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永原真夏 インタビュー
永原真夏と服を選びながら、お店のスタッフの方々に高円寺文化について話を伺いながら、終わる頃にはお互いにへとへとになってしまったこのツアー。友達とはしゃぐようでとても楽しかったのだけれど、どうしてもアーティストとしての永原真夏とも話をしたかった。なぜなら、前作『FUTURES』と『ひなぎくと怪獣』を聴いた時に、「自分が10代の頃にSEBASTIAN Xがあれば」と強く感じたから。その肯定的な言葉と強い音楽の力に救われたんじゃないかと思う。今SEBASTIAN Xのライヴに来ている制服姿の女の子たちもきっとそうだ。ステージを見つめる目は誰も彼も爛々としていて、真夏が発する言葉を全て吸収しようとしている。
では、その言葉の発信元、永原真夏は一体どんな10代を過ごしてきたのだろう? 本作のタイトルに込められた “「怪獣」=苛立って飼いならせない感情”“「ひなぎく」=その幼い衝動”の意とは? 彼女が彼女を作ってきた過去、現在、未来をバック・トゥ・ザ・フューチャーするべく、高円寺ツアーの合間に少しインタビューする時間を頂いた。
頼もしいじゃないですか、怪獣がいてくれたら
――真夏さんは音楽に目覚めるのと服に目覚めるの、どっちが先でした?
真夏 : 音楽が先です! 近所のお兄さんがバンドをやってるのを見て、小3にはバンドをやろうって決めてました。お洋服はお姉ちゃんの影響で、小6あたりから「Zipper」や「CUTiE」を読み始めたのが最初ですね。
――小3でバンドって早い! でもメンバーはなかなか見つかりませんよね。
真夏 : そうなんです。高校で音楽好きの友達をやっと見つけたと思ってもみんなヒップ・ホップ好きで、だから高校の前半はクラブでよく遊んでました。ライヴ・ハウスに足を踏み入れたのはちゃんとバンドをやり始めた高校2年からです。
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――新作『ひなぎくと怪獣』、真夏さんのコメントによるとテーマが“衝動”“苛立ち”なんですよね。この響き、すごく10代っぽいと思ったんです。
真夏 : 今あたしは24歳なんですけど、10代の衝動って無知ゆえに生まれたものだと思うんです。守られているがゆえに自分勝手に暴力的に振りかざすことができて、その分爆発力もあった。多少はみ出すことがあっても「若い」で全部済んじゃう。でも20代中盤にもなると、音楽をやりながらでもある程度社会とコミットして生きていかなきゃいけない。例えば高校生の時なら、ちょっとむかつくことがあったら「ふざけんなよ」って殴りかかれたかもしれない。今思うと先生に対してすごく無礼だったなあとか。「言ってる意味がわかりませーん」みたいな。
――そんな生徒だったんですか(笑)?
真夏 : はい(笑)。でもそれってこの年齢では許されないですよね。昔は自分の感情をすごく強く持っていて、軽薄にも人を簡単に否定することができたんです。でも歳を重ねるにつれてたくさんの人と出会って、その中で「自分と違うことは間違いではないんだ、色んな人がいていいんだ」というのを理解し始めてきて、振りかざすことをしなくなった。
――私も20代中盤に「衝動」ってものについてすごく考えたことがありました。10代に芽生えた衝動でどこまで突っ走れるだろうって。衝動は尽きないものだと思いますか?
真夏 : 尽きないんじゃないですかねえ。衝動って10代だけのものじゃなくて、20代には20代なりの、30代には30代なりの衝動が芽生えてくる。その年齢に応じた折り合いの付け方、いい付き合い方があるなと思って、それをテーマに作ったのがこの作品なんです。
――真夏さんが今抱える、24歳なりの衝動とは?
真夏 : 今は10代とは逆で、許容したい気持ちが強い。何で人の意見を受け入れられないんだろう。もっと自分の器を広くしたい、もっと理解したい、もっと人の話をちゃんと聞きたーい! って衝動ですね。
――SEBASTIAN Xのライヴには制服姿の女の子もいますよね。そこでいつも思うんですけど、自分が10代の頃にSEBASTIAN Xがあったら救われただろうなって。
真夏 : わ、嬉しい!
