“発酵”ってなに?──東京塩麹が塩麹作りを体験! 発酵業界参入に名乗りをあげる
東京塩麹というバンド名なのに、塩麹さらには発酵食品に関して全く知識がないのはいかがなものか! 東京塩麹メンバーの額田いわく、そのバンド名によって、これまで塩麹に関しする質問をかなり受けてきたみたいだ。この機会に塩麹に関しての知識をつけて、音楽業界で1番塩麹に詳しいバンドを目指そうじゃないか! ということで発酵デザイナーの小倉ヒラクさんをお招きして塩麴作り体験をしつつ、発酵商品に関して学びました。体験している様子をどうぞ!
塩麹作り体験をレポート!
小倉ヒラク
見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする、“発酵デザイナー”。
顕微鏡でしか見えない無数の菌たちが織りなすミクロコスモスを、グラフィックにしたり、アニメや歌や踊りにしたり、展示会やワークショップやトーク・イベントにしたり、「発酵醸造技術の素晴らしさを世に伝えるべし」という小泉武夫先生の薫陶を受けて、日々楽しく活動しています。
2017年4月28日には新著『発酵文化人類学』が発売。手前みそからシンギュラリティまでをカバーする前代未聞の発酵本は全国の書店で手に入ります。
額田 : 僕らは塩麴について全く知らなくて。ただ、これまでもバンド名が故に塩麴について聞かれることはたくさんあり、正直困ってました。これを機会に詳しくなりたいです!
小倉ヒラク(以下、小倉) : 塩麴とは、そもそも何なのかと言いますと、調味料なんです。
額田 : はい。
小倉 : トロっとした塩みたいな感じなんですね。なにが普通の塩と違うのかというと、麹というものを使うんです。僕はカビの研究者なんですけど、麹菌というのは、日本にしかいない麹カビというカビなんです。普通カビってバイキンぽいじゃないですか。でもこの麹をつくる麹カビというカビは、人間に良いことしてくれるカビなんですね。この麹というのは日本特有の発酵食品なんです。最近和食がすごい注目されてるんですけど、和食の味覚で“旨味"というのがあるんです。
額田 : うんうん。
1. 材料を揃える
こちらが塩麹の材料。
麹、塩、水のみ! 以外と材料は少ないんですね!
小倉 : この“旨味”の大きな部分をつくってるのがこの麹というものなんです。僕ら普段発酵食品手作りしなくなっちゃったからあんまり意識しないんですけど、麹は和食の性格を決めてる、和食においてもっとも重要な発酵食材なんですね。
小倉 : この麹というものは一体どういう食材なのかというと、もとはこれお米なんです。よーく見てもらうと、お米の表面に花が咲くようにモコモコっとカビがはえてますよね。これが麹カビなんです。
渡辺 : ほんとだ、すごい。
小倉 : お米にこの麹カビってカビが生えてモコモコしていくと、お米の栄養成分が分解されて旨味と甘みにかわっていくんですね。
小倉 : 麹ってなにかというと、穀物に麹菌ってカビをくっつけて旨味と甘みをいっぱい閉じ込めたものなんですね。ただし、麹ってこれだけでは何も意味がないので、これをちょっと加工してあげないと使えないんです。麹というのはいろんな加工の仕方があるんですね。
2. 麹を細かくほぐす
麹をほぐしてきます。
パラパラになるくらいまでほぐすとGood!!
小倉 : そこのなかで調味料として1番簡単に使えるやり方っていうのが塩麴なんですね。他にも甘酒みたいにスイーツとして加工する方法もありますね。だから麹というのは、このシンプルなものからいろんなものをつくりだすことができる、結構万能の魔法の食材なんですよ。
渡辺 : すごい。
小倉 : すごいんすよ。麹がないと和食成り立たないくらいなんです。
渡辺 : え〜。
小倉 : 結構とんでもないものなんですよね。僕もいろんなアジアの国をまわってみたんですけど、結構近いものはあるけどこのスタイルは、日本にしかないんです。
3. 塩を入れる
タッパーなどに、ほぐした麹を移し塩を加えていきます。
塩麴をつくるときは、塩1 : 体麹3の割合がベスト。
小倉さん曰く「好みによるともっと塩をふったりとか麹少なくしたりする人もいるんだけど、個人的にはこれぐらいのバランスが1番麹の味わいと塩味のバランスがよくでるのでいい感じ」とのこと!
4. 水を入れる
水を加えていきます。
水の量は塩と麹がひたひたになるくらいまで。
5. まぜる
麹、塩、水を加えたら、まぜます。
ひたすらまぜます。
小倉 : いかがですか塩麴、ついに名は体を表して。
額田 : そうですね、ようやくですね。
渡辺 : ようやく。
額田 : ほんとにだからあの、使う食材はシンプルですよね、シンプルというか麹と水と塩だけで。
小倉 : これだけで仕込みおしまい。これでできちゃうんですね。このあと1日か2日に1回ぐらい混ぜて、1週間から10日ぐらいすると、この米粒とか麹が、発酵菌が出す酵素によってどんどんとけていって、旨味とか、甘みが出てくるんですね。それで、すごく味わい深い調味料になるんですね。だから、発酵っていうのはミニマル・ミュージックなんですよ!
