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LIVE REPORT : RAY ONE-MAN SHOW〈GROOVE! GROOVE! GROOVE!〉

取材&文 : 飯田仁一郎
撮影 : endo rika、ヤギタツノリ
“三台のドラム”を前に高揚するオーディエンス
2025年9月21日(日)、極北を目指すオルタナティヴ・アイドル、RAYが恵比寿LIQUIDROOMにてワンマンショウ「GROOVE! GROOVE! GROOVE!」を開催した。最大の目玉は、なんといっても“三台のドラム”それによってRAYの音楽とパフォーマンスがどう変貌するのか… 大きな期待が寄せられていた。
事前のインタビューで、内山結愛は「初めて三台のドラムの音を聴いたとき、涙が出た」と語り、琴山しずくも「外ではなく、内側にえぐるように響いてきた」と表現していた。さらに、新作『White』の楽曲群がどう鳴るのかという期待も高まっていた。新鋭バンドのひとひらや雪国、さらにはシューゲイザーの伝説的存在RIDEのMark Gardenerが楽曲を提供し、すでに傑作との呼び声の高いアルバムだけに、期待は高鳴るばかりだ。

轟音の幕開け
会場はほぼソールドアウト。至る所から登場を待ち望む歓声が聞こえてくる。ステージ上には、三台のドラムが並ぶ。上手に雨のパレードの大澤実音穂、中央にWOZNIAKの星優太、下手にThe Cabsの中村一太。冒頭から三者三様のビートが乱打され、空気を震わせる。そして三人がドラムを激しく打ち鳴らした途端メンバーが登場し、3rdアルバム『Camellia』の代表曲「秘密がいたいよ」へ突入。会場を覆うギターの轟音が、RAYの世界へと観客を引きずり込む。あまりの迫力に、いきなり泣きそうになる。続いて披露されたのは、ニューアルバム『White』からの祝祭的ナンバー「アップサイドダウン」。気迫と楽しさが同居したメンバーの表情が印象的で、会場全体が爽快なエネルギーに包まれる。




三台のドラムとダンスの共鳴
「ドラム三台と、私たち、そして皆さんでグルーヴを奏でよう」と月海まおが投げかけ、ライヴ定番の「17」、ドラムのバスドラが巨大な音像の渦を生み出した「ディス・イズ・ノット・ア・ラブソング」へ。一糸乱れぬ三台のビートとRAY特有の激しいダンスが渾然一体となり、圧倒的な躍動感を生み出す。さらに、吉田一郎不可触世界が手掛けた「TEST」、轟音の中に夢幻的な美しさを秘めたポップソング「逆光」、変拍子が炸裂した「読書日記」へと続く。各ドラマーが同じフレーズをなぞるのではなく、シンバルや太鼓を巧みに使い分けながら互いに響きを補完し合う。その“重ねる”のではなく“掛け合う”ことで生まれたグルーヴこそが、本公演のコンセプト「GROOVE! GROOVE! GROOVE!」を体現する圧巻の時間だった。


息つく間もない展開
星優太のエレドラが炸裂し、さらに音量が加速したライブの定番曲「Blue Monday」、4つ打ちがひたすら気持ちいいサマー・アンセム「Lightwave」と畳み掛け、「やっほー。RAYがリキッドルームにきたー!」と月海まおの短いシャウトと共に、初期代表曲「バタフライエフェクト」へ。休憩なしのノンストップ展開は、観客に息もつかせない。ドラマー紹介のタイミングですらドラムは鳴り続け、肉体的極限を超えて挑戦し続ける姿に圧倒される。そのまま「フロンティア」へ。ミドルテンポの楽曲を三台のドラムでじっくり丁寧に聴かせたグルーヴは、観客をダンスにいざない、リキッドルームをクラブに変えた。


