William Brittelle 『Alive In The Electric Snow Dream』
LABEL : New Amsterdam
ウィリアム・ブリッテルはインディー・クラシックの重要拠点であるレーベル〈ニュー・アムステルダム〉の共同設立者のひとりであるだけでなく、エレクトロニクスとクラシック~現代音楽を最も先鋭的なやりかたで融合することが可能な音楽家である。それを証明するのが本作の「Alive in the Electric Snow Dream」組曲といえる。神々しいコーラスとストリングス、ホーンが絡み合ったかと思えば、そこにビンテージ・シンセやグリッチ・ノイズが響き、エレキギターが爪弾かれる。それら全てがコラージュ的に配置され、未曽有のサウンドを産み出している。参加する音楽家は、ジェン・ワズナー(ヴォーカル)、エリザ・バッグ(ヴォーカル)、イマニュエル・ウィルキンス(サックス)、ポール・ウィアンコ(ストリングス)等をはじめ、ジャンルを越えて集結した、今を時めく才能たちが集まっており、エンジニアにもワクサハッチーやボン・イヴェール、S. キャリーを手掛けるザック・ハンソンが招かれている。
Nathalie Joachim 『Ki Moun Ou Ye』
LABEL : New Amsterdam / Nonesuch
Flutronixやエイス・ブラックバードのメンバーとして知られてきたハイチ系アメリカ人のナタリー・ヨアヒムは、ソロ活動では自身にハイチの血が流れているというアイデンティティと向き合うことを表現の原動力にしている。グラミー賞にノミネートされた前作『Fanm d'Ayiti』は、スペクトラル・カルテットとにコラボし、自身が作曲したものをハイチの民謡を編曲した楽曲と並列させ、ストリングスとエレクトロニクスが絡み合う美しいサウンドを作った。新作はそのサウンドをさらに進化させた。まるでホーリー・ハーンダンのように、自身の声をサンプリングしてカットアップし、楽曲に織り交ぜながら、エイス・ブラックバードのヴァイオリニストであるYvonne Lamやソー・パーカッションのパーカッショニストであるジェイソン・トロイティングと共にオリジナリティ溢れるチェンバー・ミュージックを作り上げた。また、本作は全編ほぼハイチ・クレオール語で歌われており、ある意味では新たなハイチ音楽ともいえるだろう。
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12 ensemble 『Metamorphosis』
LABEL : 12 ensemble
12 アンサンブルといえば、すぐに頭に思い浮かぶのは英インディー・ロック・バンドであるドーターのメンバー、エレナ・トンラのソロ・プロジェクトEx:Reと共に、彼女のデビュー作『Ex:Re』を編曲し、『Ex:Re With 12 Ensemble』を作り上げたことだ。そこで、面白いアンサンブルがいるなと知った。他にもジョニー・グリーンウッドやニック・ケイヴ、ローラ・マーリング、ザ・ナショナル、そしてなんと青葉市子とはライヴ・アルバムをリリースしている等、ポップ・ミュージックとの繋がりの多いアンサンブルだ。そんな彼らの新作は、エドモンド・フィニスがウィリアム・バードをオマージュした「Hymn (after Byrd)」やガス・ヴァン・サント監督の映画『ラスト・デイズ』のプロットとしてオリバー・リースが作曲した「Non Voglio Mai Vedere Il Sole Tramontare」、リヒャルト・シュトラウス晩年の「Metamorphosen for 23」、クロード・ヴィヴィエがインド音楽の影響を受けて作られた「Zipangu」だ。個人的には20世紀の現代音楽が拡張したストリングスの多様な技法が楽しめる「Zipangu」を特にオススメしたい。