
祝5周年! スペシャル・ユニットが記念盤をリリース
ExT Recordingsの5周年記念アルバムが到着! DE DE MOUSE、CHERRYBOY FUNCTION、やけのはら、レーベル・オーナーでもある永田一直の4人によるスペシャル・ユニットEx Boys(エックス・ボーイズ)が、クラブ・アンセムにもなった数々の名曲や、セッションによって生まれた新曲をリアレンジ&リミックス。PC、リズムマシン、グルーヴマシン、TB-303、シンセサイザーによる生演奏とも言えるスタイルでレコーディング、ミックスされた、5周年にふさわしいスペシャルな記念盤!
Ex Boys / PLAYS
【TRACK LIST】
1. dancing horse on my notes(DE DE MOUSE) / 2. let's spend the night together(やけのはら) / 3. sunset quantize(CHERRYBOY FUNCTION) / 4. acid final test(Ex Boys) / 5. the endless lovers(CHERRYBOY FUNCTION) / 6. minimal compact(Ex Boys) / 7. another side(CHERRYBOY FUNCTION) / 8. supernova girl(DE DE MOUSE)
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永田一直インタビュー by 西澤裕郎
「Supernova Girl」で起こったモッシュを見て、新しい時代が来たと思った
——以前のレーベルを休止してからはレーベルをやるつもりがなかったということですが、2007年にはExT Recordingsを立ち上げて、DE DE MOUSEの『tide of stars』をリリースしていますよね。そのきっかけとして、やはりDE DE MOUSEさんの影響が大きかったのでしょうか。
永田一直(以下、N) : 2006年に最後のRAW LIFEがあって、1ブース仕切らせてもらったんですよ。そこにはチェリーボーイ(CHERRYBOY FUNCTION)も、やけ(やけのはら)も出ているし、ELEKTRO HUMANGEL、CARREとか、KEIHIN、Pan Pacific Playa(PPP)のヤツらも出ていて、今見てもすごいメンツなんですね。その中でもデデ君(DE DE MOUSE)は、その頃はまだ地道にライヴ・ハウスで活動しているレベルで、あまり知られていなかったんです。だから、あえてそのメンツにぶつけました。そしたら、とんでもないことになっちゃって。1曲目が「supernova girl」で、そんなに激しくない曲なのに、モッシュが起こったんです。それを見てこれは新しい時代が来たと思ったんですよ。
——これは売れるっていう視点より、目の前で起きていることに興奮したと。
N : それまでは、もう新しいことなんて始まらないと思っていたんですよ。
——その衝撃に動かされるようにCD制作をしますが、全国流通はせず、ロス・アプソン(LOS APSON?)や静岡のペルセプト(PERCEPTO)など、信頼できるショップにのみ卸したんですよね。
N : 最初は1000枚作って売り切れればいいじゃんくらいの気持ちで、流通はあえて通さず知っている7店舗くらいに置いてもらったんです。そしたら700枚くらい売れて、タワーレコードなどの大型店舗からも連絡がくるようになりました。残りの300枚がはければいいかなくらいに思っていたら、1500枚もオーダーがきて、加速度的にエラいことになっていっていったんです。
——もともと持っていたDE DE MOUSEの音楽の可能性が、RAW LIFEの盛り上がりによって押し上げられたと。
N : 起爆になりましたよね。ただその後に、RAW LIFEもテクノも知らない人たちが相当食いついたんですよ。『tide of stars』に関しては、前のレーベルの名前も使っていないし、DE DE MOUSEのアーティスト写真があるわけでもないんですね。さらに、一人なのかバンドなのか、男なのか女なのか、日本人なのか外国人なのかも分からない。それもよかったんでしょうね。

——波及力はすごかったですよね。当時地方に住んでいた僕もすぐにCDを買いにいきましたもん。
N : 音のマジックがすごかったですからね。頭に音楽が回るときってあるじゃないですか? それが2、3年なかったんですよ。「baby's star jam」のデモを聴いたときに頭の中をずっと曲が回っちゃって、これは何かあるなと思ったんですよね。
——売り上げという、目に見える形で盛り上がっていくのは、レーベルとしても初めての体験だったんじゃないですか。
N : それまで、ここまで大きいのはなかったですよね。初めて万単位で売れましたから。そのエネルギーの広がりはすごかったですよ。90年代は何かのムーブメントだったり、レーベルの盛り上がりが中心だったから、一人の作品がここまで爆発するってことはほとんどなかったですし。
——その盛り上がりに比例して、永田さんの仕事も激増し、ライヴ・オファーへの対応などもされていたそうですね。そこで、永田さん自身のアーティスト活動とレーベル業務に専念するか、デデさんのマネージャーになるかで悩んだそうですね。
N : 今思うと、マネージャーにしておけばよかったなと思いますね(笑)。
——本当ですか?