――若くあることを肯定してくれている感じがするんです。今作でそれを特別強く感じたのは、5曲目の「未成年」ですね。
真夏 : 「未成年」に関して言うと、私が10代の頃、10代であることがコンプレックスだったんです。ライヴ・ハウスやクラブで会う大人たちが全然相手にしてくれなくて、それは自分が高校生だからだと思ってた。若いってことがすごく嫌で、初対面の人に二十歳だって嘘をついたり、高校も私服のところに通ったり、10代っぽいことを何もしたくなかったんです。だから思春期の思い出を振り返ろうにもいつも「何だったっけ? 」ってなっちゃう。もっと当時の自分を肯定してあげてもよかったな、意地はっちゃってごめんよって気持ちで書きました。
――ライヴ会場に来てる中学生や高校生の子たちと喋ったりします?
真夏 : しますします! この前、志望校のパンフレットを持ってきて「どこがいいと思います? 」って相談されました(笑)。若い子たちには「今しかできないことしなよ!」って思うし、大人の女性も来てくださるんですけど、みなさん強い意志を持っていてすごく素敵で、この人たちに若さは必要ないなと思う。同年代の子とは「まあ、お互い悩むよねー」って話したり。どの年代の方もみなさん素敵です。
――真夏さんが10代の頃に聴いて救われた音楽はありますか?
真夏 : フラワーカンパニーズです!
――それは、どういうところに?
真夏 : あの鈴木圭介さんの高い声が、自分の中の悶々としたものを打ちのめしてくれる。刺してくれる。勝ってくれる感じがしたんです。高音の張りつめた感じが自分のヒリヒリしてた気分と同調して、それを歌っているのが30代のおじさんっていうのもすごくよかった。フラカンが「大人になるっていいことだよ」ってことを歌ってくれていたので大人になることに不安はなかったし、自分がどう生きてもああいう大人がいるんだって思うと、すごく救いでした。
――SEBASTIAN Xの歌詞ってファンタジーだけど、フィクションじゃない感じがするんです。物語仕立てなんだけど説得力がある。前作の『FUTURES』にも今作にもキャラクターが出てきますよね。もしかしてこれって、真夏さんが自分の感情に名前を付けてキャラクター化して出してるのかなと。
真夏 : 初めて言われました。うん、でも、その通りです!
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――でもライヴでは体全部を使って大きく動いて、表情も曲ごとに違って、舞台女優のようにも見える。真夏さんは物語を紡ぐ語り手、演じる役者、自分でどっちだと思いますか?
真夏 : そうですね… 難しい。役者、かな? 自分がライヴをしてて不自然がない時は、歌の中の主人公になりきれる時なので。それって同時に語り手でもあるのかもしれないけど、傍観するのではなく、物語の中に入って語りたい。映画やミュージカルもすごく好きで、身体表現には興味があるんですよね。
――例えばどういう映画が好きですか?
真夏 : 「サウンド・オブ・ミュージック」や、アンデッド系のホラーが好きです!
――「MIDNIGHT CLUB」を聴いて「ロッキー・ホラー・ショー(1975年製作のホラー・ミュージカル映画)」っぽいなと思ってました! あっちは夜の怪しい洋館だけど、こっちは夜の怪しい遊園地って感じ。
真夏 : 「ロッキー・ホラー・ショー」好きですよ! この曲ではゾンビやフランケン・シュタイン、吸血鬼のような死なない生き物たちの世界を歌いたかったんです。
――真夏さんって絵も描けるし、着てる服もこだわってるし、こういう物語立てた歌詞を書けるなら作家という道もあったと思うんです。表現の選択肢が多い中で、なぜ音楽を主軸に選んだんですか?
真夏 : これを話すとちょっと電波っぽい発言になっちゃうんですけど(笑)、絵や服は完全に趣味です。服は全裸でいる訳にはいかないし着なくちゃいけない。どうせ着るなら人に面白がってもらえたり自分のテンションが上がるものにしたいって気持ちなんですね。音楽に関しては、たとえば、野外で歌えば山と共鳴できるかもしれない。声の周波数によってはイルカに聴こえるかもしれない。自分の生きている世界で脈々と続く、文明と関係のないところで当たり前にずっとあり続けるものと、今の文化的な人間の生活を、歌は繋げられるんじゃないかと思ってるんです。自然界で浮いてしまっている人間と超自然なものを同じ世界で共存させられるんじゃないかって。そういう気持ちでずっとやっています。
――他の表現手段とは全く別のベクトルで考えているんですね。では最後の質問です。真夏さんは、真夏さんの中の怪獣を飼い続けますか? それとも時期が来たら手放す?
