複雑なものを複雑に聴かせない
──レコーディングはGOK SOUND(吉祥寺にあるアナログ録音にこだわった老舗スタジオ)で行われましたが、いかがでした?
カイタ : 今回はしっかり演奏もつめてきたから、1テイク目を採用してる曲もけっこうあるかな。
440 : エンジニアの近藤さんは何回もやり直すの嫌がる人なんで。近藤さんをいかにノリノリにさせるかが大事っていう。
カイタ : そうね。ノッてきたら近藤さんから無茶振りがあるもんね。「ここにキーボード入れよう。明日までに考えてきて」みたいな(笑)。それが面白かった。
440 : ある意味プロデュースしてもらった感じです。
──GOKには機材も豊富にありますもんね。
カイタ : いろいろ使ったな!アコギ3本重ねたりもしたし、ベースも歌もダブリングしたし。
440 : ドラム類もほぼなんでもありますからね。いろいろ使わせてもらいました。
──さっき語ってもらったように、worst tasteというバンドはいろいろな変遷を辿ってきたわけですけど、このアルバムと前作との違いは意識しました?
カイタ : やっぱりドラムが変わったことは大きいと思う。グルーヴが全然違うよね。前のアルバムの突撃してるような感じもよかったけど、今回は踊れるものを作りたくて。それは440くんになって実現できたことだと思う。
440 : 最初に渡されるデモだと、手足4本じゃ足りないようなドラムになってることもあるんで、それを自分なりアレンジする作業があるんだけど、なるべく意図を汲み取って「今のworst taste」のグルーヴにするっていうことを考えてますね。「ウルトラパワー」のカセットを出した後からは特に。8ビートが多いから、3連を入れてハネるノリを出したり。
コジマ : 「これがおれたちのスタイルだから変わらない!」って思ってるわけでもないし、アルバムごとに絶対に違うことをしたいわけでもないんだよね。今までやってきたこともあるんで。例えば、前だったらここに変なブレイクを入れて一回曲をぶっ壊してたけど、そういうのはやめとこう、みたいな。そういう変わり方ですよね。でも、やっぱり歌も含めて自分たちの好きな感じがあるので、それは優先して。
──2001年結成で20年以上のキャリアがあるバンドだし、もちろん「worst tasteらしさ」はあって、今作にもそれはめちゃくちゃ感じるんですよ。でも、10年前とはバンドシーンも変わってて、以前は「複雑であれば複雑であるほどかっこいい」という時期もあったじゃないですか。それが変化して、だんだんシンプルになっていった。その流れにも呼応してるのかなと。
コジマ : まあ、『おなか痛い』(2006年発表の1stミニアルバム)っていう音源があって。
カイタ : あー、あれはやりすぎだよ(笑)。
──まさに当時のオルタナティブシーンの雰囲気をパッケージしたようなアルバムですよね(笑)。
コジマ : その次の『ダンスで決めて!』(2009年)からはもうシンプルを志向してたから、時代の流れを意識したわけじゃないんですよね。
カイタ : そもそも難しいの嫌いだもん(笑)。プログレとかも好きじゃないから。
──今回は言葉数が多いのも特徴かなと思うんですが、意識しましたか?
カイタ : あんまりしてないけど、確かに歌詞は増えたかもしれない。
──「奪還コントロール」が顕著ですけど、全体的に硬質なワードが並んでいて。情景描写や心情吐露ではない、というのも逆に最近では珍しいのかなと思いました。
カイタ : 最近の歌詞の傾向とか全然わかんないんで(笑)。
コジマ : やっぱり、「カイタから出てきた歌と言葉にどう合わせるか」っていうのがworst tasteの曲の作り方なんですよね。ベースを作るときもそれが根本になってる。
440 : ドラムも、言葉が持ってるリズムとバッティングしないように16分音符一つずらしたりとか。そういう部分をかなり追求したんで、それが結果的に面白くなってると思います。
カイタ : 我々のビートは複雑っちゃ複雑なんですけど、でも一番踊れるアルバムになりましたね。
──複雑さを感じさせないアレンジにしたと。
カイタ : その作業は相当がんばった。
440 : ほんと、ノイローゼになるかと思った。コジマにメールしたもんね。
コジマ : 「もう、どうしたらいいかわかんない」って(笑)。