2015/09/14 22:54

ポストロック最高峰をハイレゾで堪能するーーバトルス新作『La Di Da Di』

2007年の『ミラード』発表以降、ポストロックの最高峰バンドとして、ジャンルを超えて幅広いフィールドに支持されてきたバトルス。元メンバーのタイヨンダイ・ブラクストンの新作が到着したかと思えば、4年ぶりにバトルスの新作がここに届いた。

新作『La Di Da Di』は、まさにバック・トゥ・ベーシックなバトルス3人の演奏によって構成される。ミニマルでソリッド、シンプルな力強さに溢れた作品だ。タイトな演奏が生み出す磁場は、タイヨンダイ脱退の呪縛を完全に乗り越えた彼らの力強い足取りをなによりも感じさせる。

OTOTOYでは本作を24bit/44.1kHzのハイレゾ版で配信開始。バンドのアンサンブルの、ときにダイナミック、ときにしなやかな変化を、そしてそれを影で支えるミクロなパーカッションやギター・リフの構造の隅々まで、高解像度の音質で楽しむべし。

Battles / La Di Da Di(24bit/44.1kHz) 【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC(24bit/44.1kHz) / AAC
※ファイル形式について
※ハイレゾとは?

【価格】
単曲 216円(税込) / アルバム 1,836円(税込)

【Track list】
01. The Yabba / 02. Dot Net / 03. FF Bada / 04. Summer Simmer / 05. Cacio e Pepe / 06. Non-Violence / 07. Dot Com / 08. Tyne Wear / 09. Tricentennial / 10. Megatouch / 11. Flora > Fauna / 12. Luu Le / 13. FF Reprise

Battles - The Yabba(NYC Live Session)
Battles - The Yabba(NYC Live Session)

バトルスのキャリアを貫く“ミニマリズム”との関係(text by 八木皓平)

バトルスのキャリアにおける新作『La Di Da Di』の立ち位置を明確にし、聴きどころを鮮明にするため、「ミニマリズム」をテーマに彼らのキャリアを簡単に振り返っておきたい。

初期EP群(オリジナルは2004年リリース、〈WARP〉移籍後の2005年に『EP C/B EP』としてコンパイルされている)におけるミニマリズムは、有機的でかつハイテンションなバンド・ミュージックとエフェクティヴな電子音響によって構築されていた。そこでは点描的なサウンド・デザインが練り上げられ、そのダイナミズムと繊細さを併せ持った世界観はバトルスの名を一躍高めることとなった。

2007年のアルバム『ミラード』では初期EP群と連続性を保ちながらも抜本的な変化が聴き取れる。その変化とはエキセントリックな音色 / フレーズの前面化とミニマリズムの後退だ。演奏もマシーナリーなものになり、サウンドが初期EP群とは決定的に様相を変えた。この作品で到達した唯一無二のバンド・サウンドで「世界最高峰のポストロック・バンド」としての地位を彼らは築き上げた。続く2011年のアルバム『グラス・ドロップ』で、タイヨンダイ・ブラクストンの脱退という大きな変化に直面する。『グラス・ドロップ』は『ミラード』と同様のミニマリズムの後退と共に、ロック的なダイナミズムが追及された作品になっている。しかし、タイヨンダイ不在の影響や多数の客演のせいか前作『ミラード』にあったサウンドの芯が無くなり、『グラス・ドロップ』はアルバムとしての方向性が曖昧な印象がある。

前向きな“ミニマリズム”への回帰

心機一転して作られたアルバムが4年ぶりの新作『La Di Da Di』だ。本作で試みているのは一言でいえば『ミラード』~『グラスリップ』路線の見直しであり、初期EP群において顕著だったミニマリズムへの復帰だ。注意すべきは、これはスタイルの回帰であってシンプルな原点回帰とは違うという点だ。初期EP群のサウンドは前述したようにエフェクティヴな電子音響が大きくフィーチャーされているがそれらの要素は味付け程度に用いられ、例えば 「FF Bada」や「Non-Violence」といった楽曲に代表される、バンド・サウンドによるインストゥルメンタルが強調されている。そこでは初期EP群を遥かに凌駕するような精密な構造と強靭なフィジカリティが圧倒的なダイナミズムによって構築されており、そのサウンド・デザインは作品全体の共通トーンとなっている。また、「Megatouch」や「Luu Lee」で聴けるような、『ミラード』~『グラス・ドロップ』で培われたであろうエキセントリックな音色 / フレーズが本作を彩っていることもまた重要な点だろう。

『La Di Da Di』はとても前向きな作品だ。メンバーの脱退に直面しバンドが足元を見失ったとき、彼らは自分たちが歩んできた道のりをもう一度振り返り、丹念に検証することでバンドの音楽を前に進めたのだ。彼らの困難な歩みは決して無駄ではなかったどころか、こうして今バトルスが前進するきっかけとなった。本作を祝福とともに迎えたい。

text by 八木皓平

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Tyondai Braxton / HIVE1(24bit/88.2kHz)

元バトルスの中心メンバーにして、フィリップ・グラスも惚れ込む現代音楽家タイヨンダイ・ブラクストンの実に6年ぶりとなるソロ最新作。現代音楽の牙城〈Nonsuch〉からリリースされた本作は、クリアでいて力強い、電子音やパーカッションの“鳴り”が十分に楽しめる作品となっている。

Battles / Gloss Drop

バトルスの2ndアルバム。 ボアダムスのアイやシンセ・ポップの先駆者であるゲイリー・ニューマンなど4名のゲスト・アーティストが参加した本作は、ストイックなまでに変則的かつ構築的なリズム・セクションとフックのあるメロディが合わさった快作。

>>特集ページはこちら

toe / HEAR YOU(24bit/48kHz)

単独音源リリースとして3年振り、フル・レングス・アルバムとしては5年半振りとなる、待望の最新作。ここまでtoeでしか鳴らせない音世界を確実に構築してきた、その歩みに恥じる事のない、まさに“toe”としか言い様のない3rdアルバム。Chara、木村カエラ、5lack、U-zhaanなど、ゲスト・ミュージシャンも参加。

LIVE INFORMATION

バトルス・ジャパン・ツアー
2015年11月25日(水)@六本木EX THEATER
2015年11月26日(木)@大阪AKASO

PROFILE

バトルス

2002年にNYでイアン・ウィリアムス(ex.ドン・キャバレロ)、デイヴ・コノプカ(ex.リンクス)、ジョン・スタニアー(ex.ヘルメット / トマホーク)、タイヨンダイ・ブラクストンにより結成された米エクスペリメンタル・ロック・バンド。2004年には『B EP』、『Tras』、『EP C』と3枚のEPを立て続けにリリースし、ポスト・ロック~マス・ロック・シーンの隆盛とともに大きな注目を集める。精力的にライヴ活動を行いながら、2005年には〈Warp〉と契約。2007年に1stアルバム『Mirrored』をリリースし、各メディアで絶賛を浴びると、国内外の大型フェスへの出演やツアーで大きな成功を収めた。2010年からは現在の3人編成に。2011年にリリースされた2ndアルバム『Gloss Drop』ではゲイリー・ニューマンからボアダムズのEYEまで様々なゲスト・ヴォーカルを迎えて再び話題を呼ぶ。そして2015年、ワールド・ツアーの発表に続いて4年ぶり待望となる最新アルバム『La Di Da Di』のリリースがアナウンスされた。

>>BEATINK内 バトルス アーティスト・ページ
>>バトルス オフィシャル・ホームページ

この記事の筆者
八木 皓平

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[レヴュー] Battles

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