新しさもありながらガンダムとしての軸も外さないというバランス
──サウンドトラックでフル尺を聴けたことで印象的だったのが「次回予告」だったんですね。本編では16秒のバージョンのものが繰り返し使われて多くの人の耳に残っていると思うんですが、実はこれがロックバンドの曲だったという。これはお二人がバンドマンであることの答え合わせのようなところも感じました。この曲についてはどうでしょうか?
蓮尾:バンド感は確かにありますね。照井くんの曲に僕が楽器で参加しているのはあの曲だけだと思います。あの曲は照井くんからピアノを弾いてほしいと言われてデータをもらい、家で弾いて送ったものを使っています。
照井:本当はもう少しロックバンドっぽい曲を数曲入れる予定でした。ただ、結局合わなかったり他の曲の方が良かったりして、どんどん脱落していった中で、あれが「次回予告」として残ったという感じです。自分としては、マチュやニャアンやシュウジの年代をイメージして、高校生ぐらいのキャラクターがバンドで演奏してほしい曲というイメージでした。勢いさえあれば何でも良いという曲だったんですね。元は「次回予告」として作ったわけではなかったんですが、制作サイドから「これが予告として良いんじゃないか」と言われて。想定外の使われ方でしたが、あれが本編の後に流れるのがスタジオカラーっぽいなと思いました。納得感がありましたね。
──スタジオカラーっぽいと感じたというのは?
照井:本編とのギャップ感ですね。本編が少し陰鬱なトーンだとしても、予告ではいきなりテンションの違う明るい曲がくるという。そこがスタジオカラーっぽいと思いました。

──お二人それぞれ、印象的だった曲や苦労した曲、思い入れのある曲は?
蓮尾:僕が苦労したのは「I_018」という曲です。そこから3曲くらいに派生しました。DISC 1のM20「夜間散歩 (I_018A)」とDISC 2のM4「毒薬の手帖 (I_018_B)」、そして特典CDのM3「シュウジ (I_018_Ver.2)」です。最初は「シュウジ」という名前で何バージョンか作りましたが、なかなかハマらなかったので、いろいろ派生して各シーンに使っていただくことになりました。シュウジのグラフィティの感じからインスパイアされて、そこから90年代から2000年代初頭ぐらいのアブストラクト・ヒップホップをイメージしていて。一定のビートの上に浮遊感ある音色とリズムが流れているものを作っていました。どれも好きなんですが、想定したシーンにハマらなかったので、なかなか苦労しました。
照井:全体的に苦労しましたが、パッと思い浮かぶのはDISC 1のM5「目覚めたい魂たち (I_004)」です。作品を象徴する一つのテーマっぽく作りたいと思っていたんですけれど、作品の特性として、話数によって場面が全然変わっていくので、何回も繰り返しかかって印象に残る曲が作りづらいというのがあって。でも数回しか流れなくてもインパクトがあり、新しさもありながらガンダムとしての軸も外さないというバランスを狙いたいと思って作った曲だったので、考えすぎて難しかったです。あと印象に残っている曲はDISC 2のM12「ゼクノヴァ (I_056)」です。この曲はKOCHOさんにコーラスで歌っていただいたんですけれど、これは他の曲よりも自由に作っていて。イオマグヌッソが起動した時の絶望感というか、人間が制御できないエネルギーを目の当たりにした時の異様な高揚感、畏怖の気持ちが感じ混じり合うようなものを表現しようと思って。そこは僕もすごく好きなシーンだったので、気合を入れて作りたいという思いがありました。
蓮尾:僕の気に入っている曲で言うと、DISC 1のM11「残り香 (I_021)」です。この曲はララァのテーマになるような曲になればというところから作った曲でした。最初に当てられたのはシイコ(・スガイ)さんの回想シーンでしたが、最終的に9話のララァのシーンにも当たりました。自分の中では、こういうメランコリックな感じの曲はあまり作ってこなかったので、それがそういうシーンにちゃんと流れているのを見て嬉しかった。思い入れのある曲です。徳澤青弦さんのチェロのソロを入れていただいたんですけれど、「こういう曲が(プレイヤーとして)一番気を使う」と仰ってました(笑)。

