渋谷慶一郎、過去作配信第2弾、レーベルの存在感を決定した、レアな最初期作を配信開始

2017年9月11日より、毎月11日に、半年に渡ってATAK過去作品を配信リリース。そしてOTOTOYでは各作品に関して、毎回、ライター、八木皓平による渋谷慶一郎本人へのインタヴューを行い解説をお送りします。第2弾も4作品を配信。国内外の先鋭的な電子音響〜サウンド・アート系の60アーティストx60秒の曲というコンセプチャルな意匠でリリースされたイラク戦争へのプロテスト・アルバムとなった『60 sound artists protest the war』、そしてヨーロッパのカッティング・エッジな電子音響〜サウンド・アート系のアーティストたちによる3作品。stilluppsteypa『ATAK003』、3アーティストによるコラボ、kimcascone + jason kahn + steinbruechelの『ATAK004』、そしてgoem『ATAK005』を配信します。ちなみにこのインタヴューは、アンドロイドが人間のオーケストラ伴奏で歌う世界初の試み=モノ・オペラ『Scary Beauty(スケアリー・ビューティ)』のアデレードでの初演2日間を含むオーストラリア公演から帰ってきたその日に行われました。

インタヴュー : 八木皓平

オーケストラのコンサートの感触じゃないんですよね──オーストラリア公演

──オーストラリアでのアンドロイド・オペラ初演、いくつかレヴューを読みましたけどすごい評判良かったみたいですね。おめでとうございます。

『Scary Beauty』と『THE END』の2本立てだったんです。特に『Scary Beauty』は新作世界初演で人間のオーケストラとアンドロイドの共演だからリハーサルが大変で二週間休みナシで働いたんです、オーストラリアという気持ちの良さそうな場所で日本以上に働いたかもしれない(苦笑)。で、それが終わったからご褒美というか打ち合わせとか内偵も兼ねてタスマニアとシドニーも行ったんですけど、そこでも休暇らしくは振る舞わずフル稼動してたから疲れました(笑)。アデレードでの公演、本番は合計4日間だったんだけど、とにかく『Scary Beauty』のリハーサルが多かった。コンピュータと違って人間のオーケストラはリハをしないと演奏できるようにならないから。

──昔オケの指揮とかめんどいから絶対やりたくないって言ってたのを読んだことがあります。すぐ嫌な顔するし、と(笑)。

そうだっけ? まあ、前言はことごとく覆ってる男ですからね僕は(笑)。

──いま出ている記事を読む限り、メディアはほんとに驚愕&絶賛みたいな感じですが、実際の現地のオーディエンスの反応はどうでした?

あの、なんというかマジで驚いてましたね。

──どのあたりだと思いますか?

異世界感かな。まずやはりアンドロイドっていうのはテクノロジーだけど彫刻というかトルソーみたいにリアルにステージに立っているでしょ、僕とかオケと並んで。そんなものは見たことないわけですよ、当たり前だけど。で、オーケストラも、アンドロイドの声も思いっきりPAで増幅したんです。だから出音はオーケストラのコンサートの感触じゃないんですよね。声はすごく音色的にもノイジーというかラウドだし。

──たしかに、そうなりますね。

違和感がすごいんです。『THE END』も今では世界中でやれば絶賛みたいになってるけど、最初はそうだったんです。


──そういえばPAで増幅したオケって他で体験したことないな。

だから多分『Scary Beauty』も早すぎたコンセプトなんでしょう(笑)。

──『THE END』の音響感も東京で体験したんですが「これは???」って感じでしたからね。

『THE END』も作ってから3年くらい経ってからオファーが世界中から絶えないみたいな状態になって、しかも今後も続くみたいなんです。ちなみに東京公演の『THE END』は賛否両論以前にある種の事件感が強かったけど、サウンドシステムは驚異的でした。オーチャードホールの空間に横浜アリーナの規模でやるのと同じ物量のサウンドシステム、スピーカーを突っ込んだんです(笑)。

