明るい現実との向き合い方──快楽&実行主義なnever young beachの2ndアルバム先行曲配信&予約開始
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『YASHINOKI HOUSE』をリリースしてから1年。そのトロピカルなフォークロックははっぴいえんどの再来を思い浮かべさせるも、より現代のインディ・シーンやカルチャーと密接な存在として異彩を放つようになったnever young beach。1年を圧倒的なライヴ量で走り続けてきた彼らから、待望の2ndアルバムがリリースされる。アナログ12インチの『YASHINOKI HOUSE』に追加収録された「Pink Jungle House」やライヴ定番曲となっていた「お別れの歌」「Motel」、バンドがリスペクトする高田渡の「自転車にのって」カヴァーを含む全9曲。その内容は後述の岡村詩野による考察とインタヴューに任せるとして、本当に誠実で人懐こく気持ちの良いアルバムであることは強く強く推しておきます。
そのリリースも約2週間後の6月8日と迫るなか、OTOTOYでは2週間先行でハイレゾ版の予約販売を開始! しかもすでにライヴで披露され、ひときわの輝きを放っている「明るい未来」(ミュージックビデオも公開されたばかり!)が先行ダウンロードで手に入るという仕様。インタヴューではヴォーカル&ギターの安部勇磨とドラムの鈴木健人に対面。おもしろすぎる内容だったので、予約&先行配信にあわせて前半を公開。後半はリリース日の6月8日に公開となりますので、アルバム発売と共にお楽しみに!
ハイレゾ版予約注文開始&M8「明るい未来」先行配信!!
never young beach / fam fam
【Track List】
01. Pink Jungle House
02. Motel
03. 自転車にのって
04. fam fam
05. なんもない日
06. 雨が降れば
07. 夢で逢えたら
08. 明るい未来(※先行配信曲)
09. お別れの歌
【配信形態 / 価格】
[左]24bit/96kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
[右]16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
単曲 250円(税込) / アルバム 2,000円(税込)
※アルバム購入で歌詞ブックレット(PDF)が付属します
never young beach / 明るい未来の話never young beach / 明るい未来の話
INTERVIEW : never young beach
単なる快楽主義ではなくあくまで実行主義。never young beachの作品、ライヴに触れているとそんな意識の高さを実感する。いや、快楽主義には違いないだろう。彼らは何より音楽が好きで、音楽を作っている瞬間が好きで、それを鳴らしている瞬間が気持ちよくて。しかもその快楽を多くの仲間と共有することがまた楽しい、そんな連中だ。その悦楽の中に埋没してしまっているように見えてしまうほど、彼らは音楽三昧、音楽漬け、音楽にどっぷりの生活を謳歌している。そこに嘘はない。好きだから行動するのみ。それこそが彼らにとってのリアルであり現実なのだ。
呼ばれたら楽器を抱えて飛んでいくようなフットワークの軽さで毎週どこかでライヴをやり、その続きで仲間と共に遊びにも興じる。前作『YASHINOKI HOUSE』をリリースしてからの彼らはそんな生活により一層の拍車がかかっていると言えるが、そうした音楽三昧による快楽&実行主義がそのままカタチになったのがニュー・アルバム『fam fam』だと言っていいだろう。軽やかなギター・カッティングを推進力の一つとして小気味よく聴かせるスタイルの楽曲はこれまでどおり。リズムにヴァリエイションが増えているし、安部の歌詞にはやや翳りを帯びたものも散見されるようになったが、ただ、ただ、いい仲間に囲まれて音楽にどっぷり浸かっている毎日の暮らしをそのまま音にする、そんなある種のリアリティを抱えたポップス指向は前作以上に説得力を持つようになったと言えるかもしれない。高田渡の「自転車にのって」のカヴァーなどnever young beachの手にかかってはまるで彼らの生き方のテーマ曲のようにさえ聞こえる。
加えて、今作はファーストより遥かに録音がいい。リーダーでソングライターの安部勇磨とドラムの鈴木健人に、新作にまつわるそんなバンドの快楽&実行主義について話を聞いた。
インタヴュー&文 : 岡村詩野
写真 : 雨宮透貴
取材協力 : CITY COUNTRY CITY(http://city-country-city.com/)
信頼できる人も近くにいてくれるし、メンバーも成長して、録り音でいいものが作れる自信もついた
──踊ってばかりの国のギタリストの林宏敏くん、脱退して今は髭などで幅広く活動しているドラマーの佐藤謙介くんの2人がテック・サポートで参加しているそうですが、具体的に彼らはどういう仕事をしたのですか?