N : というか最近、自分は表に立つのをしばらくやめようと思ってるんですよ。この間、(代官山)UNITでもの凄いパーティ(幻の名盤解放同盟結成30周年記念 愛駅meets和ラダイスガラージ)をやったので、それを機にとりあえずは現場を離れようと思ったんです。
——表に立つのをやめるというのは、どういうことですか?
N : 少しさかのぼりますけど、2011年の頭に死にそうになったんです。心臓が止まりそうになって入院して。入院後2ヶ月間療養をして、さあこれからだと思ったら地震が来て、クラブもライヴ・ハウスも辞めちゃう人が相当出てきたんですね。それが逆にイヤで、GW以降は毎週どこかでDJやライヴをやっていました。年末にはレーベルの5周年に向けて、ものすごい勢いでEx Boysのアルバムを作って、5周年パーティをやったし、他にも歌謡曲のDJや、即興、ノイズもかなりやりました。2011年はそれらを並行で一気にやってきて、最後にUNITでやりきったので、2012年は完全に経営にシフトしようかなって。
クラブ・シーンの二極化
——関東のクラブはどういう状況なんですか。
N : 今、クラブ・シーンは二極化していますよね。大きい所と、すごい小さい所。中間がないというか。小箱はRAW LIFE以降の文化みたいのがあるんだけど、DJ飲み会じゃねえかっていうのも多い。内輪に入れないと楽しくないっていうか。自称DJとか自称ネット・レーベルなんて、いくらでも言えちゃうから数は無数にあるんですよ。いざ現場を見てみると、小さいところで固まってしまっている。5、6年前はそこが刺激的でしたけど、今はそれが飽和しちゃったなと。
——DJやネット・レーベルが増えているとすれば、ExTで音源を出したい人の数も増えてくるかもしれませんね。出してほしいという音源が送られてきた場合、どういう基準で選別をするのでしょう。
N : 実は、これまでExTで音源を募集したことはないんですよ。前のレーベルは、どんなに少なく見積もっても500本以上デモが来ていて、ちょっといいと思ったらとにかく出し続けていたんです。だから140~150タイトルくらいあるんですよ。ほとんど売れませんでしたけど。その反省もあって、ExTでは5年経っても、まだ10数タイトルしかありません。
——なるべくリスクを減らして、選別してからリリースするんですね。
N : 売れないことで夢を失っちゃう人もいますからね。だから、これだと思う人にしか声をかけませんでした。でも今年は募集してみようかなって思っています。ただ、デモテープ募集って言い方じゃなくて、オーディションっていうふうな謳い方にしようと。
——最初から条件をつけて、ふるいにかけるということですか。
N : 今、活躍しているDJ、トラック・メイカーって78年生まれ近辺が多いんですよ。チェリーボーイもデデ君もその辺りだし、やけもCRYSTALもその辺。日本の90年代テクノ・シーンに影響を受けた30代で頭角を表す人はこれ以上出てこないんじゃないかと思っています。
——それじゃあ、年齢制限のようなものをつけるんですか。
N : 20代以下って制限をつけようと思っています。今、20代前半でネット・レーベルをやっている子たちで、すごい勢いあるのがあるじゃないですか。あの子たちって、デデ君とかチェリーボーイのファンだったみたいで、聴いていて新しいと思うんですよ。そういう若い連中を拾っていかないとレーベルも続かないだろうし、新しいことも起こらないだろうなって。また探してみたいんですよ、デデ君みたいな人を。
——今後は、クラブからだけでなくネットから新しい動きが出てくる可能性も多分にありますからね。
