REVIEW #1 表現者の現在地を示す音楽的な「国」そのもの
Text by 西澤裕郎
本作『文明開化 -East West』について言葉にするのは簡単ではない。多様な音楽性を盛り込んだ作品自体は世に数多く存在し、それらは評論家や音楽ライターによって語られてきた。しかし、友成空の1stアルバム『文明開化 - East West』はそうした枠組みでは説明しきれない特異な魅力があるように感じられる。つまり、本作だけが持つ特殊性があるということだが、一体それが何なのか掴むのは容易ではない。
友成空の公式プロフィールによれば、彼は「幼い頃から『国』をつくりたいと考え、生きづらい世の中に避難できるもっとも身近な『世界』=『音楽』を制作することを決意し、小学4年生の頃から楽曲制作を独学」してきたという。作詞・作曲・編曲からアートワークに至るまで全て自ら手がけるマルチな才能の持ち主であり、本作で描かれているのはまさに彼自身が音楽で創造した「国」なのだろう。公式情報では、本作は「音楽で世界地図を描く」というコンセプトのもと、ジャンルや時代の境界線を軽やかに越えていく作品だとされている。
実際、和テイストのメロディやリズムを軸に据えつつ、ラテンやファンク、ジャズに民族音楽といった様々なスタイルを大胆に融合しており、レンジの広いボーカル表現力も相まって、ある種付け入る隙がないほどの完成度を誇っている。

「国」というキーワードで言えば、アルバムタイトル『文明開化』は象徴的だ。文明開化とは日本が急速に西洋文明を取り入れ、制度や風俗習慣が劇的に変化した時代現象のこと。友成空が音楽で築いた「国」も、まさに外部のカルチャーを次々と取り込み急速に変貌を遂げたことを示唆しているのだろう。
アルバム冒頭を飾る「ACTOR」からして独特だ。〈幕が上がる 拍手が鳴る 僕は何に成れますか?〉という印象的な一節で幕開けし、ミュージカル調のアレンジやワルツのリズムが差し込まれるその様は、まるでサーカスの開幕を思わせる華やかさがある。アルバム中盤に配置された「East West」では、和風のフレーズにテクノポップの要素、銅鑼の響き、サンバのビート、さらには歌舞伎など日本伝統芸能の掛け声まで盛り込まれ、それら雑多な音のネタがアーバンなフレーバーでまとめ上げられている。そして、最終曲「white out」では、〈どこかに消えていっただれも知らぬ場所へ わたしだけの国を探すと〉というフレーズで締めくくられる。自分だけの「国」を探し求めるというこの歌詞は、本作全体のテーマを端的に表しているように感じられる。
こうして通して聴いてみると、『文明開化 -East West』は、友成空という表現者の現在地を示す音楽的な「国」そのものであるといえる。あらゆる国の音楽ジャンルを、現在過去という軸をも自在に行き来しながら音楽で組み立てていく。この情報に溢れる時代に、ここまで自分なりの融合で他者に簡単に分解されないような音楽作品を作り上げたことに改めて驚かされる。この先もきっと形を変え、友成空にとっての最新系を示していくことだろう。































































































































































































































































































































































