朝倉さや 『大開幕』
自分の郷里の民謡をアップデートした “宮津節 (Future Trax)” に惹かれたのと、昨年11月に見た花*花との共演ライヴの記憶が新しかったという個人的な理由で聴いたが、思った以上に充実している。昨年9月に亡くなった恩師・solayaの跡を継いだ福田貴史のアレンジはサウンドの折衷性と温かいユーモアを継承していて、ソウルフルな曲調にこぶしが映える朝倉の持ち味を生かした冒頭の “KADODE” を筆頭に、兄・福田大輔の尺八をフィーチャーした先述の “宮津節” ならびに曲名通りの大人の子守唄 “おやすみ -neroha-” と、どの曲もごきげん。なかでもsolayaの遺作になってしまった前作『Life Song』の収録曲をアップリフティングに仕立て直した “ニワトリ (Future Trax)” には、元気だからこそ胸に染みるものがある。
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hirano taichi 『via』
2011年、Twitterで脱原発デモを呼びかけるTwitNoNukesの主宰者として、僕は平野太一を知った。面識はいまだにないが、デモで何度も姿を見かけた。彼が監督したドキュメンタリー映画『STANDARD』の劇伴や、音楽活動を手伝うThe Gospel Renegadeこと野間易通が送ってくれた “free bird” に触れて優れたミュージシャンであることを知り、デモの場で耳にした彼のスピーチや叫びの(変な言い方かもしれないが)心地よさは、豊かな音楽性に裏打ちされていたと悟った。浮遊するようなメロディ、アコースティックとエレクトロニックの音色の配分、抽象的で孤独な感触のある歌詞と歌唱はフランク・オーシャンやミゲルらにも通じる。 “sun beams” や “blinding lights” 、それに “お金で寝る身体” などで聴けるファルセットがとても魅力的。
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早見沙織 『白と花束』
前作『JUNCTION』からミニ・アルバム2枚をはさんで4年半ぶりの3rdアルバム。Tomgggが提供したベッドルーム・ファンク “Ordinary” 、尖った電子音が駆け巡るいよわの “残滓” 、清竜人のキュートなポップ・ソング “ここでここで” 、TK(凛として時雨)による起伏に富んだバラード “Awake” など非常に幅のある曲調を、温かみと透明感を絶妙のバランスで併せ持った早見の歌声がさまざまな表情を見せながら統一していくさまが見事だ。諭吉佳作/menの “エメラルド” ではプレイフルなメロディを悠々と乗りこなす歌唱に圧倒される。作家たちの個性が舞い踊るような華やかなアルバムのなかで “Abyss” “フロレセンス” “はじまりの歌” の自作曲が宝物のような輝きを放っていて、自作・他作併録型のアルバムとして完璧に近い。
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