N : 今まで、そっちにまったく目を向けていなかったんですよ。制作でがっつりやろうと思っている以上、そこは避けて通れないというか、目を向けないとレーベルが成り立たない。こんなこと1年前はまったく思ったことなかったですよ。
デデ君のライヴを見て、5年前のことにしがみついちゃっているなと気づいた
——Ex BoysはExTの1周年イベントで、1回限りのユニットとして始まったそうですが、どういうアイデアを元に始まったのでしょう。
N : デデくんがチェリーボーイの曲の上でキーボードを弾きたいって話から始まったんですよ。5年前にライヴをやったら、すごくよかったので、またいつかやりたいなと思っていたんです。
——5年越しでアルバム制作とリリースをすることに至った理由は?
N : 1周年のときは、やけにDJミックスを作ってもらったんだけど、同じ手は使えないなと思って、Ex Boysをやろうということにしたんです。前のライヴを再現するような気持ちでスタジオに入ったんですけど、まったく違うものになりましたね。
——データのやり取りではなくスタジオで録ろうと思ったのは、前回のライヴが下敷きにあったからなのでしょうか。
N : 家でファイルを回し合って作ることも出来たんだけど、特にデデ君がスタジオに入りたいって言って、本当に何も決めず曲だけ決めて録ったんです。デデ君は手弾きのキーボード、PCでヴォイスやシーケンスを鳴らして、チェリーボーイがMC-505をシンク無しで合わせて、やけはマシン・ドラムで、俺はTB-303やSEを入れたりして、「せーの」で録ったんです。
——一発録りなんですか?
N : ほぼ一発ですね。もちろん、うちに持って帰って差し替えたり、編集は多少したんですけど。みんな忙しいからスケジュールが合わなくて、やっと合った日が平日の夜中だったんです。明け方に延々とジャム・セッションしている曲もあって、みんな朦朧としていたから「これ使い物にならないんじゃないの」って言っていたんですけど、持ち帰って編集したら出来たって曲もあります(笑)。
——4人とも多忙だから、相当無茶なスケジュールで動いていたようですね。
N : 本当にすごいスケジューリングでしたね。12月23日の5周年パーティに間に合わせるために、11月中に作業を終えたかったんですけど、2回目のスタジオに入れたのが12月7日だったんですよ。その日に残りの3曲を録って、速攻でミックス・ダウンをやって14日に直接マスターを持っていった。同時にジャケットのデータも入れて、23日にものが出来たっていう。やれば出来ると思いましたね。
——スピード感がありますね(笑)。このアルバムが出来たことによって、少し落ち着いて、次に迎える気持ちが出てきたのかもしれませんね。
N : そうですね。これで一区切りついたというか。それと12月に渋谷WWWのデデ君のライヴを見たら、「east end girl」とか昔の曲が全く違うアレンジになっていて、すごく意欲的だったんですよ。それを見たら、俺は5年前のことにしがみついちゃっているなと思って。アップ・デートは出来たので、次に向かわないとって思いました。
——今年は次に向かっていく前向きな年になりそうですね。
N : そうですね。昨年、色んなものを総決算しちゃったから。かといってこの仕事を辞めるわけじゃないから、新しい人を探そうと思っています。
クラブに20代がいないっていうのは、相当おかしい状況ですよ
——これまでのファンに訴えるだけでなく、若者を中心に新しいカルチャーを作っていく意識が今必要ですよね。
N : そうしないと成り立たないでしょうね。かといって露骨なやり方だとしょうがないし。特に未知の分野で、新しいものを仕掛けたいなと思っています。20代ってエネルギーが一番ある時期じゃないですか。そこをまた見てみたいんですよ。