──サウンドトラックの聴きどころについてはどうでしょうか? 映像を思い浮かべたり、BGM的に聴いたり、いろんなリスニングができると思いますが、どんなふうに楽しんでもらいたいと思いますか?
照井:観ていた視聴者の方も「この曲、どこで使われていたっけ?」と感じることが多いと思うんです。話が濃密で、怒涛の展開が続くし、同じ曲が繰り返し使われているわけではないので。毎回かかってテンションが上がる曲というのは少ない構造のアニメになっていると思います。ただ、サウンドトラックは当然繰り返し聞いていただけるので、自分の中で反芻して、「こういう気分の時にはこの曲が良い」とか、お気に入りのキャラクターのシーンに思いを馳せながら聴いていただいてもいいかなと思います。サウンドトラックを繰り返し聴くことで、また作品を見たくなってもらえたら嬉しいです。
蓮尾:曲順も本編で出てきた順になっているし、本編ではイントロ部分しか流れていなかった曲もサントラではフル尺で収録されているんですね。1曲でシーンを貫くような曲にしようとして作ったけれど、結局は冒頭部分しか流れていないものもあったりするので、そういうのも楽しんでいただければと思います。
照井:あとは、本編で使われていない曲も初回限定盤特典として入っています。初回限定盤でなくても、先ほど話した「次回予告」のフル尺や、「夏の現在地」の歌のフルサイズなど、本編では使われなかった曲もサウンドトラックには入っています。そこも聴きどころだと思います。
──最後に、お二人の今後のビジョンについて訊かせてください。作家として、アーティストとしてやりたいことや進んでいきたい道について。いかがでしょうか。
照井:僕は最近、劇伴であったり、依頼していただいて歌モノを提供したりと、作家活動が増えていて。でもずっとくすぶっている思いとしては、自分が根本から作品を作るアーティスト活動をやりたいというのがあるんです。元々それをやりたくて音楽をやっているので。もちろん今回のような仕事も本当にありがたいですし、成長にもつながるので今後も頑張っていきたいという気持ちはあった上でですが。ハイスイノナサというバンドをやっていた時は、本当に好き放題やっていたのと色々と未熟な部分が多く、あまりにも音楽が伝わらなかったことの反省があったんです。でも、そこからsora tob sakanaや作家活動を経て、音楽面でも多少は成長できているのではないかと思っているので。その上で自分のアーティスト活動をやった時に、どんなものができるのか。まずはそれを形にして、その上でどういう気持ちになるのかを見てみたいという感じです。
蓮尾:照井くんは自分のソロアーティストとしての作品をやってみたいと前から言っているんですけれど、僕はメインバンドのsiraphをもっと盛り上げていきたいなと思います。siraphは来年で10周年になりますし、やはりバンドが好きなので。それと、今回この作品に参加させてもらったのは、とても光栄なことだと思っているので、またこういう機会をいただければ、職人的な仕事の部分についてもぜひやっていきたいと思っています。
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『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』とは?

■あらすじ
宇宙に浮かぶスペース・コロニーで平穏に暮らしていた女子高生アマテ・ユズリハは、少女ニャアンと出会ったことで、非合法なモビルスーツ決闘競技《クランバトル》に巻き込まれる。
エントリーネーム《マチュ》を名乗るアマテは、 GQuuuuuuX(ジークアクス)を駆り、苛烈なバトルの日々に身を投じていく。
同じ頃、宇宙軍と警察の双方から追われていた正体不明のモビルスーツ《ガンダム》と、そのパイロットの少年シュウジが彼女の前に姿を現す。
そして、世界は新たな時代を迎えようとしていた。
■キャスト
アマテ・ユズリハ(マチュ):黒沢ともよ
ニャアン:石川由依
シュウジ・イトウ:土屋神葉
シャリア・ブル:川田紳司
シャア・アズナブル:新 祐樹
エグザベ・オリベ:山下誠一郎
コモリ・ハーコート:藤田 茜
アンキー:伊瀬茉莉也
ジェジー:徳本恭敏
ナブ:千葉翔也
ケーン:永野由祐
ハロ:釘宮理恵
ポメラニアン:越後屋コースケ
デニム:後藤光祐
ドレン:武田太一
■スタッフ
監督:鶴巻和哉
シリーズ構成:榎戸洋司
キャラクターデザイン:竹
メカニカルデザイン:山下いくと
アニメーションキャラクターデザイン キャラクター総作画監督:池田由美 小堀史絵
アニメーションメカニカルデザイン メカニカル総作画監督:金 世俊
音楽:照井順政 蓮尾理之
制作:スタジオカラー サンライズ
■作品公式サイト
機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト
https://www.gundam.info/feature/gquuuuuux/