シトナユイ 『MUSEUM』
aikoと同じ大阪音楽大学を卒業したばかりのシンガー・ソングライター(aikoは短期大学部)が、卒業制作として作ったというEP。最優秀賞をもらったと本人がツイートしていた。生音と打ち込みが溶け合ったジャジーでファンキーなトラックに、たおやかさと太さを併せ持った歌とラップが映える。通俗的価値観への違和感や疑問をストレートな言葉で綴った5曲を、タイトル通りミュージアムに展示するように聴かせていくが、メロディの強さがとりわけ印象に残る。事務所の先輩Mop of Headに客演した “Shadow” も翌週にリリースされたが、こちらは対照的にゴツゴツしたオルタナティヴ・ロックで、これはこれでよく似合っている。クラシックや映画音楽への造詣も深いそうで、将来はもっといろんな風景を見せてくれそうだ。
WOLVEs GROOVY 『WOLVEs1』
ましのみの次の一手はバンド。天才ベース少女の誉れ高いアヤコノとドラマーの詩音という18歳のふたりとのトリオで、隙間の多いファンキーなアンサンブルが渋い “BUG” とDTM色濃厚な “passion&groove” を両極に、必ずしも生演奏にこだわらず3人でわいわいと遊びながら作ったような、バンド名そのままのグルーヴィな4曲が並ぶ。この自由闊達さは最近、僕が聴いたなかでも出色で、ましのみのディスコグラフィにあっても過去一バランスのとれた作品なのではないか。メジャー時代は溢れる才能をもてあましているようにも見えたが、J-POPマーケットを降りてようやく出会えた器の釣り合う仲間たちと、純粋に音楽作りを楽しめている感じ。アヤコノのヴォーカルも魅力的で、ちょっと水曜日のカンパネラの詩羽を思い出させる。
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スガシカオ 『イノセント』
デビュー25年目の掉尾を飾る通算12枚目のアルバムは、爛熟の性聖一致グルーヴで陶酔させる。初老の沈殿せる官能を攪拌するSMソング “バニラ” とミディアム叙情歌 “さよならサンセット” のコントラストで冒頭からハートキャッチ完了。“痛いよ” “覚 醒” “灯火” “国道4号線” など簡素ゆえにニュアンスが弥増すスガ一流の行間ファンクを軸に、今ならシティ・ポップと形容されそうなアーバン・メロウネス “獣のニオイ” “東京ゼロメートル地帯” やパロディ精神迸る “モンスターディスコ” を配するあたり、さすがのバランス巧者。個人的ツボはファンクザウルス名義の4曲で、なかでもGO-GOのビートに「わっしょいわっしょい」を合わせた “メルカリFUNK” には、PAS TASTAにも通じるアイデアをバンドで実行するベテランならではの凄味を感じた。