安部勇磨 : 一緒に音作りからやってもらったんです。ギターだったら林くんに60年代のギターやアンプを持ってきてもらって。「この曲はこういう音でやりたいんだ」って伝えてみて、「じゃあ、こういう感じでどう?」って音を出してもらったりするって感じでしたね。
鈴木健人 : もちろん、事前にリハスタで録った音を聴いておいてもらって、それに合った音を考えておいてもらったりして。で、僕らが考えている音のイメージと擦り合せる感じで。少なくともドラムに関しては共同作業をする感じでした。
──なぜ彼らにその仕事をお願いしたのですか?
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安部 : まあ、なんか、一緒にやったら楽しそうだな〜っていう(笑)。すごく尊敬しているミュージシャンだし、そもそも彼らの音が好きだし。去年のファースト・アルバム『YASHINOKI HOUSE』を作る時は、僕らの頭の中で描いているイメージがメンバー5人ちょっとずつ違ったりしたんです。もちろん作業自体は楽しかったし満足しているんですけど、そもそもバンドが結成されて3ヶ月後とかだったんで、メンバーのほとんどがレコーディング自体初めてだったわけです。ギターの阿南(智史)は宅録が好きだけど、やっぱりちゃんとしたスタジオで録音することはほとんど経験なくて。去年のアルバムの制作段階で林くんとかと仲良くはなっていたけど、自分たちのことでいっぱいいっぱいでそこまで気が回らなかったんですよね。でも、あのアルバムはあのアルバムで結果的に満足していて。あの時はコンプをかけたデッドな音でやりたいとか、ドラムとかはサスティンを短くしてしまいたい…みたいな希望があって、それを実践したわけですけど、エンジニアの池田(洋)さんから「それだったら宅録でもいいんじゃない」みたいに言われて、「なんだよ、やりたいことやらしてくれよ」って思ってちょっと悔しかったり(笑)。でも、全くその通りなんですよ。もちろん、池田さんとしてもデッドでもいいわけなんです。でも、許せる範囲と許せない範囲があって、僕らがやりたがったデッドな音は範囲を超えていたんですね(笑)。ま、そりゃそうだよなって。だから、今回はちゃんと録り音をよくしようってことになったんです。ミックスとかであれこれしないように、最初から録音をちゃんといい音で録ろうって。
鈴木 : 僕も今回、まず楽器…… スネア自体から替えてみたんです。前回はデッドな音にしたかったからミュートをガッチリかけたりしていたんですけど、今回はいいスネアを使わせてもらったというのもあるし、それ以前から明るめの音を出すように、それこそ謙さん(佐藤謙介)と一緒に音作りを丁寧にして。ミュートもしなかったですね。
安部 : マック・デマルコとかが好きで。ま、今でも好きですけど、そういう音にしたくて、とにかく去年のアルバムの時は頭でっかちになっていたんですよね。「ああいう音じゃないのはクソだ、キレイな音? はあ?」くらいに(笑)。けど、その後、ライヴもたくさんやって自信もついたし、そればっかやってても面白くないし、今回はありのままでいいんじゃないかなって思えるようになったんですよね。林くんとか信頼できる人も近くにいてくれるし、メンバーも成長して、録り音でいいものが作れる自信もついてたから、僕はもう歌うことをちゃんと考えていこうって。
鈴木 : でも、ミックス作業を抜いたら、1週間程度で録音は終えたんです。今年の1月下旬から作業したんですけど、割とバーッと録れましたね。
「僕らはキン肉マンみたいなカッコ良さがある、ブレんのやめよ!」って
──実際、今回のアルバムは音の良さがまず際立っていますよね。前作には前作の音の良さがあったとは思うのですが、今回は録音にかなり気を配った印象がありました。結果、作品に前作にないモダンな側面をもたらせることにもなったと感じましたが、そのあたりの手応えはありましたか?
