INTERVIEW : 安月名莉子
安月名莉子の最新シングルのカップリング曲“知らない”。ポップな表題曲“知らなきゃ”とは対照的に、自分の感情を吐露するように歌われているこの曲。カホンとアコースティック・ギターによるシンプルなアレンジで、聞く人の心にまっすぐに届く歌である。彼女はどんな想いでこの歌を作り上げたのか。その気持ちを探った。
インタヴュー&文 : 西田健
写真 : 西村満
音楽に対する意識がすごく変わりました
──2021年は、どういう年でしたか?
安月名 : 去年は、支えてくれる人の大切さを切に実感できたのと、そのおかげで自分にもっと自信を持てた年でした。大きな出来事は、8月のワンマン・ライヴをクラウドファンディングで成功できたことですね。応援してくださるみなさんの声がダイレクトに届く機会を頂けました。こんなに支えてもらっているからこうして音楽活動ができていることを実感できて、いろんなものを大切にしたいという気持ちと、もっともっと上に上がりたいという気持ちが一気に芽生えました。あとは、2021年を通して音楽に対する意識がすごく変わりました。
──どういう感じで変わっていったんですか?
安月名 : 「もっと気を引き締めていけ!」みたいな(笑)。8月のライヴがすごく楽しくて、曲も作りたい、歌も上手くなりたい、パフォーマンス力も上げたいって、いろんなことをやりたい欲が湧きすぎて、一時期頭がこんがらがってしまったんですね。そこで周囲の方が「いまは、とにかく歌を仕上げること。体力や自分に自信をつけること、それだけにシフトしていきなさい」って言ってくださって、それで安心できたんです。そこから心機一転、2021年後半は筋トレ、ジョギングから、トレーニングをひたすらやりました。そうやって自分に自信がちょっとついてきたときに、やっと周りが見えてクリアになってきた感じです。
──体を鍛えるところからはじめたんですね。
安月名 : ボイトレの先生に「歯磨きを毎日をするくらいランニングを習慣づけなさい」と言われて、嫌でも毎日走ってみたんですよ。すると、楽しくなってきたんですね。歯磨きをして、口のなかがスッキリするように、いままで考えていた悩みやいろんなことがスッキリしてきて。これまで活動してきて、ようやく私はスタートラインに立てたところなのかなって実感が湧いてきました。
──一言で表すなら、どんな年でしたか。
安月名 : 一言で言うと「大変」かな(笑)。大きな変化ができたというのもあるし、大変でもあったっていう感じでした。大変だった分、大きな変化ができましたね。
──そして、1月26日には最新シングル『知らなきゃ』がリリースされます。表題曲については、合同インタビューの方で聞いたので、ここではカップリング曲“知らない”について聞きたいと思います。
安月名 : この曲は、私が頭がこんがらがってしまったときに抱いていた、自分の想いをそのままぶつけるような曲です。「知らなきゃ」が出来て、さあカップリングを作ろう!と制作がスタートしたんですが、「どんな曲が歌いたい?」って打ち合わせで聞かれた時になにも答えられなくなってしまって……。コロナ禍の環境もあってあんまり人とコミュケーションも取れなかったなかで、「いまこういう世のなかで自分はなにを届けたいんだろう」とか「自分はなんで歌を歌っているんだろう?」とか疑問が生まれてしまったんです。
──なるほど。
安月名 : 色々話していくなかで、「なんで歌っているのかわからないなら、その気持ちをそのままぶつけてしまえばいいんじゃないでしょうか」って、作詞・作曲を担当されているタナカ零さんがおっしゃってくださって。そこで、いま思っていることや、自分の本当にやりたいことを、綺麗にまとめようとせずごちゃごちゃのまま書き出して。そこで吐き出した感情に、タナカさんが「知らない」というタイトルをつけて書いてくださいました。
100人に聴いてもらったら、ひとりくらいは共感してくれるかな
──安月名さんの内面をそのままぶちまけたような歌詞だったので、かなり驚きました。
