INTERVIEW : 安月名莉子&nonoc
TVアニメ『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』の主題歌を歌う、安月名莉子とnonocのふたりにインタヴューを行った。オープニングテーマ“知らなきゃ”と、エンディングテーマ“Change”のそれぞれに、新たな挑戦が見られる今回の楽曲。ふたりに話を聞くと、今作の登場人物への感情を込めて歌っていることがわかった。このインタヴューを読めば、彼女たちの『ハコヅメ』への愛が感じられることだろう。
インタヴュー&文 : 西田健
写真 : 西村満
自分の感情についても深く考えるようになった
──これまでおふたりとも異世界モノやラノベ原作のアニメの主題歌が多かったなかで、今回の『ハコヅメ』のような、リアルなテーマを描いたものは珍しいですよね。
安月名 : 久しぶりに異世界じゃないんですよね(笑)。
nonoc : 私に至っては、現実世界での作品ははじめてですね。宇宙にいったり、時間軸も現代じゃなかったりするものをこれまで担当していたので(笑)。
──おふたりは原作を読まれて、どんな感想を抱いたんですか。
nonoc : 実際に警察の現場で働いていた方が書かれているので、リアルさを感じました。私はこれまでドキュメント作品とかを見てこなかったから、すごく新鮮に感じます。
安月名 : アニメを見ていると、「あ、原作のあのシーンがきた! 」ってワクワクしますね。私は身近に警察の方がいるんですけど、お仕事事情を知ると、改めて警察の方はすごいと思います。コメディかつ勉強にもなるアニメなので、こういう作品に携わることができるのは幸せですね。
──安月名さんはオープニングの“知らなきゃ”を担当されています。冒頭からポエトリー的なメロディが入った曲ですね。
安月名 : はじめてに近いくらいの音数の多さでした。いきなり「無理みたい」から歌詞がはじまるのがおもしろいですよね。気持ちがどんどん昂っていくにつれて、メロディアスになって。そこからさらに、サビで爽やかになるんですよね。
──この曲を歌いこなすのはかなり難易度が高かったんじゃないでしょうか?
安月名 : 滑舌は苦労しましたね(笑)。言葉数が多いだけあって、大事にしたいワードがたくさんあるんですよ。特に大事にしたいワードを書き出してレコーディングに臨みました。
──この曲は、先輩の藤部長の背中を追いかける、後輩の川合ちゃんの心を描いているんですよね。
安月名 : 働く意義とか理由とか曖昧なままだった人が、憧れの人に出会って、もっといろんな世界を知りたい、近づいていきたいという想いが強くなっていくキラキラな歌です。この曲のサビの「知りたい 昨日の感情」という歌詞がすごく好きなんですよ。私自身、自分が抱いている感情に対して、きちんと向き合えていないと感じていた時期があったんです。この曲を歌っていくうちに、自分の感情についても深く考えるようになりました。なんでも、まずは知ってみなきゃ始まらないと思うんです。自分の気持ちを理解して、明日はもっと先を目指して頑張っていきたいとい思っているので、自分自身の想いも重なり、この歌詞はすごく好きです。
──歌い方にもかなり工夫が感じられます。
安月名 : 川合ちゃんの「そんなの無理ですよ、藤部長」と言いながらも必死に頑張る部分みたいな、そういうニュアンスを最初に入れたいというディレクションを頂いたんです。河合ちゃんの心情を描くからこそ、サビにつれて盛り上がる部分が出せたんじゃないかなと思います。アレンジにも『ハコヅメ』らしさが詰まっています。イントロは、パトカーのサイレンから始まって銃がカチャっと鳴っていたり。
──nonocさんは、この曲を聴いてみてどう感じましたか?
nonoc : 「サイドミラー」とか「another crime」とか、ところどころの言葉のチョイスが『ハコヅメ』にぴったりだなと思います。川合ちゃんの心の不安定さはもちろん表しているんだけど、その不安定な気持ちを消化していく雰囲気が伝わってきたので、フルで聴くとよりまた違った印象があるんじゃないかなって思いますね。歌としては、莉子ちゃんの独特の息づかいが出ている曲だなと思います。感情的なフレーズとか個性的な歌い方のクセとかがすごく合っているなと思いました。
──nonocさんは、エンディングテーマの“Change”を歌われています。作詞・作曲はDECO*27さんですね。
nonoc : もともとDECO*27さんの曲がすごく好きなんですよね。憧れの人だったので、今回書いていただけることが決まったときはすごくテンションが上がりました。めちゃめちゃ嬉しかったです。DECO*27さんの曲は、人気曲はもちろんアルバムの曲まで聴いてきたので、「こっちのタイプの曲できたのか! 」という感想が、最初はありましたね。私の楽曲のなかでは、コール&レスポンスだったり、ライヴで盛り上がるような部分は珍しいので、歌っていくなかで育てていけたらと思っています。
──この曲もオープニングと同様、主人公の川合ちゃんの心情をテーマに書かれているんですよね。
nonoc : 川合ちゃんって感情がコロコロ変わるキャラクターなんですよ。それを自分でわかって受け入れていっているところがあるし、「なるようにしかならない」と思っているような雰囲気を感じました。でも、「その人のために動きたい」とか「こういう人になりたい」とかそういう変わらない部分があるのが、いいなと思います。
──確かに、芯はしっかりしたキャラクターですよね。
nonoc : でも、仕事は仕事だし。事件がいつ来るかわからないから、「明日もどうせ今日でしょ」という歌詞に落ち着くのかなと思いました。
──この「明日もどうせ今日でしょ」という歌詞はすごく印象に残りますよね。
nonoc : 「明日もどうせ今日でしょ」って、もうこれ以外考えられないです。こういう歌詞が、DECO*27さんは本当に上手なんですよ。難しい言葉を使っているわけじゃないけど、独特のワードチョイスというか、気持ちが伝わるのがすごいと思います。ある意味、諦めのようでもあるんですけど、放り出してないし逃げてはいない。そういう川合ちゃんの心情にすごくぴったりだなと思います。
──“Change”はnonocさんの曲のなかでも、かなりポップな曲調ですよね。
nonoc : 自分が新たに挑戦するって意味でも“Change”は本当にピッタリでした。この曲はいままでと歌い方を変えているんですけど、自分の可能性にも挑戦していこうと思ったし。正直、レコーディングの当時はまだ迷いがあったんですよ。チャレンジしたことない方向性だから、ちゃんと受け入れられてもらえるのかなっていう気持ちもありました。そのときの私の正解で録っていった感じです。DECO*27さんが直接ディレクションにも関わっていただいたので、これもフルで聴いて、歌い方やどういう気持ちを込めているのかとか、そういう部分にも気づいてもらえると嬉しいです。
──安月名さんは、この“Change”を聴いてみて、どうでしたか?
