悲しい楽曲を悲しいまま歌ってしまうと、なかなか届かない
──実体験から歌詞を書かれることも多いんですか?
安月名:そうですね。最近、登山が趣味なんですけど、「Light our way」の歌詞は富士山に登ったときに見た星空や、頂上がどうなっているか分からないのに登っていく感覚とか、「見たい景色があるから登るんだ」という気持ちを、Aメロや2番の歌詞に込めています。やっぱり外に出ていろんな経験をしないと歌詞って生まれないなと感じました。
──なるほど! 登山にはよく行かれるんですか?
安月名:定期的に行っていますね。「Light our way」のMVは登山をしながら撮影しました。スタッフの皆さんも巻き込んで、一緒に登ってきました(笑)。やっぱりどうしてもこの曲は山で撮りたいというイメージがあって。Aメロが「頂上目指した」から始まるので、「やっぱり登山だな」と思って撮影しました。

──そもそも登山が趣味になったきっかけは何だったんですか?
安月名:最初は、今の自分がすごく嫌で、そこから抜け出したくて登り始めたんです。あとは歌詞が出てこなくて(笑)。気持ちをリフレッシュさせるために、ずっと一人で高尾山ばかり登っていました。
──最初はソロ登山だったんですね。
安月名:そうなんです。でも登山のことをSNSでつぶやいていたら、アーティスト仲間や友達が「一緒に登りたい」と言ってくれるようになって。そこから一緒に行くようになりました。今は一人で登ることはあまりないですね。そうやって山仲間が増えていくことが嬉しいので、一歩踏み出すことって大事だなって思いました。
──そういった経験が楽曲に反映されているんですね。
安月名:そうなんです。「雨のち虹」は宮古島に行ったときの天候から生まれた曲ですし、「シルバーフラワールド」は、自分が突発性難聴になったときに東北へ旅行した経験から生まれた楽曲です。他にも「GRASSHOPPER」はアーティストの友達が飲んでいたカクテルの名前なんです。そうやって行った場所や経験が、一つひとつ刺激になっていて、「書きたいな」と自然に思うことが多いですね。
今回ライブ会場限定の初回限定盤のCDで、セルフライナーノーツも書かせていただきました。今まではMCや配信で話すことはあったんですけど、こうして一冊の本みたいにまとめたのは初めてでした。各楽曲の制作の過程や思いもたくさん書いたので、ぜひ読んでほしいです。
──アルバムの最後を飾る「Born to Change」はすでにライブでも披露されていましたよね。
安月名:はい。昨年2025年の11月に〈Born to Change〉というタイトルのライブを開催して、そのアンコールで初披露しました。前日に完成したばかりで、弾き語りでの披露だったんですけど、そこからアレンジが加わってパワーアップしてアルバムに収録されています。『Emoria』というタイトルに一番合っている楽曲だと思います。感情に寄り添うという意味でも象徴的な曲ですね。
──どんな思いを込めて書いた楽曲なんでしょうか?
安月名:喜怒哀楽の中でも、「怒り」と「悲しみ」に向き合った楽曲です。これまであまりその感情にフォーカスしたことがなくて、最初は歌詞に入れるのも少し迷っていたんです。でも自分の曲ってよく考えたら悲しみや苦しさのエネルギーから生まれていることが多いなと気づいて。それを「悪くない」と思えたときに「自分、変われたな」と感じたんです。そこから「Born to Change」というテーマが生まれました。
──制作のアプローチも普段とは少し違ったんですか?
安月名:普段はメロディーから作ることが多いんですけど、この曲は歌詞から書いた珍しい曲です。最初はBメロなどに書きたいことを全部詰め込んで、そこから整理していきました。アルバムの中でも一番メッセージ性の強い曲になったと思います。初お披露目から時を経て、みんなと一緒に成長していく楽曲になったのが、すごくエモいなと感じています。『Emoria』だけに(笑)。
──他にも様々な曲が収録されていますが、今回のアルバムで一番最初に書いた古い曲はどの曲ですか?
安月名:曲として一番最初に生まれたのは「Forever」ですね。SSWになろうと決めて、最初に作った曲です。学生の頃に作った曲なので、もう10年以上前になります。それを今も歌い続けられているのはすごく誇りですし、「歌い続けてきてよかったな」と思います。
──「Forever」はメロディーもすごく印象的ですよね。
安月名:そこは狙って作っています。サビはキャッチーに開けるようにしたいとか、Aメロではギターと歌の掛け合いをやりたいとか、間奏ではギターをしっかり見せたいとか、さらに変拍子も入れてみたりとか、「やりたいこと全部やろう」という勢いで作った曲なんです。今振り返ると、学生時代のエネルギーがすごいなと思います。
──アルバムには「喜怒哀楽」の感情が詰まっていますが、「ないものねだらせたもん勝ち」の「怒り」の表現も印象的でした。
安月名:実はこの曲は自分に対する怒りでもあるんです。ないものばかり求めてしまう自分に対して「それをさらけ出さないでどうするんだよ」という気持ちもあって。自分と戦っている怒りの感情ですね。
──外に向けた怒りではなく、自分自身への感情なんですね。
安月名:そうですね。「あなたが悪い」みたいな誰かに向けての曲はことは、あまり書いていないなと振り返って思いました。
──ただそんな怒りを描いた「ないものねだらせたもん勝ち」もライブで聴くと、ポジティブなエネルギーを感じます。
安月名:そうなんです。コンプレックスも含めて、「全部さらけ出したい」という気持ちがあって。もともとは怒りの感情で書いた曲でも、ライブでやるとすごく楽しいものになる。その変化はすごく大事にしています。
──悲しみの表現についても同じような考え方ですか?
安月名:そうですね。悲しい楽曲を悲しいまま歌ってしまうと、なかなか届かない気がしていて。だから悲しみがベースにある曲でも、前向きなエネルギーに変えて歌っています。怒りも同じで、みんなと一緒にエネルギーにしていく感覚ですね。自分の経験をもとに、最終的には「応援歌」として届けたいという気持ちがあるんだと思います。














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