だとも思うし。

岡村 : そもそも、澤部さんは一番好きなポップ・ソングライターは誰なのですか?

澤部 : うーん、やっぱりポール・マッカートニーかなあ。

岡村 : そのポール、今回澤部さんが選んできてくれているのが意外にも00年代の作品です。聴いてみましょう。

Paul McCartney「Jenny Wren」(『Chaos And Creation In The Backyard』2005年)


Paul McCartney『Chaos And Creation In The Backyard』

【収録曲】
1. Fine Line
2. How Kind Of You
3. Jenny Wren
4. At The Mercy
5. Friends To Go
6. English Tea
7. Too Much Rain
8. A Certain Softness
9. Riding To Vanity Fair
10. Follow Me
11. Promise To You Girl
12. This Never Happened Before
13. Anyway
14. I've Only Got Two Hands

澤部 : 「Jenny Wren」という曲があって。アコギ1本、ちょっとしたパーカッション、民族系の楽器1個でやっていて。たぶんギターで曲書いてるんですけど、ギターのあり方が「Blackbird」的なんですよね。

岡村 : では、ビートルズ時代の作品である「Blackbird」などと比べてみましょうか。

The Beatles「Blackbird」(『The Beatles』1968年)


The Beatles『The Beatles』

【収録曲】
1. Back In The U.S.S.R.
2. Dear Prudence
3. Glass Onion
4. Ob-La-Di, Ob-La-Da
5. Wild Honey Pie
6. The Continuing Story Of Bungalow Bill
7. While My Guitar Gently Weeps
8. Happiness Is A Warm Gun
9. Martha My Dear
10. I'm So Tired
11. Blackbird
12. Piggies
13. Rocky Raccoon
14. Don't Pass Me By
15. Why Don't We Do It In The Road
16. I Will
17. Julia

1. Birthday
2. Yer Blues
3. Mother Nature's Son
4. Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey
5. Sexy Sadie
6. Helter Skelter
7. Long, Long, Long
8. Revolution 1
9. Honey Pie
10. Savoy Truffle
11. Cry, Baby, Cry
12. Revolution 9
13. Good Night

The Beatles「Yesterday」(『Help!』1965年)


The Beatles『Help!』

【収録曲】
1. Help!
2. The Night Before
3. You've Got To Hide Your Love Away
4. I Need You
5. Another Girl
6. You're Going To Lose That Girl
7. Ticket to Ride
8. Act Naturally
9. It's Only Love
10. You Like Me Too Much
11. Tell Me What You See
12. I`ve Just Seen a Face
13. Yesterday
14. Dizzy Miss Lizzy

澤部 : この曲とかギターを平行移動して弾いてると思うんですけど、ポップス音から逸脱してるんですよ。ポップ・ミュージックってだいたいAメロBメロあるとしたら、4小節とか8小節とかなんですよ。で、1つが完結して次に向かう曲が多いんですけど、「Yesterday」は7小節なんです。僕それ聞いたとき、目から鱗で。いままであれが7小節だなんて考えたこともなかったので、そこでポールを見る目が変わるんですよ。だいたい7小節だと足りないと思ってしまうんですよ。

岡村 : 奇数ですしね。

澤部 : でも足りないって思わない、それはすごいことだと思うんですよね。何かを省略することなくやってるのが衝撃だったんですよ。それのさらにやばいのが「Blackbird」。三拍子と四拍子を行ったり来たりして忙しないはずなのに、だけどとにかく聴いていて気持ちいい。ポップ・ソングとしては逸脱したものだと思うんですよね。あとは、「This Never Happened Before」という曲。

Paul McCartney「this never happened before」(『Chaos And Creation In The Backyard』2005年)


Paul McCartney/This never happened before

澤部 : 後ろでうすーいリズムボックス鳴ってるんですよ。めちゃくちゃ暗そうで、もの悲しい曲でしょ? マイナーではじまって。でも、メジャーなんですよ、実は。マイナーだと思っていた曲が、メジャーにひっくり返る。

岡村 : で、またマイナーに。

澤部 : そう、ですぐまたメジャーにひっくりかえる。最初のきっかけがマイナーなだけで他は全部メジャー的な進行で、これすげえなって。良い曲なんですよ、とにかくこれが。

岡村 : “今の時代の音"につながるのはどういう部分だと考えますか?