安月名 : 「新・nonocだ!」って感じがしました。すごく工夫して歌ったのが伝わりました。ポップな曲調で不安定な感情を歌っているので、そういう部分にすごく共感しました。オープニングの“知らなきゃ”とエンディングの“Change”は言っていることが似ているなと思ったんですけど、じっくり聴き込んでいくとそれぞれに個性があるんですよね。
nonoc : オープニングは感情に語りかけてくる部分があるんですけど、私の“Change”は歌うときに、あっけらかんとした感覚を想像していたんです。結果的に、2曲それぞれに違った良さが出たかなと。エンディングテーマにも合っていますし。ポップな要素もシリアスな要素もある作品なので、自分が思った答えとは違っていても、このエンディングであっけらかんとしてる感じになってくれたらいいなと思います。
一歩踏み出すきっかけを与えることができたらすごく幸せ
──おふたりはそれぞれ『ハコヅメ』の登場人物のなかで好きなキャラクターはいらっしゃいますか?
nonoc : 私は、牧高さんが好きです。演じていらっしゃる花澤香菜さんの落ち着いたトーンのキャラが好きで、すごくキュンとしました。男性ばかりの職場で紅一点で働きながら、苦手な仕事にもしっかり向き合っていて、好きになる人も多いんじゃないかなと思います。牧高さんは新撰組が好きで、仕事として似ているから警察に入ったというキャラクターなんですけど、実際そういう人もきっと本当にいるんだろうなって思うんですよね。理由はそれぞれあると思うんですけど、そういう理想と現実の仕事のギャップに苦しんだこともあるだろうし、そういう人間ドラマもおもしろいなと思います。
安月名 : 私は山田くんですね。なんだかんだいちばん冷静に人のことを見ているなと思うんですよ。おっちょこちょいな部分もあるんですけど、周りの人に寄り添っていて。いちばん人間らしさがあると思うんですよね。それがすごく出ていて癒されますし、良いポジションのキャラだなと思います。あとは源部長とのペアの感じも大好きなんです。
nonoc : 確かに。でも、源部長は結構ずるいところあるからなー。
安月名 : そうなんですよ。原作では、源部長のかっこいいセリフで終わる話も結構ありますし。「源部長、今回もうまく収めたな」と思いますね(笑)。
──憧れのキャラクターはいますか?
安月名 : そこはやっぱり藤部長ですね。
nonoc : 私もそうですね。あれだけの気配りができて、人に嫌な気持ちを抱かせないで、聞きたいところはちゃんと聞くところに憧れます。そこはどんな人間関係でも参考になると思います。
──おふたりは『ハコヅメ』の登場キャラクターでいえば、誰に近いタイプだと思いますか。
安月名 : 誰かに当てはめるならば、nonocちゃんは牧ちゃんタイプだと思う。なんだかんだ冷静に仕事をしているので。
nonoc : 確かに楽観主義者ではないですね。結構真面目なタイプだと思うし。1個のことが好きだったら、それについてずっと考えていますし。莉子ちゃんは誰だろうなー。でも、莉子ちゃんはスタミナがすごいんですよ。警察の道場で教える教官みたいな感じですかね。体つくりから入るタイプですよ、きっと(笑)。
──では、最後にメッセージをお願いします。
nonoc : 『ハコヅメ』は原作ファンの方がすごく多いので、そういう作品に携われることが光栄です。『ハコヅメ』は形のない、正解のないものに向き合っていく仕事を描いた作品だと思っています。私、個人としてはこの「Change」が5枚目のシングルにはなるんですけど、カップリングの3曲含めて、変わりゆく自分の心情やそのときの正解を含めて、私が作りたいものを今回詰め込ませていただきました。ぜひ、フルで聴いてみてください。
安月名 : この作品に携わらせていただくことがすごく嬉しいです。楽曲を聴いていただいて、数々の名シーンを心に思い浮かべてもらえたら嬉しいですし、「あ、無理かなー」って一歩が踏み出せない人にこの曲を聴いてもらって、ちょっとでも一歩踏み出すきっかけを与えることができたらすごく幸せです。最後の最後まで、アニメを盛り上げていけるように頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。
ここからは、安月名莉子とnonocの個別インタヴューをお届けします!
安月名莉子の個別インタヴューはこちら nonocの個別インタヴューはこちら