いわゆるヒーリングとは違う、新しいヒーリングです
──聴いていてすごく気持ちいいんですけど、ヒーリング・ミュージックとも違う気がするんですよね。
Sunday:そうそう、そうなんですよ。ヒーリング・ミュージックって……いや、やめておきます。
──ヘヘへ! なんですか?
Sunday : (省略)~~ってあるじゃないですか。……いや、これはどこまで説明してもカットなのでアレやねんけど。2020年はアーティストにとって、イベントやライヴの中止が多かった大打撃の年じゃないですか。そんなときに作る音楽って、どうしても目の前で起こっている状況に、どう対処していくべきかの曲になりがちで。だけど、海とか山とか街とか、もっと広い視点で捉えると、とにかく世界は頑張って朽ち果てずに待ってくれているわけじゃないですか。3年後とか5年後に自分達が幸せに暮らしているはずだ、というイメージができるように作ったんです。いわゆるヒーリングとは違う、これは新しいヒーリング。あと『MCサマー』っていう、自分のnoteに連載していた小説に沿って曲作りをしたのも大きなポイントですね。
──『MCサマー』はどういう内容なんですか?
Sunday : ラッパーの男の子と、全米デビューしたけどCDが860枚しか売れなかった女の子がふたりで旅に出る話なんです。色んな人と出会うなかで、世界を裏で牛耳っているロスチャイルド家とか、言ったらダメ系のところまで辿り着いてしまうっていう。さらに話が進むとベルリンの壁が崩壊してソ連が解体したとき、施設に入れられてスパイの教育を受けた子供たちと出会ってしまい、最後はどうなるか……という話を書いたんです。『MCサマー』のような、平和を願う思いが音楽の中でも随所にあってほしいなって。
──それが『The answer to the trip』に繋がると。
Sunday : そんな曲を聴いて、眠くなったら大成功だなと思って作りました。曲を聴いて眠れるのって、曲調がゆっくりしているからじゃなくて、良い音楽であれば眠れると思うんですよ。例えば、カラオケボックスでどんだけ爆音で歌われても、眠くなるときがあるじゃないですか。なんとなく知っている音楽って安心なんです。逆に、全然知らないグループの中で歌われたら寝れないと思うんです。どこかで聴いたことあるような、安心できる音楽を目指して作りましたね。
──それこそ、このアルバムを聴いていると、自分がよく知っている街や風景の映像が浮かんだりして、そういうフラッシュバックが度々起きたんですよね。
Sunday : そういうことなんですよ! 人の脳には色んな映像が記録されていて、そこにタッチできるようなフレーズ感で曲を作ったし、だからこそ聴いていて気持ち良いんですよ。自分が見たことのあるかも知れない懐かしい風景が思い起こされるから。
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──1曲目“Good morning beach”で車が走る音があったり、5曲目“Wonder People”でナイトカフェで過ごす人たちらしき音があったりとか、楽器以外の音も大きな役割を果たしていますね。
Sunday : 今回はサンプリングの音を探すのに、めちゃくちゃ時間がかかりましたね。レストランで男女が話しているんだけど、決して楽しい会話じゃない感じとか、フォークの「カチャカチャ」やシャンパンを開ける「ポン!」が絶妙に聞こえる音とか。いざ探して見えると、3秒分の音を探すのに1時間以上かかることもあって。とにかく、たくさん見つけてくれたアツムワンダフルに感謝です。
──骨の折れる作業ですね。
Sunday : 例えば雨の音を探していたとして、それが見つかっても、そこから耳障りの良いように音質加工をしなければいけない。なおかつ雨が降ったような気持ちになるところまで持っていきたいので、コレ良いかも!と思っても、曲にしたらやっぱり違うなと思うこともあるし。音楽と生活や環境の音って混ぜすぎても良くないから、そのバランスを考えるのはすごく苦労しました。
──参考にした音楽はあるんですか?
Sunday : ローリン・ヒルの『ミスエデュケーション』というアルバムに、子供が授業を受けている音が一瞬入るんです。その一瞬の音だけでアメリカの子供たちが、先生に何かを言おうとする情景が浮かんでくる。そういう風景を含めて、音楽を作っていることに感動したんです。一時『ミスエデュケーション』を毎日聴いていたんですよ。それを聴くシチュエーションを決めるのも好きなんです。171号線のあの坂を登っているときに、夕日があの位置まで昇ったら、この曲を絶対に流したい!みたいなことを毎日やっていて。そういう景色と、自分と、音楽が一体化する瞬間がめちゃくちゃ気持ち良いなと思って。僕もそこを目がけて曲を作りましたね。
──気になったので言うと、9曲目“summer vacation”の冒頭で子供がなにか歌っているじゃないですか。アレってなんですか?
Sunday : アレはなにを言ってねん!といま調べてるんすよ。
──ハハハ、本人も分かってない(笑)。
Sunday : 元々は子供がなにかをお祝いしている音がないかな?と調べていくなかで、アレがあったんですよ。なにを言ってるのか分からないですけど、励ましているかお祝いしている声なので、絶対にコレしかないと。あのサンプリングは名作ですね。
──ちょっと異色ですよね。
Sunday : そうそう。自分達では絶対目にしないとか会えないものと巡り合うことができるのも、サンプリングの魅力なんです。だって、あんなのどこで録音したか分からないですよね。そもそもどこの国の子供たちなのかも分からない。だけど、想像できるじゃないですか。そうやって、生活とか環境の音をサンプリングして、そこに自分の音楽に合わせながら作っていきましたね。
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──このアルバムって全曲インストなので直接的なメッセージはないんですけど、曲を聴いていると、みんながマスクをしないで街を歩いている映像が浮かんでくるんですよ。それが未来なのか、過去なのかは分からないんですけど。
Sunday : うんうん。これからのイメージって、それまでの経験とか見てきた映像でしか映せない。つまり過去・現在・未来が繋がった瞬間、この作品を聴く人はリラックス出来ると思うんですよ。とにかく前後3、4年を楽しかったと言い切らなきゃダメじゃないですか。そこで自分の音楽が後押しで出来たら良いなって。