真夏 : 飼い続けますね。
――飼い慣らせそうですか?
真夏 : 飼い慣らしたいです、60歳までに!
――期限は結構先ですね(笑)。なぜ、ずっと自分の中に怪獣を置いておきたいのでしょう?
真夏 : 私は女だから、いつか結婚するかもしれないし子供も産むかもしれない。そしてふとした瞬間に「私何やってんだろう」って思ってしまうかもしれない。そういう時に頼もしいじゃないですか、怪獣がいてくれたら。こいつがいるならどこに行っても、誰といても、何をしてても、お母さんになっても大丈夫だって思える。そう思えるような相棒に育てたいですね。
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SEBASTIAN X PROFILE
2008年2月結成の男女4人組。2008年6月初ライヴを行なう。その後ハイペースなライブ活動を展開。 2008年8月に完全自主制作盤『LIFE VS LIFE』リリース。その後、2009年11月6日に初の全国流通盤となる 『ワンダフル・ワールド』をリリース、さらに2010年8月に2nd Mini Album『僕らのファンタジー』をリリース。2010年から年に一度、完全生音ライヴを開催。2011年1月には初の配信限定シングル『光のたてがみ』をリリース。新世代的な独特の切り口と文学性が魅力の Vo.永原真夏の歌詞と、ギターレスとは思えないどこか懐かしいけど新しい楽曲の世界観が話題に。なんだか凄いことになってるインパクト大のパフォーマンスも相俟って、一際目立ちまくっている存在になっているとともに、ライヴ・ハウス・シーンで活動する他のバンドたちとは一線を画す挑戦的な活動方針/姿勢も大きく評価されている。そして、2011年10月、1st Full Album『FUTURES』をリリース。
>>SEBASTIAN X WEB
>>SEBASTIAN X 『ひなぎくと怪獣』特設ページ
■Twitter : SEBASTIAN X / 永原真夏(vo.) / 飯田裕(Bass) / 沖山良太(Drums)
LIVE SCHEDULE
2012年7月13日(金)@TOWER RECORDS新宿店 インストアライブ(観覧無料)
2012年7月14日(土)@つくば市豊里ゆかりの森野外ステージ
2012年7月22日(日)@北海道いわみざわ公園
2012年7月25日(水)@京都MUSE
2012年7月29日(日)@東京工学院専門学校 中庭特設ステージ
2012年9月16日(日)@長野県木曽郡木曽町 キャンピングフィールド木曽古道 特設ステージ
SEBASTIAN X「ひなぎくと怪獣」レコ発ツアー
■ツアー前半戦は対バン形式!
2012年8月9日(木)@広島4.14
w / 忘れらんねえよ / 快速東京
2012年8月10日(金)@岡山ペパーランド
w / 忘れらんねえよ / 快速東京
2012年8月24日(金)@高崎 club FLEEZ
w / グッドモーニングアメリカ / オワリカラ / THE ラブ人間
2012年8月26日(日)@福岡UTERO
w / シャークニャークス / TACOBONDS / and more
2012年8月31日(金)@札幌COLONY
w / 本棚のモヨコ / THE BOYS & GIRLS / and more
2012年9月11日(火)@新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
w / Wienners / 雨先案内人 / and more
2012年9月17日(月)@米子 AZTiC laughs
w / Wienners / 忘れらんねえよ / and more
2012年9月19日(水)@松山 サロンキティ
w / Wienners and more
■ツアー後半戦は初のワンマン・ツアー!
SEBASTIAN X ツアー2012 "ひなぎくと怪獣" ファイナル・シリーズ
SEBASTIAN Xワンマン・ライブ「怪獣オーケストラ」
2012年9月21日(金)@仙台パークスクエア(ワンマン)
2012年9月28日(金)@名古屋SONSET STRIP(ワンマン)
2012年9月29日(土)@大阪・十三ファンダンゴ(ワンマン)
2012年10月11日(木)@渋谷CLUB QUATTRO(ワンマン)