ハルカトミユキ 『十字路に立つ』
何の気なしに聴いて不意に食らった。デビュー10周年記念リリースがこの曲名で、内容は言わば「いろいろあるよ、いろいろね。でも、やるんだよ」(植木等+しおさいの里)という感じ。好きなことだからやり続ける、と言うのは簡単だが、実行は決して楽じゃない。意地を張ってつけた格好の裏に潜むめめしさや不器用さや弱音を歌った……などと言うとよくある歌と思われそうだが、自分の説明がヘタなだけで聴いた印象はフレッシュ。ストーリーテリング、特に言葉選びと抽象化のうまさとクールな歌の情感ゆえだろう。“恋に気付くのは” と “アイリス” はどちらもラヴ・ソングだが、肝はやはり大人ならではのほろ苦さとせつなさだ。
yonawo 『Yonawo House』
上京して共同生活を送るシェアハウスの愛称を冠したタイトルは、ザ・バンドの『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』を思わせる。全員のデモ出しから始まり、アレンジ、プリプロ、大部分のレコーディング、ミックスまでそこでやったそうだ。そのせいもあってか、共同プロデューサーの阿南智史や客演の鈴木真海子、Skaaiらも含めた仲間感、リラックスした空気が心地よく、前に取材したときに抱いた印象がこれまででいちばんストレートに出た感がある。荒谷翔大のソングライティングも歌もますます成長し、“Lonely” “涙もがれ” “hanasanai” などライヴ映えしそうな曲がいっぱい。久しぶりに見たくなった。
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ROTH BART BARON 『HOWL』
2018年から5年続けてアルバムをリリースし、そのどれもが力作なのはすごい。通算7枚めとなる本作は、静謐さが印象的だった前作『無限のHAKU』と好対照をなす躍動的なアルバムだ。タイトルにふさわしく、中村佳穂と三船雅也が歌声で交歓する “月に吠える” で始まり、表題曲から “ONI” “Ghost Hunt (Tunnel)” あたりでクライマックスを迎え、つくばみらい市内の高校生たちが参加した同市のプロモーション曲 “MIRAI” で祝祭感は頂点に達する。そこから一転して “髑髏と花 (дети)” の死の匂い(思えば2022年はそういう年だった)で幕を閉じる構成にやられた。静と動、生と死。ダイナミズムが大きなエネルギーを生み出す。
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