澤部 : このアルバムで大事なのは、ポールの多重録音なんですよ。でも不思議と内に向かった感じもしないんですよね。これの30年前ぐらいに出た最初のソロ・アルバムも多重録音で、プロデューサーのナイジェル・ゴドリッチが、やりたくないと言ってるポールを無理やり説き伏せて宅録させてるんですよね。でも30年前と違う。宅録ながら外に向かうようなアルバムになっている。

その理由は僕にもわからないんですけど。もっとソングライター個人に目が向いていくような時代に今後なっていかないかなあ、と僕は思っています。今後、このアルバムの評価はますます上がっていくんじゃないかなあ。2015年に、レコーディング入る前になんとなく部屋で聴きはじめたら、最初から最後までずっと凄くてとにかく衝撃をうけてスピーカーの前から動けなくなったんですよね。

岡村 : その時に、澤部さんもまた多重録音やろうと思った、と。

澤部 : 思ったんですけど、僕がいまやると結局『エス・オー・エス』の焼きまわしになっちゃうんですよ。だからこのアルバムを聴いた直後の『CALL』ではあんまりやらないようにして、今回の『20/20』の「わたしのまち」という曲で取り組みましたね。

岡村 : 今日は澤部さんが《2017年に聴きたい旧作》として選んできていただいた作品の一部を実際に聴きながら話を伺いました。本当はもっと多くの曲を用意してきてくださったのですが、そちらについてはまたの機会にしましょう。リスナーとしての目線と作り手の目線の両方をクロスオーバーさせながら過去と現在と未来をちゃんと繋げる澤部さんの聴き方は、間違いなく今の時代、これからの時代に重要になってくると思います。澤部さん、ほんとに有意義な話をありがとうございました!

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LIVE SCHEDULE

eight matchboxes, seventy one cigarettes
2018年3月10日(土)@渋谷 CLUB QUATTRO
時間 : OPEN 17:00 / START 18:00

2018年3月21日(水・祝)@京都 磔磔
時間 : OPEN 17:00 / START 18:00

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PROFILE

スカート

どこか影を持ちながらも清涼感のあるソング・ライティングとバンド・アンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド。強度のあるポップスを提示しながらも観客を強く惹き付けるエモーショナルなライヴ・パフォーマンスが話題を呼んでいる。2006年、澤部渡のソロ・プロジェクトとして多重録音によるレコーディングを中心に活動を開始。2010年、自身のレーベル、〈カチュカサウンズ〉を立ち上げ、ファースト・アルバムをリリースした事により活動を本格化。さまざまな形態でライヴを行ってきたが、現在は佐久間裕太(Dr)、清水瑶志郎(Ba)、佐藤優介(Key)、シマダボーイ(per)をサポート・メンバーとして迎え活動している。発表作品に『エス・オー・エス』(2010年)、『ストーリー』(2011年)、『ひみつ』(2013年)、『サイダーの庭』(2014年)がある。12'single 『シリウス』(2014年)が〈カクバリズム〉での初のリリースとなり、続くアルバム『CALL』(2016年)が全国各地で大絶賛を浴び、晴れて初のシングル『静かな夜がいい』(CD+DVD)を昨年11月にリリース。今年に入り「山田孝之のカンヌ映画祭」のエンディング曲と劇伴を担当。さらに映画「PARKS パークス」に挿入歌の提供や出演している。今年のFUJIROCKに初出演し多くの観客に迎えられながら素晴らしいライブを展開。10月にリリースする新作アルバム『20/20』にてメジャー・デヴューが決定した。多彩な才能にジャンルレスに注目が集まる素敵なシンガー・ソング・ライターであり、バンドである。

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