──物量感やばいですね(笑)。

スピーカーを100台以上使ってキックとか低音をバカスカ言わしてリハしてたら、1階下のドゥマゴってカフェでコーヒー飲んでたお客さんのカップの水面が揺れたという(笑)。

──そこまでだと建物が振動しますよね。すっごいな。

で、一階にかけてたウォーホールの絵が傾いてやばかったみたいな話も聞いたな。

──そんな笑い話が! でも、あの音響感って、クラブ的でもないですし、ほんとに独特でしたね。

いや、笑い話じゃなくて危うくオーチャードホール出禁になりそうになったんです(笑)。

──出禁になったら、名誉の出禁ですね。伝説に残りますね。

100台以上スピーカー使って、5.1chのサラウンドを二層縦に重ねた10.2chで音移動もしつつ大音量というものだったからあまりないですよね。でも出禁は今のところないし、伝説といえばシール事件くらいしかないです(笑)。

音楽じゃなくて、音でこの戦争や状況、世界に抗議するCD

2003年6月15日オリジナル・リリース
V.A. / 60 sound artists protest the war
01. roel meelkop / raw
02. shirtrax vx.shirtrax / easy lover
03. keith rowe / 1 min. in texas
04. stephan mathieu / kartenhaus
05. pomassl / emptarda notch
06. slipped disk / record:bgd 3.20-21
07. bernhard günter / heiwa no tame no haiku
08. kim cascone / gps jammer output
09. doron sadja / untitled
10. yamataka eye / tr37 他、全60曲収録


収録の全60アーティスト(収録順) : roel meelkop / shirtrax vx.shirtrax / keith rowe / stephan mathieu / pomassl / slipped disk / bernhard günter / kim cascone / doron sadja / yamataka eye / numb / steve roden / steinbrüchel / go taneda / akira yamamichi / tiziana bertoncini / yuji takahashi / freiband / cm von hausswolff / keiichiro shibuya / motor / stilluppsteypa / coh / mikael stavöstrand / radboud mens / miki yui / andreas tilliander / minimalistic sweden / nao tokui / frank bretschneider / evala / taeji sawai / fennes / kenneth kirschner / i8u / john hudak / aoki takamasa / mitchell akiyama / burkhard stangl / goodiepal / hideki nakazawa / aelab / christof kurzmann / jos smolders / masahiro miwa / janek schaefer / tv pow / pix / kimken / saidrum / merzbow / m.behrens / maria /klonu / fields / richard di santo / christophe charles / william basinski / carsten nicolai / yasunao tone

【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / FLAC / ALAC
AAC
アルバムまとめ購入 1,050円(税込)

──シール事件(笑)! ではそろそろ本題に、今回は『60 sound artists protest the war』(2003年6月15日リリースから)から。『60 sound~』って、今回のリリースの中で、個人的に一番うれしくて。端的にいうといままでプレミアムがついて聴けなかった作品なんですよ。

これ、当時も1000部限定ですぐなくなったんです。

──今回の〈ATAK〉の過去作、配信開始の目玉のひとつですね。

そうですね。で、こういう趣旨のコンピレーションだから、意図的に僕たちが儲からないようにしないとフェアじゃないなと思って1700円という安い値段で限定にしたんです。

──それは安い。

ただ、実は僕もこのCDの存在をほぼ今回の配信企画まで忘れていて。今回の配信企画は、僕がいつ死んでもいいようにレーベルのすべての作品をクラウドにアップしたいと思いついてはじまったんですけど、それで過去の作品を振り返ったら「こんな面白いことやってたんだ」と気づいて、聴き直したらやっぱり面白かったから再発したいと思ったんです。

──今回の再発シリーズってそういうことだったんですね!

