「もっと頑張れよお前!」みたいな(笑)
──“ライブハウスブレイバー”は元々弾き語りでやられていた楽曲をバンドでアレンジした曲なんですよね。今回バンドでやろうと思った理由はどうしてだったんでしょう?
近石 : 弾き語りの時点でバンド・サウンドをイメージしてたからですかね。元々バンドが好きで、寄せ集めの初心者のバンドを高校の時やってたし、軽音楽部にも所属していて。いまは弾き語りのアーティストを聴くこともあるけど、バンドが好きで音楽をやりはじめたので、この曲も弾き語りでは弾きつつも頭にはドラムやベースが流れてていたんです。
──この曲は、歌い出しから、メロディにはのせずに自分の思いをぶつけるパートが印象的ですよね。
近石 : MOROHAさんのポエトリー・リーディングでの歌唱をはじめて聴いたときに「メロディってなくていいんや、メロディがなくても感動してまうんや」ってことに心が動かされて。でも、そこは自分が真似してやるところじゃないので、いいとこどりをできたらいいなと。入りのところからどれだけインパクトをつけたろうかって思っていたので。まずは拍にはめないでおこうというのと、メロディなんかわからへんくらいのところで叫ぶように歌ってやるぞ! っていうのを頭に置きながら、歌詞だけ書いてギターをぐわーっと弾きながら叫ぶのをキーに合う程度にやってみたら、いつの間にかこの感じになっていました。
──歌詞の内容も「声が似ていた歌手の声を真似して みんなは褒めてくれた」や「だけどあの人にはなれなかった あの人の歌だから」の部分だったり、結構ドキュメンタリーチックですよね。
近石 : “ライブハウスブレイバー”は自分の過去を完全には肯定してはいない曲なんですよ。誰しも誰かに憧れて音楽を作ったり絵を描いたりみたいなところがあると思うんですけど、僕はそれがたまたまBUMP OF CHICKENだったんです。バンプの曲をきいてギターをはじめたし。でも、やっぱり真似しちゃうんですよね。いろんな歌手が好きで歌ってたんですけど僕は全部モノマネしないと気が済まなかったんです。でも、それが僕のなかでは「これじゃあかんな」と思っていてオリジナルをはじめたところがあって。だからこそ、さっき言っていた“お守りの唄”のファンレターは、そこを肯定してくれたのが嬉しかったですね。
──この曲は作られたのは、実は結構前なんですよね?
近石 : 2、3年前だったと思います。
──曲を作った当時といまではライヴハウスという存在も状況が変わっていると思うんですけど、感情に変化はありましたか?
近石 : 感情は変わっているけど、この曲に関しては思ってないから歌えないってことはなくて。コロナ禍でライヴ産業が大変ななかで、それでも歌っている人たちに向かって歌えばエールにもなる曲だと思っていますし。
──当時よりさらにこの曲大切になっていったんでしょうか。
近石 :その頃は本当にライヴハウスで歌ってお客さんが誰もいなくて僕の友達が隅の方にポツンといて。それをすごく思い出しますし、そういう頃から歌っていたので。いまはもう少しお客さんが見てくれるようになりましたけど、そのときの熱をこの曲は僕に思い出させてくれます。今後もどれだけお客さんが増えてもこの曲はずっと歌い続けるんじゃないかなと思っています。
──結構、自分の中の記念碑的な曲になってるんですか?
近石 : そうですね、初心を思い正してくれるような曲です。自分のお尻を叩いてくれるような。「もっと頑張れよお前!」みたいな(笑)。