『White』の核心へ
後半は4thアルバム『White』から「See ya!」。長尺の展開から立ち上がる多幸感は、いまのRAYが他のアイドルと一線を画す証。前回のワンマン・クアトロでは参加することができなかった琴山しずくが必死に踊り続ける姿も相成り、紬実詩のシャウトは、会場を涙と歓喜にいざない、続く「しづかの海」では轟音が美しさを極限まで昇華する。
そして驚きの瞬間が訪れる。キダ モティフォ(tricot)と藤谷真吾(fumi/1inamillion/SLEEPLESS)をギターに迎え、4thアルバム『White』から「plasma」を初披露。爆裂するギターフレーズと変拍子のドラム、そして激しいダンスの共演は、永遠に続くかのように錯覚するほど。リズムの頭がどこにあるのかもわからず、ひたすらその迫力に圧倒され、祝祭的な「See ya!」とは対極の“悪魔的多幸感”をもたらした。そしてラストは雪国・京英一が手掛けた「天体」。壮大なスケールで、この夜の旅路はあまりにも美しく幕を閉じたのだった。



終わりなき挑戦
一体我々は何を目撃したのだろうか…?
三台のドラムが鳴り響き続け、メンバーは歌い踊り続ける。MCはほぼなく、アンコールもない。ゲストも「plasma」一曲のみ。それでも十分に抑揚に溢れていたし、退屈になる瞬間は一度もなかった。なぜなら、本公演がドラム3台という企画性に留まっていなかったからである。ギターが爆音で鳴り響くからこそ、三台のドラムの圧倒的なパワーが必要になる。しかし、それだけでは轟音に埋もれてしまうはずのステージを、メンバーは日々の鍛錬で培った表現力で真正面から受け止め、圧倒的な存在感で対峙していた。ギター、ドラム、そして彼女たち自身。三位一体が揃って初めて成立したこのライブは、まさに一つの音楽作品として完成されていたのだ。
メンバーが去り、BGMが流れ、客電が灯る。プロデューサーの大黒が特典会の案内を始めた。そのアナウンスが終わるや否や、客席から万雷の拍手が巻き起こる。それは、かつてない凄まじいライブと、絶え間ない挑戦を続ける大黒と、挑戦を支え続けるチームへの、観客からの素直な敬意と賞賛の証だった。
このRAYのワンマンライブは、彼女たち自身、そして“アイドル”という存在の可能性を、再び切り拓いてみせた。アイドルらしい「可愛さ」や「聴きやすさ」から遠ざかりながらも、日々の練習と探求を重ね、音楽を愛し、自らの信じる道を突き進む。その姿はひたすらにかっこよく、オルタナティヴの本質そのものだ。巨大アイドルフェスに呼ばれなくても構わない。
RAYは、世界で最もかっこいいオルタナティヴアイドルなのだから。


RAY ONE-MAN SHOW〈GROOVE! GROOVE! GROOVE!〉
2025年9月21日(日)
恵比寿LIQUIDROOM
出演:RAY、星優太(WOZNIAK)、中村一太(the cabs)、大澤実音穂(雨のパレード)、キダ モティフォ(tricot)、藤谷真吾(fumi/1inamillion/SLEEPLESS)
セットリスト
1.秘密がいたいよ
2.アップサイドダウン
3.17
4.ディス・イズ・ノット・ア・ラブソング
5.TEST
6.逆光
7.読書日記
8.Blue Monday
9.Lightwave
10.バタフライエフェクト
11.フロンティア
12.See ya!
13.しづかの海
14.plasma
15.天体
新たな地平を切り拓いた、RAYの最新アルバム
RAY インタビュー
RAY ディスコグラフィー
PROFILE:RAY

「極北を目指すオルタナティヴアイドル」をキャッチコピーに活動する女性アイドルグループ。シューゲイザー、オルタナ、IDM、テクノなどを縦横無尽に融合した楽曲と、ぶっ倒れるまで踊るフィジカルなライブパフォーマンスでライブアイドル界で特異な存在感を放っている。
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