そうです。

──この作品って、いつくらいにアイディアがでてきたんでしょうか。ひとつはイラク戦争周辺でしょうけど。リリースは2003年6月、イラク戦争は2003年3月の開戦ですが。

確かこのCDのアイディア自体は2001年の9.11の直後に出てきたんです。ちなみに2001年の9.11っていうのはmariaの誕生日で、僕たちが結婚した日だったんです。区役所に行って婚姻届出して、レストランで食事して、食べ終わって携帯見たらいろんな人から連絡がきてて、飛行機が突っ込んでたという。だから初夜は、その飛行機がビルに突っ込んでい映像を中継しているニュースをVHSで録画して、その音をコンピュータに移したりDATで直に録ったほうがいいんじゃないか?とか二人で延々やってたのを覚えてます(笑)。

──そんな結婚初夜きいたことないですね。

「この音はやばい」とか言ってね。だから最初から波乱含みだったんですけど、日本人はすぐ哀悼モードみたいになるでしょ、それは僕は嫌なんです。現実をなるべく自分の視点から見て客観的に判断して行動するなりしないなりしたい。で、その後、プロテスト・ソングみたいなものとか、謎の音楽を媒介にした反戦運動みたいなのが流行ったんですよね。で、僕とmariaはまだ1枚もCDを出していないレーベルをやっていた。というか「レーベルをやるんだ!」という気合だけは盛り上がってた時期だったんです。

──あ、そうですね。その頃はまだ1枚もでてないですね。

そうなんです。で、その音楽による反戦運動みたいなのを横目で見てたら音楽的にはしょうもないのがほとんどで。

──そういうのって、コンセプト先行で内容が伴ってないやつ、たくさんありそうですよね。

なんか正しいこと言ってるだけのクズみたいな曲とかね。その時に思ったのは、このまま世界が戦争恐慌みたいになって恐怖が世界を覆うとそういうプロテスト・ソングというかフォーク・ソングみたいなのばかりになっていくんじゃないかという逆の恐怖があった。

──なるほど。

で、その頃は毎日mariaとレーベルのことばかり話してたから「じゃあ、僕たちは何ができるのか?」みたいな話になった時に、お祭りみたいなイベントとか一過性のものは違うものをやろうと。これからレーベルをやるし、そのレーベルは音楽というよりも音とか音響にフォーカスするわけだから、音楽──いわゆる言葉とかメロディが前提になっている音楽じゃなくて、音でこの戦争や状況、世界に抗議するCDを作るのはどうだろう? という結論になったんです。すごく狭いリビングで、二人ですごく大きなことを考えていたんです。

──その、「音楽じゃなく音」っていうのは、アルバム全体がそうなってますよね。

ただ、とにかく駆け出しのレーベルだからコネも人脈もなかったのね。で、僕とmariaでありったけのいわゆる当時、自分たちで買った音響派とかサウンドアートとかのCDとかレコードを出してきて「この人なら音楽じゃなくて音で抗議できるはず」という人を選んで、CDのライナーにあるEメール・アドレスに1通づつオファーを送ったんです。

──すごい行動力ですね。しかも、全部で60組ですからね。

テクノとかヒップホップとか既存のジャンルにどっぷり入ってる人は外してっていうのは最初から決めていて、この人入れたら売り上げ伸びるとかそういうのもやめようと話して。で、ほとんどが面識もない、国外の言わば憧れのアーティストに突拍子もないことを頼むわけじゃない?

──そうですよね、全員メンツもやばすぎますしね。

そうでしょ、今見てもやばい。で、当時から国外流通はしてたんだけどこのリリースがきっかけでアメリカではメジャーの流通会社とひとつ契約切れた記憶があります。反政府的なレーベルだと思われたのかな、当時のアメリカはすごく右傾化してたから。

──いま見て、なおさらヤバいです。

そう。で、英文でオファーのメールを書いてるときに、そのなかで「アメリカが攻撃を」とかなんとかコンセプトの説明を英文で書くわけだけど、僕が「Attack」を間違えて「ATAK」と書いてたんです。その頃はmariaと毎日レーベルの名前を決めるのに喧嘩寸前の言い争いをしてたんだけど(笑)、その「ATAK」という字面を見て「(レーベル名は)これで良くない?」ってmariaに訊いたら即答で「これカッコイイ」ってなって決まったんです。

──まさかレーベル名の由来聞けるとは思いませんでした(笑)。

で、プロセス的には結構難航したんだけど。その頃、僕たちはGOEMというか、そのメンバー、ロエル・メールコップの音にやられてて。彼にオファーしたらOKの返事が来たんですよ。

──なるほど、その後の『ATAK005』に、そう繋がってくるのか、なるほど。

で、彼がやるならっていう感じでどんどん輪が広がっていったと思う。だから彼が1曲目なんです。

──60っていう物量なんですけど。これだけの音楽家が同じコンセプトの下で、音で、バラバラなことをやっている、っていうのはやはり重要だったんですよね?