安部 : そう言ってもらえると嬉しいですね。でも、僕ら、もともと別に古い音楽ばかり聴いていたわけじゃないし、新しいのも聴くし。もちろん、はっぴいえんどや細野(晴臣)さんは好きですけど、それらの焼き直しをしたいわけじゃない。ただ、やっていて気持ちのいい、楽しい音楽をやっている、ほんと、それだけなんですよね。
──ただ、前作と今作、変わらず共通しているのは、never young beachの作品は低音が抑え目だということだと思うんです。安部くんを入れてギターが3本というバランスもあるのかもしれないし、ギターが軽やかに鳴るスタイルの楽曲が中心だからかもしれないですが、低音がガツンと響くような曲が基本ないですよね。今作で音の良さが際立ってもそこは変わらない。ここには意識は働いていますか?
安部 : そうなんですよね。でも、あまりそこも具体的に意識はしていないんですよ。例えば、ストロークスってああいう演奏なのにレコードはそれほど低音が出ていない。アラバマ・シェイクスもファーストはあまり出てない。でも良くね? って感じなんですよ。実は、今回のアルバムのミックスの段階で、(同じレーベルの)D.A.N.の新作を聴いたら、そっちはすっごい低音が出てて。スズケン(鈴木健人)なんかマジ落ち込んじゃって(笑)、「俺らこんな低音出てなくていいのかな〜?」とか言い出したんですよ。
鈴木 : (苦笑)。
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安部 : 俺、それ聴いてムカついて。「D.A.N.はD.A.N.でしょ、僕らは僕らじゃん!」って。「彼らには彼らのカッコ良さがあるけど、僕らはキン肉マンみたいなカッコ良さがある、ブレんのやめよ!」って。ギターを中心とした小刻みな音の気持ちよさが僕らの音楽の魅力なんだし。そういう意味では、低音が抑え目っていうのは自覚しているし、そこに気持ちよさを感じているのは間違いないですね。
鈴木 : (安部)勇磨の声って低い方じゃないですか。そこで、バスドラとスネアが下から支えるようにやっちゃうと重なっちゃう。甲高い声だったりしたらそれでもいいのかもしれないけど、低い声の歌ありきのバンドで、ドラムやベースでさらに低音を強調しちゃうと歌の良さが消えてしまう。そういうことは、今回謙さんとよく話したり試したりしていましたね。
これが僕にとっての現実だし、全然逃げてない
──なるほど。例えば、never young beachの場合は歌詞の方向性も割と快楽指向が軸になっていますよね。ともすれば“お気楽主義"みたいにも捉えられないくらい。そこへきて低音が抑え目で録音も良くなった、とあっては、ますますその快楽指向が強調されてしまう可能性もあるわけですけれど、そこはいくらか自覚しているところでしょうか?
安部 : ああ、ネットか何かで見たな。「こいつら、こんな歌ばっか歌ってて、今の日本の状況考えてんのか」みたいな(笑)。「このご時世こんなことばっかり歌ってる若者がいて不安です」とか(笑)。
鈴木 : 現実に向き合ってなさすぎる、とかね。
安部 : どうでもいいんですけどね、全然言ってくれて構わないんですよ。だって、僕は日本の未来とか現状とかを考えてないわけじゃない。僕は僕でやることをやって、歌いたいことを歌っている。行動に移せばいいだけなんですよ。確かに今は大変な時代かもないですけど、歌ってることは楽しくても、やること最低限やってればそんな酷くはならないだろうって。
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──ただ、今回のアルバムにはやや内向的な歌詞のものもいくつかありますね。
安部 : そうですね。「夢で逢えたら」って曲は死んじゃった友達とか親族のことを思って作った曲だし、「fam fam」も僕の中ではこれまでになく内向的な歌詞だと思います。でも、そういう気持ちでばかりいても仕方ないっていうか。去年1年間、アルバム出してツアー出てライヴやって、その合間に友達を家に呼んで遊んだり… って生活をしている中で、ネガティヴなことなんて考えられなかったっていうのが正直なところなんです…… ただ、現実生活をありのまま歌詞に書いてるだけなんですよね。
鈴木 : だから、エスケーピズムだって言われることもあるんですけど、よっぽど現実に向き合ってるんですよ。
