私が「ドアの向こう」に行く理由になれたら
ーー佐藤さんとしては、作詞家としてのnonocさんの素質もアピール出来て、大満足といった感じでしょうか。
佐藤:そうですね。自然体な言葉が出てきてるのが本当に良くて、このサビの「はじまるのニューワールド からっぽの今日を穏やかに散らかそうか」とか、すごく気に入っていて。
nonoc:めっちゃいいよね。段ボールをほどいてるの浮かぶじゃん。
佐藤:自分が東京に出てきたときのことも思ったけど、同時にnonocの自然体な言葉を聞けたっていうのが、嬉しかったんですよね。
nonoc:作詞じゃなくて、私の歌のマインドなんですけど、安心して聴ける声というのをずっと目指していて。ライブで2時間とか聴けて、重くもなければ軽くもなく、どんな日常にでも馴染む、安心できる声を基準にしていきたいので、その安心感が、ちゃんと伝わる楽曲だったなと思います。
佐藤:この曲のミックスは僕が自分でやってるんですけど、fhánaだったり楽曲提供とかでもよくお願いする信頼しているエンジニアさんがいるんです。J-POPもアニソンも含めていろんなメジャーアーティストの楽曲のミックスをやってる方なんですが、試しに聴いてもらったんです。そしたら「歌、上手っ!声、太っ!」って仰って(笑)。僕が知る限り、nonocの歌声に対して「声太い」って感想を持っている人はいなかったです。もちろん彼は今までのnonocのこと全然知らないので、 僕が 「最近、nonocって子が入って、一緒にこの新曲作ったんですよ」って、まっさらな状態で聴いてもらって出てきた第一声がそれだったので、嬉しかったんですよね。

ーーまさに狙ってたことですもんね。今後チャレンジしてみたいことはありますか?
nonoc:それで言うと、2024年はデビュー5周年だったので、11月末にライブを控えてて、そこで今まで作ってきた自分と、あとは今年に入って成長した部分なんかを皆に伝える第1弾のでっかいステージだと思ってて。その先はアルバムを作りたいです。5年やってて、1枚も出せていないので。
ーー佐藤さんというか、fhánaの好きなところとして、決してアルバムのために作られたわけではないタイアップの曲も、アルバムの一部としてしっかり機能しているところで。初めてアニメで聴いたときとまた違った感覚で聞けるのがすごくかっこいいなと思っています。なので、佐藤さんがプロデュースする以上、nonocさんの色んな魅力が詰まった、ものすごいアルバムになりそうな予感がしています。
佐藤:今の話は、もう本当にそういう風に思って作っていて。アニメの曲ってクライアントワークでもあるわけですけど、かといって完全にお仕事で作ってるわけでもないし、でも独りよがり的に、アニメとか関係なく自分たちの作りたいものをぶつけるぜ!というわけではなくて、作品や監督さんが求めているものと、自分たちが今作りたいものが重なり合う部分って必ずあるんですよね。そこを見つけて、拡大していく感じで作ると、タイアップ作品としても、fhánaの作品としても説得力のある曲になる。なんなら当初作りたいと思ってたものを超えてきてくれたりするんです。
それらも含んでアルバムを構築して、fhánaっていう大きな物語の中に、最初からタイアップ曲も組み込まれていたかのようにストーリーラインができるようにっていつも思っていますね。
約75分にも及ぶ超大作
ーーアーティスト活動にちゃんと信念があって曲を作られているのは、リスナーにも伝わっていると思います。でも、個人的にはそういうある種の「制約」の中で、いいものを作り出そうとする点をいちばんリスペクトしているというか、私がアニソンを好きな理由ってそこだったりもするんですよね。
佐藤:それは本当そうですね。例えば”90秒”とかもそうですし、 制約があったほうが自由にやるよりもすごいクリエイティブなものができたりします。と同時に、アニソンの難しいとこなんですよね。特にアニソンシンガーは、作品ごとに別の作家さんから曲と歌詞を提供してもらったものを歌うことが多いので、活動の中で統一感を持たせることが難しい場合が多いわけです。
fhánaはバンドだし、曲を作る人も歌う人も、歌詞を書く人も……、歌詞を書く人はメンバーではないけど、基本固定なんで、 ずっと統一感を持ってやってこれたと思うんですよ。そして自分がやってきて、このやり方が良いなと僕は思ってるんで、nonocと一緒にやるってなったからには、もうがっつりプロデュースしていきますし、ちゃんと統一感を持って、今後のストーリーを作っていきたいって思ってますね。
nonoc:みんなの想いを形にするっていうのはすごくありがたいことだし、素敵なお仕事なんですけど……、なんというか、作詞が好きでよかったです(笑)。
ーー最後に、読者の方に向けて、ひと言メッセージを頂ければ!
nonoc:とにかく、今回の曲で伝えたかったことは、今読んでくれてるあなたにもあった瞬間かもしれないし、自分も同じ人間だから、日々の小さなことで悩んだりします。「ドアの向こう」ってタイトルを決めたときに、"向こう”って、内側でも外側でもあると思っていて。自分の大切な空間もすごく大事だけど、答えはドアの内側だけじゃなく、外にあると思っているので、私が”ドアの向こう”に行く理由になれたら、もちろん嬉しいけど、言わばドアのこちら側というか、皆さんの生活に寄り添える曲だとしても嬉しいし。今回、私の作詞で「こんな事を思ってるよ」って伝えられたと思うので、これからも期待してもらいたいです。


移籍後初、新たな門出を飾る彼女の思いが伝わるシングル
nonoc ディスコグラフィー
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LIVE INFORMATION
〈nonoc 5th anniversary SPECIAL LIVE『"N"ew Phase』〉
11月30日(土) @代官山SPACE ODD
17:30 / 18:00
PROFILE:nonoc
北海道出身のシンガー・アーティスト。7月12日生まれ。
高校在学中に楽曲投稿アプリで歌声を披露し始め、2018年、映画「Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow」イメージソングと主題歌のボーカルとして、2曲同時に抜擢される。
2019年には、1stシングル「KODO」(TVアニメ「魔法少女特殊戦あすか」OPテーマ)、2ndシングル「star*frost」(TVアニメ「彼方のアストラ(2019年マンガ大賞受賞作品)」OPテーマ)をリリース。
同年公開の映画「Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆」では主題歌「雪の果てに君の名を」を担当した。
2020年には3rdシングル「Memento」、2021年には4thシングル「Believe in you」がTVアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」2ndシーズンEDテーマとしてリリース。
2022年、TVアニメ「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」EDテーマ「Change」をリリース。
同年配信のスマートフォン向けゲーム「Re:ゼロから始める異世界生活 INFINITY」の主題歌「endless tears」を担当、10月29日には自身初となるワンマンライブを東京の代官山UNITにて行った。
2023年1月、TVアニメ「スパイ教室」のOPテーマ「灯火」をリリースし、北海道電力グループのCMソング「365日の明日」を担当するなど活動の幅を広げる。
8月2日、「スパイ教室」2nd season OPテーマ「楽園」をリリースした。
デビュー5周年を迎えた2024年2月よりfhánaの佐藤純一が代表を務める「NEW WORLD LINE株式会社」に所属し、活動拠点を生まれ育った北海道から東京に移す。
より精力的に活動を続けるnonocの新しい挑戦にご期待ください。
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