「60人の60秒」っていうコンセプトは60秒しかないから、彼ら自身も普段の音楽の語法とは違うものを作ることになりますよね。僕自身もそうだし。そうすると音楽家自身にも発見がある。だからそれぞれが普段とは違う可能性を探した結果というのは、抗議として意味があると思ったんですよね。

よく聴くとクラシックとかフォークロアな要素もある

2004年5月22日オリジナル・リリース
stilluppsteypa / ATAK003
01. 0'37
02. 1'10
03. 4'08
04. 3'15
05. 3'00
06. 2'29
07. 0'16
08. 2'30
09. 2'11
10. 0'29 他、全10曲収録


【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / FLAC / ALAC
AAC
アルバムまとめ購入 1,050円(税込)

──なるほど。そろそろstilluppsteypa『ATAK003』(2004年5月22日リリース)に移ろうと思うんですが、これは先方のほうからオファーがあったんですか?

いや、これはオファーしました。『60 Sound~』を作って色々なアーティストとやりとりしてるときに、なんか話が盛り上がったのかな。そもそも僕がスティルアップステイパの大ファンだったんです。当時はたしか〈ミルプラトー〉傘下の〈リトルネロ〉とか、あとは謎のレーベルから出してたと思うんだけどほとんど聴いてました。

──佐々木敦さんのレーベル〈Meme〉からもでてましたよね。

あれも良かったですね。彼の作品は、ミニマリズムを超えてという指向性はあるけど、いわゆるノイズとかカオスではない。脱ミニマリズム思考としては、かなりイケてるというか頭がおかしいというか。どれを聴いてもわけがわからなくてすごいなと思った記憶があります。

──〈ATAK〉の音源の中では、ある意味で一番ロック的なアグレッシヴさがありますよね。

そうなると思ってなかったんですけど、結果としてそういう作品になったのは、スティルアップステイパ自体が最初は3人で始めたプロジェクトだったんですけど、このアルバム作る頃には1人になっていて。

──あ、そうなんですね、それは知らなかったです。

で、その中心人物だったSigtryggur Berg Sigmarsson、僕はシギーって呼んでますけど、彼がかなり変わりもので、今でもFacebookで時々やりとりしてますけど彼がほぼ一人で作りあげたんです、003に関しては。

──これ、すごくノンジャンル的ですよね。

ですね。アイスランドなんでビヨークとかも親交あって、よく聴くとクラシックとかフォークロアな要素もある。で、日本に呼んで『ATAK NIGHT』というレーベル初のジャパン・ツアーもやったという。

──情報量凄くて。音楽的ボキャブラリーも多彩、現代的ですよね。いま聴いても。

情報量多いですね。で、古くならないですね。すごくアーティスティックに才能ある人で美術もやっていたりして。日本でやったライブも、この頃の電子音楽のライヴといったら、ラップトップに向かってジーーっとしてるのが流行りというか定番だったと思うけど(笑)彼の場合、ラップトップそっちのけで途中で会場の中を走り出したり、死んだように横になったりして大変なことになってました(笑)。

アイスランド、スイス、オランダでベルリンやパリではない

2004年11月27日オリジナル・リリース
kimcascone + jason kahn + steinbruechel / ATAK004
01. 4'39
02. 2'59
03. 7'39
04. 3'50
05. 4'46
06. 3'34
07. 8'00
08. 3'28
09. 3'21
10. 7'37 他、全11曲収録


【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / FLAC / ALAC
AAC
アルバムまとめ購入 1,050円(税込)