——クラブに限らずロックなどのライヴハウスも、年齢層が上がってきている印象があります。
N : そう。この間、友人とも話していて思ったんですけど、まわりはほとんど30歳を越えているんですよ。世間的に見れば30歳って普通に中年ですよね(笑)。あと、クラブに30代しかいない状況っていうのも時々あって。昔は高校生とかが頑張って来るものだったじゃないですか。でも今はIDチェックが厳しくなって、頑張っても20代ですよね。クラブに20代がいないっていうのは、相当おかしい状況ですよ。
——クラブ文化が新陳代謝されず、一定の層で回ってしまっている部分もあるかもしれませんね。若い人たちのいるシーンとグチャっと混ざったらもっと面白くなると思うんですけどね。
N : 自分が知らないところもあると思うので、そこに目を向けていきたいですよね。それこそ業界人的なスーツでも買って、スカウトにでもいこうかなって(笑)。なんか業界の人来てるぞって。デデ君やチェリーボーイとか、やけより若い世代の人たちと一緒に何かできたらいいですよね。
——永田さんから見て、同じように新しいことを仕掛けたり、意欲的なレーベルなどはありますか。
N : BLACK SMOKERは攻めているよね。彼らはネットも巧みに使っているけど、決してオタではないじゃないですか。今売れるものって完全にオタに特化するか、ものすごく不良か(笑)。それって音楽文化以外もそうなんですよ。オタクとヤンキーに受ければ売れる。そのどっちでもないうちはやりにくいかなって。

——永田さんの周りの78年世代は不良とかオタってわけではないですよね。
N : そこは不思議ですよね。うちは本当に両極端だから、デデ君とかチェリーボーイも出してるし、CARREとかELEKTRO HUMANGELみたいなハードなやつも出しているし。そもそも自分が下衆な演奏をしたりするから(笑)。ああいうのはビジネスにはならないものだと分かっているんだけど。
——そうはいっても、ビジネスとして成立させるって気持ちも持ちながら、レーベルを運営していらっしゃるんですよね。
N : ある程度うまくいったと思ってるけど、やっと本格的にそういう気持ちになりましたよ。ExTの5周年もやったし、UNITで、幻の名盤解放同盟の人たちとBLACK SMOKER、yudayajazz、Pan Pacific Playa(PPP)、渚ようこさん、秘密博士とかと本当に好きなことを全部やりましたから。それで次に行けるかなと思えたんです。とりあえず一段落したので、これまでやってこなかったことに今は目が向いています。
——では最後に2012年の目標を教えてください。
N : まずは新人を発掘することですね。あとはチェリーボーイのケツを叩いて早く3rd出すっていうこと。それとレーベルを実業として成り立たすってことですね。
ExT Recordingsアーティストのタイトルを配信中!
PROFILE
Ex Boys
2008年1月、ExT Recordingsの設立1周年を記念して、一回限りのスペシャル・ユニットとしてDE DE MOUSE、CHERRYBOY FUNCTION、やけのはら、永田一直により結成。唯一のライブを行う。各パートはDE DE MOUSE/シンセサイザー、CHERRYBOY FUNCTION/MC-505(グルーヴマシン)、やけのはら/CDJ(リズムのみ)、永田一直/CDJ(上物メイン・トラック)、シンセサイザー、TOTAL MIXで、ライヴのスタイルは曲順とBPMのみ決めて、即興演奏とも言える方法で全曲をノン・ストップで演奏した。
ExT Recordings
DE DE MOUSE、CHERRYBOY FUNCTIONを輩出したテクノ、エレクトロ・レーベル。