安部 : ほんとそうだよね。これが僕にとっての現実だし、全然逃げてない。実際、僕、例えばこういう制作の現場とか活動の中ではすごくシビアですよ。「当たり前に自分のことはちゃんとやれ」とか「最低限のことはやれ」って言いますよ、メンバーに。ライヴはちゃんとやる、ミスしない、発言に責任を持つ、関わってくれた人に感謝する…… 全部当たり前のことなんですけど、そういうことは僕は率先して現場にみんなに言ってますね。よくない雰囲気の発言をSNSに書いたり愚痴ったりもするなと。いい大人なんだから、そうやって文句言うならテメエが行動しろよって。バンド内では僕は割とそこらへんは徹底して言ってますね。だから、何も考えてないただの快楽主義、現実逃避じゃないし、むしろ、そうやって自分含めた周辺からちゃんとやってこうぜって気持ちは人一倍強く感じていますね。その上でのあの歌詞、あの曲だってことなんです。
>>後編 : never young beachが“fam”と送る音楽三昧な日々の結実
過去作
never young beach / YASHINOKI HOUSE
never young beach、1stアルバム。昭和な純喫茶から漂う珈琲のにおい、春の訪れから夏休みまでのワクワク、真夏の蒸せ返るような暑さ、残暑から秋に移り変わる哀愁など、様々な景色、におい、感情、日常が混じり合った独特な空気感、そしてユーモア溢れる歌詞が自然と流れていく全9曲。トリプルギターのアンサンブルが最高に気持ち良く、サイケデリックでエキゾチック、かつ極上のポップサウンドは彼等にしか成せないオリジナリティに溢れた傑作。
>>1stアルバム『YASHINOKI HOUSE』特集インタヴュー
ソフト・サイケデリック・デイドリーム・ポップ! 蒼く甘いメロディがゆらめく白昼夢ベッドルーム・ポップ全8曲!! never young beach現体制前の、安部と松島による宅録ユニットでの作品。即完売し現在入手不可能の手作りダンボール加工ジャケ+ZINE付の自主制作音源が、OTOTOY限定で配信中。
LIVE INFORMATION
never young beach『fam fam』TOUR
2016年7月9日(土)@渋谷WWW(ワンマンライヴ) ※ソールドアウト
2016年7月15日(金)@大阪AKASO
出演 : never young beach / and more
2016年7月16日(土)@名古屋 TOKUZO
出演 : never young beach / and more
[その他イベント]
Shimokitazawa SOUND CRUISING 2016
2016年5月28日(土)@下北沢周辺ライヴ会場14ヶ所
CITY COUNTRY CITY 10th AnniversaryARIGATOU
2016年6月5日(日)@新代田FEVER
出演 : 曽我部恵一 / ランタンパレード / 平賀さち枝 / CCC CREW / never young beach
YATSUI FESTIVAL 2016
2016年6月18日(土) / 19(日)@渋谷周辺ライヴ会場11ヶ所
※18日(土)出演
OUR FAVORITE THINGS 2016
2016年7月10日(日)@岐阜 各務原 河川環境楽園
出演 : OGRE YOU ASSHOLE / Yogee New Waves / 髭 / Suchmos / HALFBY / ORLAND / deadbundy / never young beach
PEANUTS CAMP
2016年8月20日(土) / 8月21日(日)@一番星★ヴィレッジ(市原市オートキャンプ場)
※出演日後日発表
PROFILE
never young beach
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阿南智史(Gt) / 巽啓伍(Ba) / 安部勇磨(Vo&Gt) / 松島皓(Gt) / 鈴木健人(Dr)
2014年春に安部と松島の宅録ユニットとして活動開始。暑さで伸びきったカセットテープから再生されたような奇特なインディ・サイケ・ポップ『HOUSE MUSICS』をダンボール仕様のジャケットで100枚限定で発売。ライヴもせずに口コミで瞬く間に話題となり、ココナッツディスクなど一部店頭のみで販売し即完売。2014年9月に阿南、巽、鈴木が加入し、現体制の5人組になる。9月に初ライブにして自主企画〈Fight Club〉を開催。2015年5月に1stアルバム『YASHINOKI HOUSE』をリリースしロングセラーとなり2015年上半期の『CDショップ大賞』ノミネート作品に選ばれる。7月末にFUJI ROCK FESTIVAL'15に出演。土着的な日本の歌のDNAをしっかりと残しながら、どこか海外の海と山が見えるような匂いを感じさせる。そしたら誰かが言った…西海岸のはっぴいえんど」と。2016年1月には『YOSHINOKI HOUSE』のアナログ12inch盤がリリース。6月には2ndアルバム『fam fam』がリリースされる。
>>never young beach Official HP