2017/03/03 20:29

【REVIEW】WHY?が新作をリリース——インディ・ロックとヒップホップのサイケデリックな架け橋

アンダーグラウンド・ヒップホップ集団〈アンチコン〉にその出自を持ち、フリー・フォークやインディ・ロックへの接近など、Why?の通り名で、まさに〈アンチコン〉の枠組みを広げてきた感のあるヨニ・ウルフ。Why?自体は、2003年以降、彼のソロ・プロジェクトから一転、ヨニを中心に、ヨニの実兄で共同プロデューサーも務めるジョサイア・ウルフ、ダグ・マクディアミド、マット・メルドンといったマルチ・プレイヤーを内包したバンド・プロジェクトとなっている。そしてここに、Why?としては2012年の5thアルバム『Mumps, Etc.』以来となる6thアルバム『Moh Lhean』をリリースした。ヒップホップ時代から、その持ち味となっているサイケデリックでチルなムードはそのままに、フォーキーなサウンドを聞かせている。0T0T0Yでは岡村詩野音楽ライター講座、受講生によるレヴューと共にお届けします!


WHY / Moh Lhean
01. This Ole King
02. Proactive Evolution
03. Easy
04. January February March
05. One Mississippi
06. The Longing Is All
07. George Washington
08. The Water
09. Consequence Of Nonaction
10. The Barely Blur

【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC / AAC、MP3

【価格】
アルバム 1.500円(税込) / 単曲 150円(税込)


ヒップホップから10年代インディー・ロックへのラブレター

西海岸ヒップホップの王者、ケンドリック・ラマー。その彼に集うLAのジャズ/ビートの才能、フライング・ロータス、サンダーキャット、テラス・マーティン… 彼らはいずれも輝かしいサラブレッドだ。そんな「正統な」エリートたちのコミュニティのエリアというイメージの強いLAの一画で、インディー・ロックへの愛をヒップホップで吐き出す、一風変わった男がいる。WHY?のヨニ・ウルフ、その人である。

 そのヨニのソロから転身したバンド、WHY?。エリアとの結びつきやエリーティズムとは対照的に、ヒッホップでありながら彼らはまさに同時代のインディー・ロックの写し鏡だ。バンドとしてキャリアを始めた2000年代半ば、ヒップホップのビートにアコースティックな質感を落とし込んだ彼らのスタイルは、おそらく当時世を魅了したモデスト・マウスやザ・シンズらと呼応したものだろう。それから10年強、フル・アルバムとしては約4年半ぶりの本作『Moh Lhean』。驚くほど、迷いがない。音色のバラエティ。打ち込みの鮮明さと生音の温かみのコントラストや幻想的なハーモニー。それらを立体的に配した楽曲の奥行き。例えば、M2「Proactive Evolution」はその白眉とも言える楽曲だ。

 本作を象るこうした骨格は、ダーティー・プロジェクターズ、アニマル・コレクティブといった、フリーフォークの系譜の実験的なインディー・ロック勢のスタイルと言えそうだ。確かに、前に挙げたバンドの存在感が薄くなっていった2010年以降、WHY?としても寄る辺を失った葛藤を感じる作品が続いていたようにも見受けられる。しかしその後に続く新世代のインディー・ロックがブレイクをとうに超えすでに確たる成熟を見せている中、その果実をゆっくり、たっぷり咀嚼した今のWHY?の音は、そうした葛藤も一切吹っ切れている。

 では、これはロック・アルバムなのだろうか?いや、必ずしもそうではない。小気味よくレイドバックするビートを活かしたトラック、前半で楽曲をインタールードでつないでいく手法などはやはりヒップホップ的。モー・リーンとは、ヨニのホームスタジオの名前だそうだが、本作は彼らにとって原点回帰であると同時に新たなスタートだ。ヒップホップというスタイルに時代の音を吸い込むスポンジのようなWHY?は、彼らの出発した時代のように、のびのびとインディー・ロックとヒップホップの新たな融合を試す条件が再び揃った幸福な空気感を、本作に投影しているのだから。そしてそれはやはり、LAヒップホップのコミュニティにとどまらず、アメリカの別のシーンへの愛情があってこその所業なのだ。 (text by 井草七海)


WHY?「Proactive Evolution (Official Lyric Video)」

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PROFILE

WHY?

Joyful Noise Recordings Official HP

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