僕の書く歌詞はほとんど事実に基づいてます
──カップリング曲「スプリングルズ・サワークリーム」は一転して楽しいパーティーロック調です。こちらの曲にはどんな思いを込めてますか?
伊東 : これも1番と2番では描いているものが違ってて。1番は、誰しもが持ってる黒歴史をテーマに、フラれて傷ついた痛い思いを描いてみようと思って、好きな子にフラれちゃった高校時代の友人のことを歌ってます。2番は、結婚したとあるミュージシャンの友達のことを歌ってます。彼女と熱海旅行に行って、2人で海を見てたら夕日が綺麗過ぎて勢いで結婚しようって言っちゃったらしいんですけど、その素敵すぎるエピソードを歌詞に盛り込んだりして。
──特定のエピソードから着想を得ているんですね。
伊東 : 僕の書く歌詞はほとんど事実に基づいてますね。一部、世の中の真理みたいなことを歌っている時だけは想像だったりしますけど、基本的には自分が経験してきたものを参考にして歌詞にしています。
──あまりそうした印象のない普遍性のある言葉選びですよね。
伊東 : うまくやってるんですよ(笑)。
──もう一方の「TEL-L」はタナカ零さんによる楽曲提供です。非常に難解な楽曲ですが、歌ってみていかがでしたか?
伊東 : この曲は久しぶりにアレンジメントから歌詞からメロディから全部関わらないでレコーディングした作品だったんですけど、確認とかなく、はいできましたと完成品を渡されて「えっこれ?」と驚いたのを覚えてます。でも結果的にすごく気に入ってますね。一クリエイションとして非常に気に入ってる作品です。タナカ零さんには直接お会いしたことがないのですが、クリエイターとして作品から滲み出るものが、なんとなく僕と同じ匂いがするんです。僕と同じようにキラキラした学生時代を送ってない感じって言うんですかね。いわゆる青春を謳歌してない感じがする。この方には何か特別な”コドク”感を感じますね。
──“コドク”感?
伊東 : “コドク”と言っても“孤独”ではなく、陰陽師の世界で言う“蠱毒”の方なんですけど。戦闘能力のある虫を一つの壺に入れて、その中で1ヶ月戦わせるんです。それで最後に残った最強の1匹を人に飲ませるのが“蠱毒”の儀式なんですけど、この人はその1匹です。
──最後に残る最強のクリエイターだと(笑)。
伊東 : 完全に偏見ですが、そういう感じの人なんじゃないかなと予想してます。
──人の作った曲を歌う時はいつもと何か差はありますか?
伊東 : 年々変わらない度が増してますね。練習をしまくって歌うのは不正解だと思っていて、アートって人間がコントロールできるものじゃないと思うんです。どんな曲を与えられようが、ただその場にいて歌うのが正解なんじゃないかなと。その楽曲のイデアが勝手に自分の体に乗り移ってきて、自分はオートメーションで歌っているような、そういう感覚でいつも歌ってます。なので、自分で作った曲だろうが人が作った曲だろうが、意識的に特別な違いはないですね。
──伊東さんは音楽活動の他にもラジオや執筆などされていて、活動の幅が他のアーティストよりも広い印象です。今後も色々な分野に活動の広げていくつもりですか?
伊東 : もっと広げたいですね。アートって、演技にしろ音楽にしろ文学にしろ、手段が違うだけで何かを表現するという点では同じことだと思うんです。例えば、声優って声を使って何かを表現することだと思うんですけど、それって僕がやってきた音楽活動とすごく近くて。実は声優を少しやったことがあるんですけどめちゃくちゃ楽しいんです。ラジオはアートとは違いますけど、小学校でイジメられた経験がある僕は、人を観察したり、人の気持ちを過剰に読み取る習性が出来上がってしまってて、その結果人を楽しませることが好きになったんです。なので、ラジオで自分が喋ったり、体験したエピソードを話すことで人を楽しませるということも楽しくて。楽しいことはどんどんやった方がいいと思って生きてきたので、今後も活動の幅は広げていきたいと思ってます。
編集: 西田健
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伊東歌詞太郎 ディスコグラフィー
PROFILE:伊東歌詞太郎
ネット音楽のカバーで活動を開始。その力強い歌声はネットを伝ってユーザーの心に響き、現在の動画総再生数は 8000万回を超えている。2014年にメジャーデビュー。以降「一意専心」「二律背反」「二天一流」のアルバム3 枚をリリースし、3作連続でオリコンランキングTOP10入りを継続中。また自身の活動と並行して他アーティスト への楽曲提供やプロデュースワークも行っている。 LIVE活動も精力的に展開しており2018年は路上でのフリーライブで2万人以上を動員、2019年は豊洲PITをファ イナル公演とする最大規模の全国ツアーを行った。また同年には中国の北京・上海・成都・広州の4か所でワンマ ンLIVEを成功させ、アジア圏を中心とした海外でも人気は高い。2018年、初の小説「家庭教室」が6万部を突破、 2020年には初のエッセイ「僕たちに似合う世界」を上梓。加えてアニソンの歌唱、ラジオ、ネット番組のパーソナリティーから声優業までマルチな才能を展開する注目のシンガーソングライター。 2021年7月、ビクターエンタテインメント コネクストーンから再メジャーデビュー。 メディアには顔出ししておらず、狐のお面がトレードマーク。
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