まずはこの声質を活かせるメロディーの曲を作りたいと思った
ーー「新生活」、「上京」というワードは、今回の曲にも関わってくると思うんですけど、nonocさんは2024年2月に上京されて、東京にはもう慣れましたか?
nonoc:もう秒で馴染みましたね(笑)。これ多分、”道民あるある"だと思うんですけど、わたし寒いのが本当に苦手なので。それがないだけで全然快適です。あとは今回の新曲のメッセージ的にもそうなんですけど、自分で1人暮らしを始めて、とにかく私は生活を彩るものが洋服とか、部屋のインテリアを考えたりとか、そういうのがめっちゃ楽しくて……やっぱり洋服ですね。服を買いに行くなら絶対に東京の方が良い!東京に出てきて良かったです。
ーーよく行く街はどこでしょう?
nonoc:古着を買いに高円寺へよく行きますね。両手に持ちきれなくなったら帰宅!みたいな(笑)。
佐藤:センスがすごく良いですよね。アー写は違うんですが、今日の撮影もそうですし、普段のライブの衣装とかも自分でコーディネートしていて。「佐藤さん、今日の洋服いくらだと思います?」とかクイズ出されるんですけど、「インナー300円で、アウターは3000円」って正解発表で驚く、みたいな(笑)。
ーー(笑)。ここからは具体的に楽曲の話を伺っていきます。レーベル〈NEW WORLD LINE〉は、タイアップなどにあえて縛られない表現をしたい、みたいなコンセプトをもってるじゃないですか。今回、その第1弾としてnonocさんの“ドアの向こう”がリリースされたわけですが、コンセプトも含め、どのような意図で制作された楽曲なのでしょうか。
佐藤:nonocがウチに入所してきたのが2月で、この曲をリリースしたのは10月の後半で、半年以上経ってるんですよね。要するに、入ってすぐ新曲を作ったわけじゃなくて、その半年間で色んな魅力も新たに発見して、まずはこの声質を活かせるメロディーの曲を作りたいと。楽曲の世界観とかテーマっていうのは一旦置いといて、まず声に合うメロの曲っていうのが大前提にあって、まあ”NEW WORLD LINE”ですし、広がっていく、始まっていくみたいなイメージの、フレッシュな曲を作ろうとは思って作りましたね。
ーー作詞はnonocさんですが、ご自身が拠点を移したタイミングでもあるからこそ、「新生活」というテーマで作詞を進められた?
nonoc:そうですね。曲を聴いてすぐにイメージできました。
佐藤:nonocって実は論理的に作詞が出来るんですよ。たまたまfhánaの作詞をやってもらってる林くんと作詞のやり取りをしてた時にnonocがいたので、急ぎで返さなくちゃいけなかったのもあり「これちょっとどう思います?」って聞いてみたらすごく論理的で、 感覚とかじゃなくて「ココにこういう言葉があるから、次はこうなった方がいい」とか組み立てて歌詞書く人なんだって発見もあって、しかもレスポンスが速いんですよ。
今後の方向性を考えた時に、作詞はアーティストとしての説得力を持たせる為にも必要だなって思っていて。最初は他の作詞家さんに書いてもらう曲もあると思っていたのですが、もう今後は全曲、自分で作詞をしてもらった方がいいだろうなって考えが変わっていきましたね。
nonoc:まだワンコーラスだけだったんですけど、佐藤さんの曲を受けて、仮歌を録ろうという話になりまして、その時は当然歌詞もないんで、「ラララ♪」で歌ってもらおうと思ったみたいんです。まあ、事前に曲を送ってもらってたわけじゃなかったので、その場で初めて聞いたら「あっ、歌詞書けそう」って思って。
佐藤:「そんなすぐ書けるの?」って思って。「集中すれば書けると思います」とか言ってるので、その場で2時間ぐらいガーッと集中して書いてて、僕もその間にフルコーラス作っちゃって、で、曲ができたぐらいの時に「書けました」って読んだら、もう完成版ともほぼほぼ同じの完成度で書き上げてる。
良い歌詞って、林くんや他の外部の作詞家さんもそうですけど、細かく譜割りの事を考えなくても、見た瞬間にスッと入ってくるというか、なぜかわかるんですよね。違和感があると、文字が別の方向を向いてるように感じるというか。元々持っていた曲のエネルギーの方向性と、言葉のエネルギーの方向性が、ちゃんと合ってる気がして。

ーー今の話を聞いてると、nonocさんが入ってきたことによって佐藤さんも逆に刺激を受けていて、アーティスト同士でシナジーが生まれている。きっと〈NEW WORLD LINE〉というレーベルでは、今後もそういう事が起こりうるんだなとワクワクしてきました。
nonoc:もちろん、なんでもパッと歌詞が書けるわけではなくて、見えてくる音と見えてこない音はあります。でもこの曲では元々自分のことを書きたいと思っていて、それを踏まえて、場所や匂いがフッと伝わってくる音だったのですぐ書けました。
ーーー他には何か意識された点はありますか?
nonoc:作詞をする中で、自分が大事にしたいことが"共感性”で。誰にでもあった瞬間とか時期とかタイミングを、特定せずに書きたいなっていう思いもあったし、難しい言葉を使いたくなかったですね。あとは自分のマインドセットの中にネガポジみたいな考えがあるんですけど、そういう自分のマインドセットもこの曲に載せられたかなって思います。
ーー聴いていて、自分も上京したての頃をすごく思い出しました。不安とワクワクが入り混じってるけど、やっぱりワクワクが勝つ感じというか。
nonoc:嬉しい。それが本当に自分の書きたかった事で、共感してもらいたかったから……すごく爽やかなサウンドなんだけど、歌詞聞いてるとちょっと寂しさもあったり、だけど今日はどうにか頑張ってみようかみたいな。結局、人間ってそういうモノじゃないですか(笑)。