──めっちゃパフォーマティヴですね(笑)。そろそろkimcascone + jason kahn + steinbruechel『ATAK004』(2004年11月27日リリース)とgoem『ATAK005』(2004年11月27日リリース)に。『ATAK004』と『ATAK005』は同時リリースなんですよね。

そうでした。これ、すごく大変だったんだ(笑)。『ATAK003』~『005』の海外アーティスト3部作みたいなのは、全て違う方向性のものを出そうという意図はあったんです。レーベルってその時代のアーカイヴみたいなところもあるから。

──『ATAK003』が出るときに『ATAK004』と『ATAK005』はもうすでにリリースが決まっていたんですか?

ほぼ決まっていたと思います。

──アーカイヴとして今見たときに、この3枚の並びすごいですもんね。

あと『ATAK004』とLigne i8u + Tomas Phillipsの『ATAK013』は通じるものがある。

──あ、それすごくよくわかります。

ドローン・ミニマルなんだけど、ひとつの音を顕微鏡でみて、細分化したものを再構成して音楽にしたような。

──いわゆるマイクロスコピックってやつですよね。

そうです。

──渋谷さんの『ATAK000』もそういう要素があります。

ありましたね。定期的にそういうものに対する興味が揺り戻すんです。

──ATAKのHPのインフォを読む限りでは、これってジェイソン・カーンから突然届いた作品ということですけど。

そうかもしれない。当時のジェイソン・カーンは活発に活動してましたね。自分たちも注目してたから、びっくりした記憶はある。

──メンツが豪華ですよね、このコラボ。

『ATAK003』『ATAK004』『ATAK005』は国で言うとアイスランド、スイス、オランダでベルリンやパリではないというのも今考えると面白い。004をリリースした後にツアーでライブもやったけど、スイスはそういうサウンドアートとか音響派みたいなシーンありましたよ。

──『ATAK003』から『ATAK005』の作品を聴くと、当時の電子音楽の最先端がどこにあったのかっていうのがわかりますよね。

それは意識してて、『ATAK004』は今聴いてもマイクロスコピックというコンセプトが音楽的に昇華したものの中でも傑作だと思います。で、すごく美しいけど美しいだけではない。確かこれもすぐに完売して廃盤になったんじゃないかな。

──まったく同感です。だから、ATAK単体で見るだけではなく、当時のシーンを振り返るときにもこのラインナップは重要という感じがします。でも『ATAK001』から『ATAK003』までの流れで、この『ATAK004』っていうのはビックリしますよね。

僕としては『ATAK001』、『ATAK002』でレーベルの方向性が見えてきて、『ATAK003』『ATAK004』『ATAK005』がひとつながりで、外に視点が向かっていった時期という感じでした。ただ今もなんですけど、周りが驚いてるとかそういうことに僕は驚くほど無頓着なんです。常にやりたいことをやってるだけで、当然その背景にはロジックもあるんだけど、人が思いつくことは昔も今もやってないから驚くのは当然というか。

──しっくりきました(笑)。

その考えが前提にあるから反応というのはいつもあまり覚えてないんです。

人間の生理現象に近い

2004年11月27日オリジナル・リリース
goem / ATAK005
01. 2'47
02. 4'35
03. 4'22
04. 6'04
05. 5'05
06. 6'25
07. 2'05
08. 4'06
09. 4'53
10. 5'14 他、全11曲収録



【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / FLAC / ALAC
AAC
アルバムまとめ購入 1,050円(税込)

──最後にGOEMについてももう少し。

GOEMが〈12K〉からリリースした『Abri』という作品があって、あれは決定的な傑作だと思うんです。

──全く同感です。

で、このアルバムは『ATAK002』とか『ATAK001』の一部にも相当影響与えてるんですけど。

──あー、なるほど。

当時のカールステンとか池田さんみたいにデジタル・アートとか数学の方法論で音楽を超えようというのでもなければ、パンソニックのように全てを削ぎ落としてミニマルな角度からノイズ・インダストリアルも更新するみたいなやり方でもない。音楽の麻薬性とか常套句でよく使われるけど、ノイズの麻薬性でこれを超えるものはなかったと思います。で、確か医療器具でビートとかパルスを作ってたと思うんだけど、それは揺れてるしアナログですよね。