渡辺 : そうですね(笑)。
小倉 : ミニマル・ミュージックってなんかこう音がどんどん重なってるじゃない。で、普通の塩と塩麴が違うのって、その基本塩なんだけど、塩の上に発酵菌のつくる旨味とあまみっていうのが重なっていくんですよ。その重なってくハーモニーっていうのがやばいんですよ。それがうまいんですよめちゃめちゃ。
額田 : ライヴのMCでしゃべります。ようやくMCで何をしゃべったらいいかがわかりました。
小倉 : 発酵デザイナーっていう怪しい仕事をしている人に教えてもらったって言ってね(笑)。
一同:(笑)
小倉 : ということで、塩麴のできたやつをもってきたんですけど。
渡辺 : 全然違う! 甘酒みたい。
小倉 : ちなみに塩麹は普通の塩とかに比べても圧倒的に健康にもいいんです。お肌がキレイになる成分が入っているので、女性のスキンケアにいいですね。あとは消化を促進して、便秘を妨げる働きとかあるので。(塩麹を見て)これがどんどん溶けていって色が濃くなってきて、ドロドロのペーストになっていったら完成って感じです。1週間から10日くらいでこの感じになります。
渡辺 : そんなもんでなっちゃうんですね、すご!
小倉 : 菌がいっぱい働くんですね。じゃあ試食していただきましょう。仕込み直後でも食べられるんで、どう変わっているか見てみましょう。
食べ比べてみる
仕込み直後のものも食べられるということで、食べ比べをしてみることに。
発酵前のものを試食
額田 : めちゃくちゃしょっぱいですね。しょっぱい以外にないですね(笑)。
渡辺 : 予想以上にしょっぱいですね(笑)。
完成したものを試食
額田 : あ、甘いですねこっちは。しょっぱさはあるんですけど、甘味がありますね。
渡辺 : しょっぱいっていうよりも、甘いっていう方が強いですね。甘酒を溶かずに塩を入れて食べているみたいな。
小倉 : でもこれ実際の塩分濃度はどちらも変わらないんです。だけど圧倒的に食べやすくなってるんですよ。これは「塩なれ」といって発酵がつくる成分が、塩を目立たなくするんですね。要はハーモニーですよね。なので、料理に使った時に、ただ単純に塩を使うよりも味がまろやかになるんです。これが塩麹のマジックなんですね。
小倉 : 最後に使い方を教えます。1番イケてる使い方は、「漬ける」っていうことなんですね。この中に、野菜とかでもいいんですけど。1番いいのは安い肉を買ってきて1日漬けると高い肉になっているという(笑)。
額田 : それは聞いたことあります!
小倉 : 発酵菌がつくる酵素によってお肉がやわらかくなるんですね。味が染み込んで旨味が入ってくるので、それを焼くと固いお肉でも柔らかく味わい深くなっていくので。あと塩麹は和食以外にも使えて、僕がよくやるのはグラタンをつくる時に調味料として使うんですね。あと、オリーブオイルとかバルサミコ酢とかと混ぜてドレッシングにするとか。
渡辺 : あーおいしそう。
小倉 : そういう使い方をすると洋食でも使えるし、もちろん和食だったら豆腐の上に塩麹をちょっと乗せてネギとかかけるとめっちゃおいしい冷奴になるんです。そういうシンプルな使い方でもよし、漬けて食べるのでもよし、普通の塩感覚でなんにでも入れてよしっていう、優れたものなんですね。なのでぜひおうちでもいろいろ試していただければと思います。
額田 : 肉以外で、漬けると美味しくなるものはありますか?
小倉 : 魚! 魚も超やばい! あとはお味噌と半々くらいで混ぜて卵の黄身だけを漬けるの。それで2、3日経つと黄身が固まってきて酒のつまみになる!
渡辺 : おいしそう!
小倉 : ホーム・パーティーとかで出すと「お前やるな!」感がかなり出る(笑)。全然手はかからないけど。
額田 : 塩麹って、なんでここ10年くらいで流行りはじめたんですかね。
小倉 : 10年前とかは、僕がワークショップとかやっても給食のおばちゃんくらいしか着ていなかったんです。だけど震災があってから「子供の安全が気になって、惰性でご飯を食べさせてもいいのかしら」みたいな方が増えたんですね。そのあとからすごい流行りだしたんですね。そのあと「麹を食べてキレイになりたい!」っていう女子が増え、またそのあと今度はアーティストとかクリエイターがすごい増えて。実は醸造をやっている人も、元ミュージシャンとかがすごい多くて……。なので、ぜひ発酵業界に参入してください(笑)。
額田 : はい! 勉強します(笑)。
小倉 : 音楽業界の中で最も塩麹に詳しいみたいなバンドになってほしいですね。
額田 : ライヴのMCとかで麹についてすごい話すのもおもしろいですね。
小倉 : これを機に発酵業界に参入してくれれば!
額田 : 僕らも特殊な音楽をやっていて、なかなか出るライヴ・ハウスとかも限られてきちゃうので、ぜひ発酵業界に参入したいですね。
小倉 : こっちにいくと、今度は飲食店とかでライヴすることになりますね(笑)。
額田 : ぜひ出たいです!