安月名 : いままで、自分が本当に伝えたいことをそのまま歌詞にしてしまったら、ライヴで感情が昂りすぎて歌えなくなってしまうんじゃないか?と思っていたんです。だから、こんな風に自分の感情を音楽にしてもらえたことがすごく嬉しかったですね。あと、いままではみんなに共感してもらえることが喜びでもあったんですけど、今回の曲に対しては共感してくれなくてもいいやと思っていて。「100人のうち1人くらいは共感してくれるかな」みたいな。私の全てを理解してくれというより、こういう気持ちで歌っているんだということを伝えられたら良いなと思ってます。
──歌詞には、ダークな部分も入っていますよね。
安月名 : 2番に「ピンスポの外を蠢くモンスターの眼が」っていう歌詞があるんですけど、やっぱり沢山の方と一緒にお仕事するなかでは色んな意見が生まれて、それに全部に応えたいって思っちゃうんですが、難しくて苦しくなってしまう時もありますよね。そのときのことをモンスターに喩えたりしました。でも、こういう複雑な感情って、言葉ではなく音楽でしか届けられないなっていうのを改めて教えてくれる楽曲ですね。こういうストレートな楽曲をいただけたことがすごくありがたいので、大切にしていきたいです。
──この曲は、『歌うんだよ歌うんだよ……』、『not true not true……』のように繰り返しの部分も多いですよね。
安月名 : そこがすごくリズミカルなんですよね。カホンとアコギでシンプルかつライヴ感のあるアレンジになっているので、イヤホンで聴いていただいたら、ライヴをそのまま聴いているみたいな感覚になるかと思います。言葉を大切にしたい楽曲だったので、そこをどうみんなが聴いて捉えてくださるか、すごく楽しみです。
──使っている楽器が少ないからこそ、ヴォーカルがすごくダイレクトに響いてきます。
安月名 : この曲は毎回同じ風に歌えないなと思っているんです。歌うたびに異なる感情が湧いてきそうなので。あの時は分からなかったけど、もしかしたら将来、自分の歌う意味を見つけられているかもしれないですし、私はこのために歌っているんだみたいになるかもしれない。いまは、生きている限り歌うんだっていう気持ちなんですけど、これからどういう風に感情が変わっていくのかなというのもすごく楽しみな楽曲です。
──2021年は大変な年だったということでしたけど、2022年の抱負はどうですか?
安月名 : 「生きてる限り歌うんだよ」って曲で言ってるくらいなので、せっかくやるならとことん本気でライヴをやりたいなって思います。去年は、自信を持つことができて改めてライヴってやっぱり楽しい場所だなって感じることが出来たので、自分のためにも一緒にチームでやってくれる皆さんのためにも、とにかく本気で「やるならとことん!」です。
──どんなライヴを見せていきたいと思っていますか?
安月名 : ライヴをやらせていただくごとに、次やりたいことっていうのがどんどん見えてきています。でも、方向性としては、完璧なものを届けたいという言葉がいちばん当てはまると思います。去年までは人間だから完璧じゃなくてもいいじゃないかと思っていた部分もあるんですけど、やるからには完璧なものをみんなに届けたいし楽しみたいですね。
──今回のシングルも、歌いこなすのはかなり難しそうですけども、ぜひライヴで聴いてみたい曲だと思います。
安月名 : そうなんですよ、難しいです(笑)。でも、難しさも伝わらないくらい身体に入れ込みたいです。難しい曲がくると、「これを歌いこなしてやる!」って結構燃えるんですよ。それをライヴで楽しく歌えたときは、すごく嬉しいです。去年の12月に京都ロームシアターで〈京 Premium Live〉というイベントに出させていただいたんですけど、久しぶりにあれだけ大きい会場で歌えて、羽が生えたように楽しくて。自分が楽しむためにも、みんなも楽しいって思ってもらえるためにも、とことん音楽に向き合わなきゃいけないんだって思えました。その感覚を忘れずに、2022年も羽ばたいていきたいと思います。
安月名莉子とnonocの対談インタヴューはこちら
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