──はい。

しかし極めて感触としてはミニマルである、というのは人間の生理現象に近いですよね。

──たしかに、そう言われてみればそうですね。そんな考え方したことなかったな。

で、当時毎日のように『Abri』は聴いていて「Goemは自分たちのレーベルでリリースしたいねぇ」とか話していて、試しに本人たちに持ちかけたらリリースすることになったという。

──その際、なんらかのコンセプトの提示みたいなのはあったんですか?

『Abri』がすごく好きだということは伝えました。

──『Abri』と連続性がありつつ、リズムにフォーカスしてきてますよね。そこが凄く面白くて。

それも確かコンセプトのやり取りをしている時に「ATAKはリズムと音色にフォーカスしている」と伝えたと思います。で、この時点ではGOEMはフランス・デワードのソロ・プロジェクトになっていたんじゃないかな。確かほぼソロだったと思います。

──それが良い方向にいってますよね。ATAK的ともいえますし。

『Abri』にあるような麻薬性は後退してリズムとミニマリズムにフォーカスしている印象があります。壊れた『クリック&カッツ』というか。

──でも、この後のGOEMのキャリアを考えても、こんな作品はないわけで、ほんとに傑作になってますよね。

ですね、ビートはこれも医療器具だと思います。この後、GOEMってリリースしてるんですか?

──してますよ。

そうなんだ。他のアーティストの作品も全て、〈ATAK〉の作品はマスタリングはこっちでやってたんですね。キムケンスタジオですごく丁寧に僕が全て立ち会って彼と一緒にやってたんです。だから、音色的にある種の共通性があるかもしれない。だからその後、あまりリリースしたアーティストの作品を聴けなくなったりするんです。マスタリングの時にすごく何回も集中して聴くから。だから全部すごく大切なアルバムなんですよね、自分のじゃなくても。

第3回に続く

第1弾配信作品の解説インタヴューはコチラ

ATAK配信作品のまとめページはコチラ

PROFILE

渋谷慶一郎

音楽家。1973年生まれ。東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。2002年に音楽レーベルATAKを設立、国内外の先鋭的な電子音楽作品をリリースする。代表作にピアノソロ・アルバム『ATAK015 for maria』『ATAK020 THE END』、パリ・シャトレ座でのソロコンサートを収録した『ATAK022 Live in Paris』など。また、映画「はじまりの記憶 杉本博司」、ドラマ「TBSドラマSPEC」など数多くの映画・TVドラマ・CMの音楽も担当。2012年には、初音ミク主演による世界初の映像とコンピュータ音響による人間不在のボーカロイド・オペラ「THE END」をYCAMで発表。同作品は、その後、東京、パリ、アムステルダム、ハンブルグ、オーフス、アブダビ、ジョージアなど世界数カ国で公演が行われ、現在も上演要請が絶えない。2016年にはサティ、ピカソ、コクトーのコラボレーション作品「Parade(パラード)」のリメイク「Parade for The End of The World」をパリで発表。2017年にはパリ・オペラ座でパリ・オペラ座・エトワール、ジェレミー・ベランガールとビデオ・アーティストチームのエイドリアンM & クレアBとのコラボレーションによる「Scary Beauty」のダンスバージョンを発表。最新作はアンドロイドとオーケストラによるモノオペラ「Scary Beauty」で今年9月に初演が決定、その後は世界巡回が予定されている。これまでにアーティストの杉本博司、複雑系研究者の池上高志、ロボット学者の石黒浩、パリ・オペラ座・エトワールのジェレミー・ベランガールなど数多くのアーティスト、またルイヴィトンやピガール、エルメネジルド・ゼニアといったファッションブランドともコラボレーションを展開している。現在は東京とパリを拠点に活動を展開している。

ATAK Official Site

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