cero 『e o』
もっぱら3人で多重録音で作り上げたという本作のサウンドを、ライヴではどう再現──あるいは再構築?──したのだろうか。レイヤーはうずたかく積み重なり(それでも捨てた音はそうとうあったはず)、混淆と折衷はさらに深化して互いに溶け合い、音楽性のトレースは困難になった。リズムが際立つのは “Fdf” ぐらい。明快な物語を紡がずイメージの遠近法で遊ぶような歌詞や、バンド名から子音を抜いたアルバム・タイトルも、 “Angelus Novus” という曲名からの連想ではないが、抽象を極めて新たな具体を手にしたような印象をもたらす。その具体は僕のなかでは髙城晶平の歌の官能性と関連しているが、仮説を立てるのはもうちょっと聴き込んでからにしよう。孤高の響きすらある一大到達点であり、同時に新生の第一歩にも聞こえる。
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パソコン音楽クラブ 『FINE LINE』
ずっと映像喚起的な面白いアルバムを作ってきた人たちだが、「宇宙人のいる生活」がテーマだというこの4作めには過去一ポップでダンサブルな感触がある。ゲストの顔ぶれが華やかさを増したことも関係しているのかもしれない。 “PUMP!” のchelmicoにしろ “It's(Not)Ordinary” のMICOにしろ “KICK&GO” の林青空にしろ “Day After Day” の高橋芽以(LAUSBUB)にしろ、常日ごろから主役を張っている「スター」らしい存在感満点の歌声ばかりだ。いきおい生じる攪乱というか幅を積極的に取り込み、スキットやナレーションを随所に配しながら開かれたストーリーを作っていくのは並大抵の想像力ではない。さりげなく重石になっているのが二人が歌った “Terminal” なのもいい。楚々としながら確実に心弾ませてくれる楽しさに好感あるのみ。
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ちゃんみな 『Naked』
3か国を飛び回り、Ryosuke "Dr. R" Sakai、JIGG、RAUDI、RICHBOY HARDY、Tommy Brown、Grant Michaelsら日韓米の多数のプロデューサーたちとともに作り上げた4thアルバムは、サウンドはトラップありロックありポップあり、歌詞は3か国語を、ヴォーカルは歌とラップを自在に往来するコスモポリタン・ハイブリッド・ポップ絵巻。ASH ISLANDを迎えた全編韓国語の “Don't go” 、Awichと共演した “美人” のリミックス、幼少期の衝撃的な出来事を歌った “RED” など注目作がひしめくが、旅ソング “Wake up call” のユニークな言葉の響かせ方や、ホテルの部屋でいとこのヴァイオリニストと録ったという “444” のプレイフルな風情にもグッとくる。裸 (Naked) がこの内容って素敵じゃない?
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